米大統領選 オバマ氏助ける共和党の混戦

毎日新聞 2012年03月08日

米共和党予備選 弾みついたロムニー氏

米共和党の大統領候補選びは、ようやく終わりが見えてきたようだ。6日の「決戦の火曜日」(スーパーチューズデー)では10州の予備選・党員集会が行われ、ロムニー前マサチューセッツ州知事が6州で勝利して、獲得代議員の総計を400人台に乗せた。大統領になるには「必ず勝たねばならない州」とされるオハイオ州でも激戦の末、サントラム前上院議員を抑えた。

だが、今回3州で勝利したサントラム氏や、地元のジョージア州で勝ったギングリッチ元下院議長は簡単に矛を収めそうにない。大変な資産家で穏健派のロムニー氏を嫌う保守層がサントラム氏への支持を強める可能性もあり、まだロムニー氏が安全圏に入ったとは言えない。ポール下院議員はバージニア州などで善戦したものの1州も取れず、苦しい戦いが続きそうだ。

大統領選の本選(今回は11月6日)では、州ごとの勝者がその州の代議員を総取りするのが普通だが、共和党は今回の候補者選びで比例配分方式を広く導入し、勝者の取り分が比較的少なくなった。総数2286人の代議員の過半数(1144人)を獲得するのはなかなか大変だ。

前回08年のスーパーチューズデーは21州が対象になり、マケイン上院議員が大きな州で勝利を重ねて、共和党の候補指名を確実にした。今回はそれほど明確な節目にはなりそうもない。大州テキサスやカリフォルニアなどの予備選はこれからで、決着が4~5月になることも予想される。党内に本選への準備不足を心配する声があるのは、もっともだ。

共和党の候補者選びが長引く一因は、民主党のオバマ大統領に対して「どんな候補が勝てるのか」という問いに、明確な答えを出せないからだろう。サントラム氏は人工妊娠中絶や同性婚に強く反対するなど保守的なイメージが強い。ある意味では、いかにも共和党らしい候補だが、保守的な価値観を振りかざすだけではオバマ氏に勝てるとは思えない。

米国の庶民は何より景気回復や失業率改善を求めているからだ。保守層の中にも、実業界で成功したロムニー氏に期待する声がある。同氏は、極めて保守的な茶会(ティーパーティー)運動の支持者からも一定の支持を得ており、モルモン教徒であることへの反発が目立たないのも、経済が焦点だからだろう。

ただ、激しく競うのは結構だが、対立候補を非難するネガティブ・キャンペーンの応酬は何とかならないものか。米国の動きは国際社会に影響を及ぼす。世界が見たいのは悪口雑言の類ではなかろう。超大国の指導者を決めるプロセスとしての、正々堂々たる政策論争であるはずだ。

読売新聞 2012年03月08日

米大統領選 オバマ氏助ける共和党の混戦

秋の米大統領選に向けて、共和党の候補者指名争いが長期戦の様相を見せている。再選を目指す民主党のオバマ大統領には有利に働こう。

オハイオなど10州の予備選・党員集会が集中した6日のスーパーチューズデーで、共和党穏健派のロムニー前マサチューセッツ州知事と、保守派サントラム元上院議員が接戦を演じ、本命争いの決着は持ち越された。

候補者選びが混戦となった要因は、共和党が今年、予備選・党員集会の結果に基づく州代議員の配分方式を変更したことにある。

従来は、予備選・党員集会で勝利した候補がその州の代議員すべてを獲得する「総取り」方式で、差がつきやすかった。

今年は、3月までは原則として得票率に応じた「比例配分」方式を採用する。差が開きにくく、指名に必要な過半数にはなかなか達しないため、競り合いが続く。

4年前の大統領選では、民主党のオバマ、クリントン両氏が白熱の指名争いを展開して勢いづき、そのまま本選で勝利した。

共和党も、手に汗握る指名争いでニュースを独占し、上げ潮に乗せたい思惑があろう。

だが、共和党の狙いは今のところ裏目に出ている。

長期戦になったのは計算通りだが、政策の優劣を競う論戦ではなく、相手候補の欠点、弱点をあげつらう中傷合戦が目立つ。互いを誹謗(ひぼう)するテレビCMも有権者がうんざりするほど流されている。

そうした個人攻撃キャンペーンを資金面で支えるのは、集める政治資金額に制限がないスーパーPAC(特別政治活動委員会)と呼ばれる政治団体だ。2年前の連邦最高裁判決で認められた。

党内穏健派を激しく批判するティーパーティー(茶会)運動など保守派の草の根活動も盛んで、党内対立は深まるばかりだ。

このままでは共和党は、指名争い終了後にオバマ、クリントン両氏が手を組んで一致団結ぶりを誇示した民主党のような演出は、とてもできそうにない。

オバマ陣営には、具合がいい展開だ。失業率が改善しているのも再選への追い風となろう。

だが、米国経済は依然、厳しい。だれが大統領になっても、景気浮揚と財政赤字削減の難題に取り組まなくてはならない。

大統領選で税制改革は重要な争点だ。法人税率を巡っては、オバマ氏も共和党の有力候補も「引き下げ」で共通する。米国でも国際競争力の強化が最優先課題だ。

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