党首討論 橋下さんに負けられぬ

朝日新聞 2012年03月01日

党首討論 一体改革の道筋見えた

野田首相と自民党の谷垣総裁がきのう、2度目の党首討論に臨んだ。

ふたりのやりとりから、税と社会保障の一体改革で、両党が合意できる道筋がはっきりしてきたように見えた。

協議を拒む谷垣氏が「一番の大きな問題」と指摘したのは、何のために消費税率を上げるのかがわからないという点だ。

民主党が来年の国会に出すという最低保障年金の新制度案をどうするのか。被用者年金の一元化などの法案も、この国会に提出できるのか。現状は一体改革の名に値しない、と攻めた。

さらに谷垣氏は畳みかけた。

民主党内で最大のグループを率いる小沢一郎元代表は、増税に反対している。説得できるのか、と問うた。

確かに、一元化などいまの制度改革をめぐる政権内の議論は迷走中だ。そこに小沢氏の示威行動のような対応が重なるのだから、谷垣氏の言い分はもっともだ。

これに対し野田氏は、大綱に書いた通りに法案を提出していくと答え、党内の異論についても「たとえ51対49の党内世論でも、手続きを踏んで決めたらみんなで頑張っていくことを示していきたい」と言い切った。

一方で野田氏は、自民党が出した12年度予算案の対案を取り上げ、谷垣氏から基礎年金の国庫負担割合の引き上げには赤字国債をあてる、その償還財源は消費税でまかなう、との答えを引き出した。

もとより自民党は、消費税率10%を掲げている。

この日の応酬では、民主、自民両党の主張の重なりの多さが改めて浮かび上がった。

それはつまり、谷垣氏が挙げた問題点をクリアできれば、改革そのものが実現に向かって動き出すということだ。

そのために野田首相がすべきことは、はっきりしている。

まずは、実現が極めて難しい最低保障年金の新制度はきっぱりと棚上げする。そのうえで、消費増税と社会保障関連の法案を間を置かずに出すことだ。

討論からは、両党首の政策の距離よりも、それぞれの党内での見解の開きの方が大きい実態も見えた。法案提出までには、小沢氏ら民主党内の増税反対論者との激突は避けられないだろう。だが、首相がまずそれを突破するしか展望は開けない。

ふたりは「違憲状態」だとされた衆院の一票の格差是正を、選挙制度改革や定数削減より先行させることでも一致した。

速やかに成果を出してもらわねばならない。

毎日新聞 2012年03月01日

党首討論 橋下さんに負けられぬ

野田佳彦首相と自民党の谷垣禎一総裁らによる2度目の党首討論が行われた。両党首は衆院選挙制度改革で「1票の格差」是正を最優先する方針を確認するなど、一致点を探る姿勢もみえた。

「大阪維新の会」など新勢力が中央進出の動きを加速する中での討論だ。不毛な対立を繰り返すばかりでは既成政党の存在意義が問われかねないという危機感が働き始めたのであれば、正しい認識だ。討論を重ね、接点と対立点をより具体的に示してほしい。

税と社会保障の一体改革について首相が「与野党で協議を」と呼びかけ、谷垣氏が「その前に衆院解散を」と拒絶する。そんなワンパターンな応酬が繰り返される展開にならなくてほっとした。

討論の冒頭、谷垣氏は近く発生1年を迎える大震災への対応、とりわけがれきの広域処理と復興予算の執行促進を取り上げた。復旧、復興が依然として最重要課題であることを再確認する意味で適切だった。

違憲、違法状態に突入した衆院「1票の格差」区割り問題について谷垣氏は定数削減や選挙制度の抜本改革と切り離して優先するよう求め、首相も基本的に同調した。首相は今国会中に定数、抜本改革で結論を出すことが必要だとも付け加えたが、両党首が「格差是正最優先」で一致したことは重いはずだ。

討論では山口那津男公明党代表が国会議員歳費の削減も提言し、首相はこれにも賛意を示した。「1票の格差」是正と同様、至極当然な方向ではある。だが、こんな原則すらこれまで確認できていなかった。

一体改革については政府が大綱に示した最低保障年金制度の見直しを谷垣氏が促し、首相は当面の改革実施で歩み寄りは可能と反論した。

民主党では小沢一郎元代表が消費増税に反対姿勢を明確にし、法案の閣議決定すら危ぶまれている。首相は「51対49の党内世論でも決めたらがんばる」と法案提出は不変と強調した。有言実行で進んでほしい。

今回の討論で谷垣氏が衆院解散要求について最後に一度しかふれなかったことに自民党内には「生ぬるい」と批判が出るかもしれない。だが、気にすることはない。対決ポーズをことさらに示し、主張を連ねるだけでは国民の共感は得られない。

野田内閣のみならず民主、自民両党の政党支持率が低迷する中、橋下徹大阪市長の直接的なメッセージや新勢力の動向が国民の関心を集めている。発信力が不足気味の両党首だが、率直に本音をぶつけあうことが、言葉の力を取り戻す近道だ。それがひいては、既成政党の地盤沈下を食い止める足がかりとなろう。

読売新聞 2012年03月01日

党首討論 一体改革でも真剣に接点探れ

今年初めての党首討論は、久々に建設的な議論の場となった。

与野党が合意できる点は少なくない。焦点の社会保障と税の一体改革でも、積極的に歩み寄るべきだ。

自民党の谷垣総裁は、衆院選挙制度改革について、「1票の格差」の是正を、定数削減や選挙制度の抜本改革と切り離し、最優先で取り組むべきだと主張した。

野田首相は、「認識は同じ」と語り、民主、自民両党が一致する小選挙区の「0増5減」による格差是正の先行処理に賛成した。

谷垣総裁が提起した東日本大震災のがれきの広域処理や、公明党の山口代表が提案した国会議員歳費の削減についても、首相は前向きに対応する考えを強調した。

昨年11月の党首討論や今年1月の代表質問では、谷垣総裁が、消費税率引き上げは「マニフェスト(政権公約)違反だ」などと衆院解散・総選挙を迫るばかりで、不毛な応酬が繰り返された。

今回、民自公3党の党首が様々な課題で足並みをそろえた意義は大きい。今後、各党の実務者が詳細を詰め、早期に成案をまとめることが重要である。

特に、最高裁判決で「違憲状態」と指摘された衆院選の1票の格差の是正は緊急課題だ。次期衆院選が「違憲」とならないよう、与野党協議を急ぐ必要がある。

一体改革については依然、与野党の主張の違いが目立った。

谷垣総裁は、膨大な財源を要する最低保障年金の導入など民主党の新年金制度案の撤回を求めた。山口代表は、厚生年金と共済年金の一元化などの関連法案の提出が遅れることを「消費税と一体で議論できない」と批判した。

しかし、谷垣総裁が、自民党も基礎年金の国庫負担の財源に消費税率引き上げを想定していることを明言するなど、与野党の一致点は徐々に増えている。

野田首相は、新年金制度案を棚上げし、与野党協議への道を開く決断をすべきだ。

「まず足元を固めるべきだ」との谷垣総裁の指摘は、もっともだ。首相は、民主党の小沢一郎・元代表グループや国民新党の亀井代表が公然と唱える増税反対・慎重論を抑え込むことが大切である。

谷垣総裁も、現在の危機的な財政状況を招いた責任が長年の自公政権にあることを忘れてはならない。衆院解散を要求するだけでなく、自民党の対案をまとめ、政策の中身で対抗するのが筋だ。

与野党は、話し合いを重ね、真剣に接点を探ってもらいたい。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/987/