パート従業員が正社員と同じ厚生年金や健康保険に入れるようにし、将来、少しでも多く年金が受け取れるようにする。
野田政権が進める「社会保障と税の一体改革」で、貧困・格差対策の柱となる政策だ。
ところが、民主党内で反対論が噴き出し、前原誠司政調会長も「慎重に対応」と腰が引け始めた。
パートを多く雇う小売りや外食などの業界を中心に、人件費が増えるのを嫌う経営者が強く反発しているからだ。
法案の提出は予定した3月中旬に間に合わず、「一体改革」といいながら、増税法案と切り離されそうな雲行きだ。
いま、サラリーマンの妻以外のパートは、国民年金と国民健康保険に加入し、保険料は自分で払わないといけない。
未納が続けば、低年金になるし、医療の「無保険」は命にもかかわる。社会のセーフティーネットが破れやすい部分だ。
改革案は、正社員と同じ社会保険に入る対象を、「週に働く時間が30時間以上」から「20時間以上」に広げる。新たに100万~370万人のパートが加わることを想定している。
保険料は労使が半分ずつ負担するため、雇い主には全体で年間数千億円規模の負担増だ。最初から、強い抵抗に遭うことは予想されていた。
そこを粘り強く説得し、調整するのが政治のはずだ。
パートの加入拡大は、一体改革のなかで現役世代を支援する政策の目玉である。
高齢者の年金には加算するのに、パート年金のほうはあきらめる。そうなれば、「全世代対応型」という一体改革の看板は偽りとなる。
自公政権は07年、厚生年金の加入を拡大し、新たにパート10万~20万人を対象とする法案を提出した。
このとき、野党時代の民主党は、「抜本改革でない」と反対し、廃案に追い込んだ。もし成立していたら、昨年9月にスタートしていたはずだ。
今回の案は、年金だけでなく健康保険も対象だ。新たに加入対象となるパートの数も大きく増やした。「抜本改革」により近いのに、今度は「企業負担が重すぎる」と尻込みしては、筋が通らない。
民主党が先日、試算を公表した新年金案ではどんな短時間のパートも正社員と同じ年金に入る。今回の案もまとめられないなら、実現性はさらに薄れる。
何も決められないままでは、民主党政権は国民から本当に見はなされるだろう。
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