社会保障と税にかかわる個人情報を一つの番号にまとめる共通番号制度(マイナンバー)の法案を、政府が国会に出した。
すべての国民と法人に一つひとつ番号を割り振り、年金や医療・介護、雇用保険、税務などの手続きや災害時に使う。
年金手帳や保険証はいらなくなり、写真入りのカード1枚で済む。政府は2015年までに利用を始めたい考えだ。
国や地方の財政は厳しい。所得や資産に応じてきちんと納税してもらい、本当に必要な人に漏れなく給付が行き渡るようにしなければならない。
異なる制度にまたがる情報をつなげることで、行政効率の面でも役に立つはずだ。
番号制は、消費増税でもめる社会保障と税の一体改革と関連が深い。このため国会審議にすんなりとは入れそうにない。
ただ、制度の必要性では、与野党の間に大きな争点はないだろう。一体改革と切り離して議論を進めてはどうか。
心配なのは、内閣府の調査で8割の人が「内容を知らない」と答えていることだ。
番号制は、個人情報が漏れるリスクと背中合わせだ。
独立性の高い監視機関を設けるなど、手だては幾重にも盛り込まれているが、どんな制度にも「絶対安全」はない。
安易に身分証明代わりに使ったりしないよう、一人ひとりが中身を知っておかないと、大きな被害につながりかねない。
番号の具体的な使い方を決めるのも、これからの作業だ。
たとえば、医療や介護にかかる費用に、世帯単位で上限を設ける「総合合算制度」や、消費増税にともなう生活費の増加分を援助する「給付つき」の税額控除制度。いずれも番号制導入の目玉だが、個別に法律を設けないと実現できない。
そもそも、共通番号で名寄せできる所得情報に、利子所得は入っていない。源泉徴収で金融機関が預金者をまとめて申告するためだ。
だが、本当に負担の公平性を考えるなら、利子所得や金融資産は個々に把握できるよう検討すべきだろう。
番号制をめぐっては過去に納税者番号として何度か浮上し、懐を探られることへの反発から頓挫してきた歴史がある。
このため政府は給付や減税などの「恩恵」を強調しがちだ。しかし、いいことばかりの説明では、かえって不信を招く。所得の把握を透明にする意義も、訴える必要がある。
もっと関心を持とう。国会での審議は、その一助になる。
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