レアアース提訴 中国はWTOルールの順守を

毎日新聞 2012年03月15日

中国WTO提訴へ レアアースの確保急げ

中国が、ハイテク製品に欠かせないレアアース(希土類)の輸出を不当に規制しているとして、政府は米国、欧州連合(EU)と共同で世界貿易機関(WTO)に対し、紛争解決手続きを提起した。日本が中国をWTOに訴えるのは初めてだ。

2国間の交渉では解決が困難な問題を国際的な紛争解決ルールに委ねたことで、日中両国が公平な決着に向け、前進することを期待する。それでも、中国に頼るだけではレアアースの安定確保は難しい。供給源多様化の取り組みも急務といえよう。

レアアースは、高性能モーターや液晶に使う蛍光体、充電池などに使われる。ハイブリッド車やパソコンのハードディスク、スマートフォン(多機能携帯電話)などの製造には欠かせない。

中国は、世界全体の供給量の9割以上を採掘しているが、輸出規制を厳格化し、11年の輸出枠は約3万トンと07年に比べ半減した。輸出税をかけ、内外の価格差も設けている。

輸出減少に伴って国際的な取引価格は高騰し、11年半ばには1年前の10倍以上に跳ね上がったものもある。日本では昨年秋に、ハイブリッド車やエアコンなどが値上げを余儀なくされた。

政府は中国政府に対し、改善を求めてきたが、変化の兆しはない。こうした情勢の中、政府が問題をWTOに持ち込んだことは、国際的な紛争処理ルールにのっとって、公正で透明性の高い解決を目指すものとして評価したい。

もっとも、今回は米国の政治的思惑も拭いきれない。対中貿易赤字が膨らむ米国では、中国の経済政策に対する不満が高まっている。大統領選を控えるオバマ政権は、中国に対する強硬姿勢を示す必要があったと思われる。

これに対して、中国側は強く反発し、資源保護などを理由に「WTOの規則に適合している」と主張している。日本政府は、米中の政治的なさや当てに巻き込まれず、WTOの手続きを冷静に進めるべきだ。

尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件が起きた10年秋には、2カ月にわたって対日輸出がストップし、レアアースが外交カードに使われたとされる事態も起きた。レアアースは、付加価値の高いハイテク製品で活性化を目指す国内製造業の命運を握るものともいえるだけに、中国依存一辺倒からの脱却を急ぐ必要もある。

商社などが、カザフスタンやベトナム、インド、オーストラリアなどでレアアースの資源確保を進めつつある。政府の支援で後押しする必要があるだろう。代替技術の開発や家電製品からの資源回収などにも一段と力を入れてほしい。

読売新聞 2012年03月15日

レアアース提訴 中国はWTOルールの順守を

世界貿易機関(WTO)のルールに基づき、中国に不公正な貿易措置の早期是正を求めるのは妥当と言えよう。

日本は、米国や欧州連合(EU)とともに、中国によるレアアース(希土類)の輸出規制は不当だとして、WTOに提訴した。

日本が中国をWTO提訴したのは初めてだ。従来、政治的な配慮などから、提訴を控えてきたが、世界第2位の経済大国になった中国に対し、これ以上のルール逸脱を看過しないという日本の姿勢を示す意義は大きい。

レアアースは、ハイブリッド車や省エネ家電のモーターなどに不可欠な材料で、中国が世界生産の9割を占めている。

中国は2010年からレアアースの輸出規制を強化し続けている。「環境と資源保護のため」と主張するが、自国企業に有利なように資源の囲い込みを狙っているのは明らかである。

輸出規制で需給が逼迫(ひっぱく)した結果、レアアース価格が急騰している。日本や米欧企業の生産に支障が出ているのは問題だ。

中国の輸出規制を放置すれば、企業生産への悪影響が一段と広がる。他の新興国などでも保護貿易主義の台頭を誘発しかねない。

日本は2国間協議で改善を求めてきたが、中国の対応は鈍い。そこで米欧と連携し、圧力をかける方針に転じた点は理解できる。

今回の提訴を主導したのは、今秋の大統領選で再選を目指すオバマ米大統領である。

大統領は、製造業復活や雇用拡大を掲げている。最大の貿易赤字国である中国との公正な競争のルール作りを訴え、選挙戦で主導権を握りたい考えだろう。

1月には、米欧が中国をWTO提訴したレアメタル(希少金属)の輸出規制で、中国の敗訴が確定した。レアアースを巡るWTOの判断にも追い風になると、日米欧は期待しているようだ。

だが、レアメタル敗訴後も中国の改善は不十分で、むしろ生産規制が目立つ。WTOは、中国にルール順守を求めるべきだ。

中国はレアアース問題でも対決姿勢を示しており、WTOでの紛争解決は長期化する恐れがある。中国が対抗措置を打ち出す事態も警戒しなければならない。

日本政府と日本企業は連携し、豪州などでの調達を目指し、代替品開発やリサイクル促進にも取り組んでいる。WTOの結論にかかわらず、“脱中国依存”の努力を続けることが求められる。

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