北朝鮮発射予告 「衛星」でも看過はできない

朝日新聞 2012年03月17日

北朝鮮ミサイル 打ち上げ中止を求める

北朝鮮が4月中旬に「衛星を打ち上げる」と発表した。ロケット「銀河3」に地球観測衛星を載せて発射するという。

もちろん、宇宙の平和利用の権利は、どこの国にもある。だが、それを今の北朝鮮に当てはめていいだろうか。

ロケット打ち上げの技術は、大量破壊兵器を運ぶミサイルと基本的に同じである。つまり、長距離弾道ミサイルの発射実験と変わらないわけだ。

これまでも北朝鮮は「衛星打ち上げ」だとして、ミサイル実験を繰り返してもきた。

外の目をかいくぐって核開発を続ける。そういう北朝鮮に認めるわけにはいかない。打ち上げの中止を求める。

発射予告のなかで、北朝鮮は「国際的な規定や慣例を守り、透明性を保証する」と述べた。国際社会の批判を和らげようとする姿勢がありありと見える。

だが、打ち上げは米国との合意に反するものである。北朝鮮は核実験と長距離ミサイル発射を当面しない。ウラン濃縮を一時停止する。米朝は先月、そう確認し合ったばかりだ。

弾道ミサイル発射実験の停止は、国連安全保障理事会の決議で求められてもいる。

4月中旬の打ち上げには、いろんな狙いを込めていよう。

故金日成主席の生誕100年の記念日が4月15日だ。そのころ、労働党の重要会議である代表者会も開かれる。故金正日総書記の後を継ぐ三男・正恩氏がその会議で最高指導者のポストに就くのではないかと観測されている。また25日には人民軍創建80周年を迎える。

「金正恩体制」を固めて国内を引き締め、国威も発揚する。その手段に「衛星打ち上げ」を利用する。そんな思惑があることは明らかだろう。

加えて、ミサイル技術を向上させることができる。ウラン濃縮型の核開発は、北朝鮮がこれまで続けてきたプルトニウム型よりも容易に兵器化することができる。そこに長距離ミサイルが結び付けばどうなるか。

米国や日本、韓国を牽制(けんせい)し、これからの交渉を有利に進めたい。一挙両得を狙っているのは間違いあるまい。

そんな勝手し放題を許すことはできない。北朝鮮は先の米朝合意の意味するところを誠実に守り実行する。核をはじめミサイル、拉致問題の包括的な解決を図る。そうすることで米国、日本との国交を正常化する。それが北朝鮮の生きる道だ。

6者協議の参加国、とくに中国は北朝鮮の自制を強く働きかけるべきだ。

読売新聞 2012年03月17日

北朝鮮発射予告 「衛星」でも看過はできない

北朝鮮が、4月12日から16日の間に地球観測衛星「光明星3号」を打ち上げると発表した。

約2週間前、「核実験と長距離ミサイルの発射、寧辺でのウラン濃縮活動の一時停止」で、米国と合意したと明らかにしたばかりだ。

その舌の根も乾かぬうちの衛星発射予告である。米朝合意の詰めの甘さを突いた、と言える。

北朝鮮は、発射するのはロケットと称している。ミサイルではない、と言いたいのだろうが、原理は同じだ。発射にはミサイルの性能向上を図る狙いがあろう。

打ち上げ予告期間中の4月15日は、故金日成主席の生誕100年にあたる。韓国に先んじて、自力で人工衛星打ち上げに成功すれば、3代世襲の若い指導者、正恩氏の大きな功績となる。そんな政治的な目的もあるに違いない。

ミサイル開発で深い関係にあるイランが2009年以来、3回も衛星打ち上げを成功させている。その技術協力を得て、今回初めて成功する可能性もなくはない。

衛星打ち上げであっても、弾道ミサイル技術を使っての発射を禁じた国連決議に違反する。発射の自制を北朝鮮に強く求めたい。

北朝鮮は、米朝合意は反古(ほご)にならないと思っているのだろう。

寧辺でウラン濃縮活動の停止を監視する国際原子力機関(IAEA)要員を早期に受け入れれば、米国は打ち上げを問題にはせず、食糧支援も得られる、との身勝手な計算があるのではないか。

北朝鮮は3年前に「衛星」打ち上げを予告した時も、日本や米国、韓国などの警告を無視して発射を強行した。今回も天候不順でない限り、中止はするまい。ミサイル開発は大きく進むことになる。

米国が神経をとがらせるのは、本土に届く長距離ミサイルの開発であり、射程延伸だ。一方、すでに中距離ミサイル・ノドンの射程内にある日本にとっては、精度向上が大きな脅威だ。

北朝鮮に対し、長距離ミサイルに限らず中距離ミサイルの発射も一時停止するよう強く求めることが、日米両国には重要である。

3年前、北朝鮮は日本海側の基地から日本列島に向けてミサイルを発射した。日本は国内に落下する万一の事態に備えて、自衛隊のイージス艦や地対空誘導弾部隊を展開させる警戒体制を敷いた。

今回、北朝鮮は、黄海側の基地から南に向けて発射するという。日本列島の上空は飛行しないはずだが、政府は北朝鮮の動きを注視し、警戒を怠ってはならない。

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