自然エネルギー 普及のための工夫を

朝日新聞 2012年03月07日

自然エネルギー 普及のための工夫を

風力などの自然エネルギーを電力会社が発電会社から固定価格で買い取ることを義務づける制度が、7月から始まる。

買い取り価格や期間を実質的に決める委員会が6日、ようやく動き出した。委員の人事案を昨年末に国会に提出したが、与野党から「制度に反対だった人がいる」と再考を求められ、メンバーを一部入れ替えて承認された。時間はない。作業を急がなければならない。

買い取り制度は自然エネルギー普及のカギを握る。長期間、適正な利潤が出るような固定価格が保証されれば、自然エネルギーへの投資が増える。

ただし、買い取り費用は電気料金に上乗せされる。負担するのは消費者だ。

買い取り価格が低すぎたり、期間が短すぎたりすれば普及が進まない。かといって、高すぎたり長すぎたりすれば、家庭や企業の負担が増える。投資バブルも引き起こしかねない。

どうバランスをとるか。委員会の役割は、きわめて重い。

一口に自然エネルギーといっても、太陽光、風力、地熱、バイオマスなど電源によって特性は異なる。発電所の規模によっても費用は違ってくる。

委員会は、こうした細かい区分ごとに1キロワット時当たりの価格と期間を決める。技術の進歩や量産効果による発電コストの低下、金利動向などに目を配り、毎年、新規の設備に対する買い取り価格を改定する。

議事は公開され、算定の基準や計算式も国会に報告する。

早く参入したほうが有利になる設計も求められるだろう。電気だけでなく熱も利用できるような効率のいい設備の導入を促す仕組みも考えたい。

既存の風力発電の中には、建設時に補助金は得たものの、買い取り価格が低すぎて経営難に陥っているところもある。

今のところ新制度の対象外だが、発電量を増やす意欲のある事業者は、枠組みに入れることを工夫すべきだ。

何より、電力大手の都合で送電網への接続が不当に阻まれることがないようにしなければ、新規事業者は安心して投資ができない。

政府は厳しく監視するとともに、送電網の中立化へ電力システム改革を急ぐべきだ。電気料金も、消費者が自由に電源を選んで必要なコストを負担する体系にする。

自然エネルギーの担い手を増やし、産業として自立できるよう、上手に育てる。法律の目的がそこにあることを忘れてはならない。

毎日新聞 2012年03月09日

震災1年/5 エネルギー政策 国民本位への転換急げ

東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発の事故で、東電は主力電源の一角を失った。

管内では計画停電が実施された。電車も間引かれ、通勤・通学が混乱した。電力需要が増す夏には、節電の要請が全国に広がり、製造業も大きな影響を受けた。

国内原発は5月初めにも全面停止する可能性があり、電力不足の不安はこの夏も残る。原発依存を強めてきた日本のエネルギー政策は、抜本的見直しを急がなければならない。

政府は今夏、新たなエネルギー政策をまとめる予定だ。大手電力が、事実上地域独占している電力制度も改革する。「原発安全神話」の崩壊を、大手電力本位から国民本位の政策へ転換する好機にしたい。

昨年5月、菅直人首相(当時)は会見で「エネルギー基本計画を白紙から見直す」と宣言した。

従来の基本計画は、約3割だった原発依存度を30年までに5割以上に高めるとしていた。増強から削減に方向転換したことで、不足する分をどう埋め合わせるかが焦点になる。

瞬時の停電も許されないコンピューター制御の工場などは、供給不安があるだけで操業が難しくなる。製造業の海外移転を抑え、国内経済の活力を維持するためにも新たな政策による供給不安解消を急ぐべきだ。

政府の見通しではこの夏、全国で約1割の電力が不足するという。一方、枝野幸男経済産業相は「電力使用制限令を出さずに乗り切れる可能性は十分にある」と述べている。電力供給能力は本当に足りないのか。計画策定の前提として、政府は信頼性の高い需給見通しを示すべきだ。

電気はできるだけ安く、安定的に供給されるのが理想だ。地球環境への配慮も忘れてはならない。

「ポスト原発」の主役として期待されるのは、まず太陽光、風力などの再生可能エネルギーだ。電力会社に政府が決めた価格での再生可能エネルギー買い取りを義務付ける制度が7月に始まる。買い取り価格が高いほど普及促進の効果は大きいが、電気料金に跳ね返るため、家庭や企業の負担は増す。政府は価格の根拠を丁寧に説明し、需要者である国民の理解を得る必要がある。

それでも、再生可能エネルギーが電力の主役に成長するには、時間がかかる。そこで、節電・省エネルギーが重要になる。

これまで、大半の家庭や企業は好きな時に好きなだけ電気を使ってきた。その結果、需要が年間を通じて最も高まる真夏の午後の消費量は、同じ日の早朝の2倍近くに達している。大手電力はそのピークに合わせて設備を増強してきた。

ピークの時間帯に節電すれば、電力の需給に余裕が生まれる。家庭や企業などが、主体的にピーク抑制に取り組むために、消費電力や料金を常に計測できる次世代電力計(スマートメーター)の普及を急ぐ必要がある。ピーク時を割高にするといった柔軟な料金制度も導入すべきだ。

エネルギー基本計画をまとめる経産省の総合資源エネルギー調査会は、今月末をめどに複数の電源の組み合わせや省エネの手法などを選択肢として示す。国民的議論を重ね、結論は政治決断に委ねるという。

国民の判断基準になる十分な情報の提供と開かれた議論が行える舞台の設定を求めたい。

電力供給を増やすとともに、競争による電気料金の引き下げを図るためには、電気事業への新規参入を促す制度改革が不可欠だ。

電力小売りの自由化は、00年から段階的に始まり、05年までに契約電力が50キロワット未満の一般家庭やコンビニエンスストアなどを除き、総電力量の約6割が自由化された。

しかし、大手電力間の競争は進まなかった。地域の垣根を越えた取引は、九州電力が中国電力管内の広島市内のショッピングセンターと契約した1件しかない。先月には、東京都が中部電力に電力購入を打診したが、断られている。

新規参入した事業者の販売シェアも3%程度にとどまる。大手電力の送電設備を利用する際の条件が厳しすぎるのが大きな要因だ。

政府は大手電力の「発送電分離」を検討している。送電網の中立性と電力供給の安定性を確保する制度設計を期待したい。併せて、送電時の周波数が異なる東西日本間の電力融通能力拡大も急ぐべきだ。

新規参入が進まない理由はほかにもある。大手電力は、販売電力量の4割弱にとどまる規制分野で、営業利益の大半を稼いでいる。自由化分野では、ぎりぎりまで値下げして新規参入を防ぎ、その分を競争のない規制分野で補う構図といえる。

小売りの規制が残る限り、こうした事態は改まらないだろう。家庭や企業が、電力会社を選択・選別できるよう自由化の徹底を求めたい。

政府は東電に対し、1兆円規模の出資を検討している。東電を実質国有化し、電力制度改革につなげる狙いがある。そうであれば、改革の方向を示す必要がある。需要者本位の政策への転換を明確にすることで、巨額の公的資金投入に対する国民の理解を求めるべきだ。

読売新聞 2012年03月13日

エネルギー政策 現実的な電源構成を目指せ

東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、エネルギー政策の重要性は一段と増している。

政府は事故の教訓を生かし、原発の安全性向上に努めねばならない。安全を確認できた原発は再稼働し、電力危機を回避することが急務である。

野田首相が11日の記者会見で、原発再稼働に向けて、地元説得の「先頭に立つ」と明言したことは評価できる。

一方、首相はこれまで、中長期的に原子力への依存度を最大限に低減させる「脱原発依存」を目指すとしてきた。具体的な内容は依然としてあいまいだ。

政府は今夏にまとめる新しいエネルギー戦略で、将来の望ましい電源構成を示し、達成への道筋を明確にする必要がある。

大切なのは、感情的な「反原発ムード」に流されず、安全性と電力の安定供給、経済性にも目配りした、現実的なエネルギー政策を打ち出すことだ。

政府内では、太陽光や風力など再生可能エネルギーの拡大に対する期待が大きい。太陽光発電などの電気を、高値の固定価格で買い取る新たな支援制度も、7月にスタートする。

普及を後押しすることは望ましいが、買い取り制度を先行導入した欧州では、電力料金の高騰を招き、制度の見直しが進んでいる。過大な期待は禁物だ。

水力を除く自然エネルギーは日本の全発電量の約1%で、天候などで電力が変動する短所もある。拡大ペースには限界があろう。

原発の比率を下げれば、火力発電に頼らざるを得ない。こちらも問題は多い。現在でも代替に必要な燃料費は年3兆円を超えるとされ、経済の重荷だ。国際的な資源争奪で、燃料高騰や調達難のリスクは増大すると見込まれる。

電力を安定して確保するためには、日本の技術力と安全性を向上させ、原子力の活用を続けることが求められる。

新たなエネルギー戦略で、政府が将来の「原発ゼロ」を掲げることは避けるべきだ。

原子力技術者の海外流出に拍車がかかり、後進も育つまい。これでは、原発や使用済み核燃料を安全に管理できなくなる。

国内の古い原発を順次、安全な新型に置き換えるという選択肢も、残しておくべきだ。

中国をはじめ新興国は原発の増設を進めている。日本には技術力を保ち、今後も原子力の平和利用で国際貢献する責務がある。

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