G20声明 欧州は自前の安全網拡充急げ

毎日新聞 2012年02月28日

G20と欧州危機 当事者の決断促す力に

主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が開かれた。最大のテーマは今回もユーロ圏の債務危機である。

中でも注目されたのが、危機の拡大を防ぐため国際通貨基金(IMF)の資金基盤を拡充する問題だ。IMFは総額5000億ドルを新たに加盟国から調達したい構えらしいが、G20は、まず欧州諸国が自前の域内支援基金を十分な規模のものに増やすべきだと自助努力を求めた。

当然である。ギリシャやポルトガルなど単独では借金返済ができなくとも、ユーロ圏全体ではそれを補える経済力や信用力がある。危機が通貨を共有する国々に飛び火するのを防ぐための支援である以上、ユーロ加盟国で資金を確保するのが筋だ。自力で借金返済ができなくなればIMFの助けを仰ぐしかなかった過去の債務危機と大きく異なる点だ。

それでもIMFは、これまで多額の資金を欧州の債務危機国に貸してきた。ギリシャ、アイルランド、ポルトガルの3カ国に対し、すでに計785億ユーロである。欧州諸国が負担した額の半分近い。

もちろん、将来の危機に備えてIMFが十分な資金基盤を持っておく必要はあろう。しかし、だからといって債務危機の欧州がこれまで同様IMFの資金をあてにしてよい、ということにはなるまい。

G20会議の共同声明には、IMFの資金が特定の地域用にあるのではないと明記された。欧州諸国が仮に、自前の支援基金拡充で近く合意したとしても、IMFは安易に欧州への追加支援を決めるべきではない。

IMFの欧州支援に慎重な米国、前向きの新興国といった具合にG20内で温度差がある中、日本の意向は重要なものとなりそうだ。

ギリシャに始まった債務危機がこれほど長期化し拡大したのは、欧州諸国が対応を誤ったからである。資金的な力が不足していたのではなく、国内での批判を恐れ、大胆な政治決断を避け続けた結果だ。

ギリシャへの第2次支援を取りまとめる過程でも、ユーロ加盟国政府は自らの追加負担というより、民間投資家や欧州中央銀行の助けを仰ぐ道を選んだ。最近は柔軟に転化しつつあるというが、経済規模がユーロ圏最大のドイツは依然、欧州自前の支援枠拡大にすら後ろ向きである。

金融市場の緊張が緩んだとはいえ、欧州の債務危機に出口が見えたわけではない。欧州が財政統合や成長力強化に向け、本質的で困難な政治決断を下すよう、日本をはじめG20は、働きかけ続ける必要がある。

IMFの資金支援により、そうした政治決断が先送りされるようでは、真の貢献とは呼べまい。

読売新聞 2012年02月28日

G20声明 欧州は自前の安全網拡充急げ

欧州危機の封じ込めには、欧州の一層の自助努力が不可欠だ。

日米と新興国が厳しい注文を突き付けたと言えよう。

日米欧と中国、ブラジルなどが参加したメキシコでの主要20か国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議は、共同声明を採択して閉幕した。

焦点は、信用不安拡大に備えた国際通貨基金(IMF)の資金基盤増強策だったが、決着は4月の財務相会合に先送りされた。

声明は、ユーロ圏が3月中に自ら支援能力を「再評価」することが「G20の重要な判断材料になる」と指摘した。IMFの融資枠拡大に先立ち、欧州に自前の安全網拡充を迫った意味は大きい。

信用不安国に対するユーロ圏の緊急融資枠は現在、欧州金融安定基金(EFSF)と、7月に発足させる欧州安定メカニズム(ESM)を合わせて5000億ユーロ(約55兆円)にとどまる。

欧州では、これらの融資枠を拡大する案が浮上しているものの、具体化は難航している。追加負担を懸念するドイツが慎重で、独仏両国と、ギリシャなど被支援国との対立も影を落としている。

欧州連合(EU)は3月初めに首脳会議を開く。融資枠拡大などG20を納得させる追加策を打ち出せるのか。結束が問われる。

IMFは、5000億ドル(約40兆円)の融資枠拡大を検討し、日米や中国などに資金拠出の協力を呼びかけている。

日中両国は前向きに検討中だが、米国は支援の枠組みと資金拠出に慎重姿勢を続ける。財政難の中、米議会の承認が得られる見通しがたたず、中国などの発言力増大も警戒しているためだ。

欧州はIMF支援を追い風に、危機を乗り切りたいのが本音だろう。それには自助努力で追加措置に踏み出すことだ。

EUなどが先週、震源地ギリシャへの第2次支援策を決めたことで、ギリシャが債務不履行(デフォルト)に陥る事態は回避されそうだが、信用不安はくすぶる。

共同声明が、「経済の下振れリスクは高い」と警鐘を鳴らしたのは当然だろう。

声明は、イラン情勢の緊迫化や世界的な金融緩和に伴って原油価格が1バレル=100ドル超に急騰していることも、世界経済の新たな懸念材料として警戒を表明した。

原油高は、本格的な景気回復が遅れる日本にとっても重荷だ。

G20は引き続き、価格の監視を強化するとともに、産油国に安定供給を求める必要がある。

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