発電量の5割超を原発に頼っていた関西電力は、高浜3号機(福井県)が定期検査に入り、全11基が停止する原発ゼロ態勢となった。
すでに中部や九州などの各電力が原発を止めており、残るは東京、北海道の各1基だ。
再稼働をめぐっては、原子力安全委員会が大飯3、4号機のストレステスト(耐性評価)の結果について検討会を開く。関電は「これが動かなければ夏を乗り切れない」と主張する。
だが本当にそれほど厳しい状況なのか、と首をかしげる消費者も多いのではないか。
関電は今冬、「10%以上」の節電を顧客に要請した。火力や水力のフル稼働、自家発電からの買い取りを加えても供給力が需要を12%下回ると説明した。
ところが電力使用量は想定の70~80%台が続き、90%以上は2カ月で5日間だけだった。
過去5年で最大だった使用量をもとに需給を予測した結果だ。全原発停止後も直ちに逼迫(ひっぱく)する状況にはないという。
休止していた火力発電所の再立ち上げや夜間の余力を使った揚水発電を活用したほか、昨冬比で約5%減、110万キロワット分の節電効果があった。
需給の前提が大きく変わりつつある。電力会社は需要予測を見直す必要がある。
最も電力が使われる時の需要に合わせ、発電態勢を整える発想も転換を迫られよう。
今月3日、九州電力の火力発電所が故障し、電力6社は最大240万キロワットを融通した。ふだん上限とされる規模の数倍だ。緊急時には広域送電網が有効であることを裏付けた。
関電は昨年4~12月の決算で1千億円超の赤字となった。燃料費の増加を理由にあげる。当面の値上げは否定するものの、「業績回復のためにも原発の再稼働を」と主張する。
しかし業績を言うのなら、手つかずの役員報酬や人件費の削減、遊休資産の売却などの合理化が先決だろう。
大阪府と大阪市は関電に対し、原発の安全対策や再稼働しない場合の各発電所の運転計画、コスト削減策、政治家のパーティー券購入費など30項目について情報開示を求めている。
どの程度節電すれば原発なしで済み、値上げを避けられるのか。住民の理解を得るために誠実に回答するべきだ。
原発を減らしつつも燃料費を抑制し、産業活動と生活レベルを守る。日本が直面するこの難しい状況を乗り切るには、電力会社が正確な情報を出し、国民と共有する姿勢が不可欠だ。
この記事へのコメントはありません。