与野党は衆院選の「1票の格差」をいつまで放置し続けるのか。
衆院選挙区画定審議会(区割り審)は、一昨年の国勢調査を踏まえた区割り案を政府に勧告する法的義務を負う。だが、昨春の最高裁判決で違憲状態とされた後、作業を中断せざるを得なくなった。
法律に基づく25日の勧告期限までに案をまとめるのは不可能で、違法状態に陥るのは確実だ。
区割り審の村松岐夫会長が、区割り作業の前提となる格差是正の立法措置を急ぐよう国会に求めているのは当然である。国会が決めなければ、区割り審は作業に入ることができない。
民主、自民両党は既に、山梨や高知、佐賀など5県の定数を一つずつ減らす「0増5減」を図る格差是正策で一致している。
両党だけでも実現できるのに手をこまねいているのは怠慢だ。
最大の問題は、与野党協議を主導する民主党が、格差是正だけでなく、比例定数の80削減との同時決着にこだわっていることだ。
社会保障と税の一体改革に伴い、消費税率の引き上げで国民に負担を求める以上、政治家が「自ら身を切る」姿勢を示す必要がある、と考えているからだ。
だが、立法府が自ら違法状態を招くという事態は許されない。
法改正で勧告期限を延ばす手段もあったが、民主党の輿石幹事長は、「無意味な問題だ」と否定した。そう言うなら、自ら積極的に、違法状態から抜け出す努力を尽くすべきである。
一方、公明党は、中小政党に不利とされる比例定数80削減に難色を示している。その上で、抜本改革として、小選挙区比例代表連用制の導入を主張している。
見過ごせないのは、政府・民主党内に、国会運営で公明党に協力してもらう代わりに、連用制の部分的な受け入れを模索する動きがあることだ。
連用制は、比例選で中小政党を著しく優遇する。第1党が過半数を取りにくく、政策決定が今以上に困難になる可能性がある。
定数削減は、選挙制度の抜本改革とともに腰を据えて取り組むべきだろう。
自民党の谷垣総裁は、民主党が格差是正の先行処理にあまりにも及び腰なことから、「与党の態度には解散を先送りする意図がうかがわれる」と指摘した。
政局の駆け引き材料となれば、問題は一層こじれる。与野党は、違憲・違法状態の解消を急がねばならない。
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