北朝鮮が4月中旬に「衛星を打ち上げる」と発表した。ロケット「銀河3」に地球観測衛星を載せて発射するという。
もちろん、宇宙の平和利用の権利は、どこの国にもある。だが、それを今の北朝鮮に当てはめていいだろうか。
ロケット打ち上げの技術は、大量破壊兵器を運ぶミサイルと基本的に同じである。つまり、長距離弾道ミサイルの発射実験と変わらないわけだ。
これまでも北朝鮮は「衛星打ち上げ」だとして、ミサイル実験を繰り返してもきた。
外の目をかいくぐって核開発を続ける。そういう北朝鮮に認めるわけにはいかない。打ち上げの中止を求める。
発射予告のなかで、北朝鮮は「国際的な規定や慣例を守り、透明性を保証する」と述べた。国際社会の批判を和らげようとする姿勢がありありと見える。
だが、打ち上げは米国との合意に反するものである。北朝鮮は核実験と長距離ミサイル発射を当面しない。ウラン濃縮を一時停止する。米朝は先月、そう確認し合ったばかりだ。
弾道ミサイル発射実験の停止は、国連安全保障理事会の決議で求められてもいる。
4月中旬の打ち上げには、いろんな狙いを込めていよう。
故金日成主席の生誕100年の記念日が4月15日だ。そのころ、労働党の重要会議である代表者会も開かれる。故金正日総書記の後を継ぐ三男・正恩氏がその会議で最高指導者のポストに就くのではないかと観測されている。また25日には人民軍創建80周年を迎える。
「金正恩体制」を固めて国内を引き締め、国威も発揚する。その手段に「衛星打ち上げ」を利用する。そんな思惑があることは明らかだろう。
加えて、ミサイル技術を向上させることができる。ウラン濃縮型の核開発は、北朝鮮がこれまで続けてきたプルトニウム型よりも容易に兵器化することができる。そこに長距離ミサイルが結び付けばどうなるか。
米国や日本、韓国を牽制(けんせい)し、これからの交渉を有利に進めたい。一挙両得を狙っているのは間違いあるまい。
そんな勝手し放題を許すことはできない。北朝鮮は先の米朝合意の意味するところを誠実に守り実行する。核をはじめミサイル、拉致問題の包括的な解決を図る。そうすることで米国、日本との国交を正常化する。それが北朝鮮の生きる道だ。
6者協議の参加国、とくに中国は北朝鮮の自制を強く働きかけるべきだ。
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