米朝核協議 「ウラン濃縮」の宿題が残った

毎日新聞 2012年02月26日

米朝核協議 次の一歩こそ焦点だ

北朝鮮の核問題に関する米朝高官協議が北京で開かれた。金正日(キムジョンイル)総書記の死去後、初めてのことであり、双方ともに相手の出方を探る機会と位置付けただろう。

2日間にわたり広範な論議が行われたというが、米側の協議代表によれば「若干の進展」しかなかった。しかし金正恩(キムジョンウン)氏が後継者となった新体制下でも、北朝鮮の交渉スタイルなどに大きな変化はないことは確認できたという。

歓迎できることではないが、不透明な状態が続くよりはましだ。従来通り、詐術のような「瀬戸際外交」が続くことを覚悟し、日米韓の結束を固め、次の一歩が成果につながるようにしなければなるまい。

今回の協議が終わった翌日、北朝鮮はさっそく脅しに出た。米韓が27日から予定している定例の合同軍事演習について「われわれの方式の聖戦で粉砕する」「米国の核兵器よりも威力ある戦争手段と、誰にもない最先端の攻撃装備がある」などと、国防委員会が声明を出した。

北京での協議で北朝鮮は大量の食糧支援を要求したはずだ。助けを求めながら脅しをかける手法に、今更ながらあきれざるをえない。

毎日新聞が入手した朝鮮労働党の内部文書には「日本との経済協調の強化」を推進する方針が明記されている。今後、日朝間の公式対話を働きかけてくるとすれば、よほど警戒せねばならないだろう。

核協議に戻って考えれば、現在の焦点は北朝鮮にウラン濃縮活動の停止を受け入れさせることだ。これが実現しないと6カ国協議の再開はない。この点で日米韓の方針は一致している。

ただ、悩ましいのは北朝鮮が米国の核専門家に見せつけた寧辺(ニョンビョン)のウラン濃縮施設以外に、同様の施設がおそらく複数、稼働している可能性が極めて高いことだ。濃縮用の遠心分離機は坑道や目立たないビルに隠して稼働させることもでき、捕捉は極めて難しい。

米国のオバマ政権は、北朝鮮との交渉には慎重な姿勢を貫いてきた。前政権時代の交渉担当者が北朝鮮の術中にはまり、何の成果もなしにテロ支援国家指定を解除してしまった失敗などが背景にある。

しかし、結果的に北朝鮮による核兵器開発の拡大に時間を与えてしまった側面がある。イランの核開発に対する厳しい姿勢と比較すると、微温的な感も否めない。

北朝鮮は過渡期にある。盤石の体制とは思えない。日米韓が対北政策を練り直すのに好適な時期だ。今回協議に臨んだ米高官がきょう来日するのを機に、極めて重要な「次の一歩」も十分論議してほしい。

読売新聞 2012年02月25日

米朝核協議 「ウラン濃縮」の宿題が残った

核問題を巡る米国と北朝鮮の北京での協議が、合意なく終了した。

北朝鮮の核開発に歯止めをかけるため、米国は日本、韓国と連携して、今後も、なお粘り強く働きかけを続けていく必要がある。

今回の米朝協議はもともと、昨年末に予定されていたが、北朝鮮の金正日総書記の死去で中止されていた。後継の金正恩体制下で初めての米朝協議であり、新体制の姿勢を探る重要な機会だった。

焦点は、北朝鮮が米国の求めに応じてウラン濃縮活動の停止を受け入れるかどうかだった。結論の持ち越しは、濃縮停止の手順や食糧支援の条件で折り合えなかったことが要因と見られる。

北朝鮮にとって、今年の4月は重要な節目だ。朝鮮労働党代表者会が開かれ、3代目の正恩氏が総書記などのポストを正式に継承する見通しだ。故金日成主席の生誕100年にあたり、経済再建へ一大飛躍を目指すときでもある。

新体制の正統性確立には、国民に配給する食糧の確保が欠かせない。北朝鮮はコメなど穀物30万トン以上の支援を求めたとされる。

米国は、食糧支援には応じる構えだ。ウラン濃縮停止に応じさせる呼び水にする考えがあろう。

ただし、支援が必要な乳幼児や妊産婦向けにビスケットや粉ミルクなど栄養食品24万トンを提供するというものだ。軍への転用を防ぐには妥当な提案と言える。

重要なのは国際原子力機関(IAEA)の監視下で、北朝鮮にウラン濃縮を停止させることだ。

北朝鮮が米国の核専門家にウラン濃縮施設を公開した時から1年以上がたった。濃縮能力は相当進んだと見なければならない。

北朝鮮は、建設中の原子力発電所に必要な核燃料製造を目的とした「平和利用」のウラン濃縮だと主張している。だが、核兵器に使う高濃縮ウランの獲得につながりうる危険な核開発だ。

すでに北朝鮮はプルトニウムを使った核実験を2回強行した。核とミサイルを「革命遺産」と位置づけ、手放す気配はない。

一方で、条件次第では、核実験やミサイル発射、ウラン濃縮の停止に応じる構えも見せている。

安易な妥協は禁物だが、核開発のスピードを抑える手だてを講じなくてはならない。

北朝鮮の核とミサイルは日本の安全を脅かしている。日本政府は日米同盟を強化し、抑止力を維持しなければならない。経済制裁による圧力で、北朝鮮の新体制に核放棄を迫り続ける必要がある。

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