選挙制度改革 連用制は一部導入でも禁物だ

毎日新聞 2012年02月18日

衆院選挙制度改革 「0増5減」早く実施を

選挙制度は民主主義の根幹を支える要素だ。与野党とも、そんな意識が希薄ではないか。

衆院選挙制度改革をめぐる与野党の協議が難航している。焦眉(しょうび)の急である「1票の格差」是正がなかなか進展せず、法律が定める区割り見直しの勧告期限を延長することで結論を先送りする可能性も出ている。

小選挙区の1票格差が最大2・30倍となった09年の衆院選について最高裁は違憲状態との判断を昨年3月に示し、各都道府県に1議席をまず配分する「1人別枠」方式の廃止を求めた。これを受けて民主、自民両党は小選挙区について「0増5減」の緊急措置では一致している。

ところが衆院の定数削減問題と選挙制度の抜本見直し論議が絡み、事態は行き詰まっている。民主党は衆院比例定数の80削減を主張している。一方で、公明党は議席配分が中小政党に有利とされる小選挙区比例代表連用制の導入による抜本改革の同時実施を求めている。

各党協議会で民主党の樽床伸二幹事長代行は連用制の一部導入を検討する私案を示したが結論は得られず、幹事長級協議に結論は委ねられた。国勢調査に基づき衆院の区割りを見直す選挙区画定審議会は2月25日までに見直しを勧告するよう法律で定めている。このままでは、単純に期限だけ延長するかどうかの判断を与野党は迫られる。

国会議員自らが身を削る定数削減は必要だ。ただし、あるべき選挙制度はしっかり議論すべき問題だ。

「連用制」に対しては中小政党に配慮しながら比例定数削減を進められると評価する声の一方で、比例代表の投票先と結果が乖離(かいり)することへの批判もある。現時点では違憲状態の1票格差の緊急是正を優先することが現実的だろう。

区割り審議会の作業は最高裁の違憲状態判決を受けて停止しており、仮に勧告期限だけが延長されても「1人別枠」の廃止が法制化されないと、作業は再開できない。違憲状態を放置したままで、期限切れの違法状態の解消だけすませようとしても意味がない。

民主党が「0増5減」を先行させることに及び腰な背景には、連用制の導入を、国会運営で公明党の協力を得るためのカードとして温存したい思惑もあったようだ。選挙制度を駆け引きの材料として使うべきではない。

国会の緊迫も予想される中、仮に格差是正措置で合意しても新たな区割りで次期衆院選が行われるか、すでに微妙な状況だ。公務員給与の削減問題もようやく進展したようだ。最低限なすべきことを処理することで「決められない政治」から脱却しなければならない。

読売新聞 2012年02月16日

選挙制度改革 連用制は一部導入でも禁物だ

衆院の選挙制度を巡る与野党の論議が難航しているが、拙速な改革は避けなければならない。

各党協議会で15日、座長の樽床伸二民主党幹事長代行が、比例選の見直しなどを柱とする私案を提示した。

比例選の定数180を80削減した上で、現行の小選挙区比例代表並立制をベースに、「民意が過度に集約されることを補正するための措置を講ずる」と明記している。具体的には、比例選の一部を「連用制」とする案に言及した。

比例定数の削減に中小政党が反対しているため、公明党が求める連用制を部分的に導入することで妥協を図ったと言える。

だが、連用制は、小党分立が避けられず、連立政権が常態化するなど、問題が少なくない。

連用制は、小選挙区で多くの議席を獲得した政党ほど、比例選では議席を獲得できなくする仕組みである。中小政党にとっては比例選で極めて有利となる。

読売新聞の2009年衆院選を基にした試算では、比例定数を80削減し、連用制を適用した場合、民主党の比例議席は3であるのに、公明党は30を超える。

有権者の意向に沿わない形で議席が配分されることに、自民党などから批判が出るのは当然だ。並立制と連用制の組み合わせ自体、極めて分かりにくい。

部分導入にせよ、連用制の割合が高まれば、中小政党は比例定数が80削減されても、これまで同様の議席を得る公算が大きい。

その分、民主、自民両党が過半数を獲得するのは難しくなる。両党とも過半数割れすれば、中小政党がキャスチングボートを握ることになり、国政の混乱を招く。

座長私案はまた、「1票の格差」是正について、山梨や福井、佐賀など5県の定数を1ずつ減らす「0増5減」としている。自民党の案に民主党が同調した。

民主、自民両党が協力すれば成立は可能となる。最高裁から「違憲状態」と指摘されている以上、先送りは許されない。

座長私案は抜本改革について、次期衆院選後、有識者らによる選挙制度審議会を設置して、1年以内に結論を出すとした。その際、「参院選挙制度改革を踏まえつつ、『新たな中選挙区制』など」の検討にも言及している。

衆参がねじれにくく、政治家の質も高まるような制度の検討を、有識者に委ねるのも一案だ。

格差是正と比例定数削減、抜本改革を段階を踏んで実現できるよう各党は合意してもらいたい。

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