一体改革大綱 国会論戦で出口探せ

朝日新聞 2012年02月18日

一体改革大綱 民主も結論を出す時だ

野田内閣が税と社会保障の一体改革の大綱を閣議決定した。消費増税を柱とする法案を、3月中に国会に提出する。その方針に沿って、半歩進んだ。

政府・与党が1月に素案を決めてから40日が過ぎている。野党との事前協議が成り立たないのだから、政府・与党単独での大綱決定は当然だ。

この間の野党、とりわけ自民党には失望させられた。消費増税の必要性を認め、当面10%という引き上げ幅も同じなのに具体的な対案を示さない。

民主党のマニフェスト違反をあげつらい、政権に衆院解散・総選挙を迫るばかりだった。

もはや野田首相は、一日も早く法案を提出し、国会論戦を通じて妥協点を探るしかない。

ところが、こんな現実を前に、民主党内には相変わらずの光景が広がっている。いまだに増税反対論が根強くあるのだ。

現下のデフレ経済のもとでは増税すべきではない、国会議員や公務員の経費削減が先だ、といった意見が渦巻く。

朝日新聞の2月世論調査で、政府の増税案に賛成40%、反対46%、最大の反対理由が「国の経費削減が進んでいない」だったことも、こうした意見と重なる部分がある。

だが、菅政権以来、3年ごしの議論を経て、少なくとも党内の大勢はとうに決しているはずだ。先の党代表選で消費増税を明言した野田首相を選んだのは民主党自身ではないか。

もちろん、政官ともに「身を切る改革」は絶対に必要だ。それと同時並行で、消費増税の作業を進めるべきなのだ。

大綱が増税にあたって約束した改革のうち、国家公務員の給与削減策は、ようやく民主、自民、公明3党が合意した。残る国会議員の定数削減も早急に詰めてほしい。もっと徹底してムダを省き、歳出を削減することも欠かせない。

今後は、民主党内のとりまとめが紛糾したり、野党が内閣不信任案や首相の問責決議案提出をうかがったりする緊迫した局面も想定される。

すでに党内の最大勢力を率いる小沢一郎元代表は最近のインタビューで、法案の閣議決定にも衆院での採決にも反対する考えを明言している。

もし、最後まで増税に反対する勢力がいるのならば、たもとを分かつしかない。首相には、その覚悟を強く求める。

与野党の駆け引きが激化し、国会の混乱は避けられないだろう。そのとき首相に求められるのは、一体改革の必要性を、愚直に国民に訴えることだ。

毎日新聞 2012年02月18日

一体改革大綱 国会論戦で出口探せ

ほぼ素案のまま、税と社会保障の一体改革の大綱が閣議決定された。最低保障年金をベースにした新年金制度という火種を抱えた大綱だ。野田佳彦首相は3月中に消費増税法案を閣議決定し国会に提出する意向だが、野党側の批判は必至だ。また、与党内には根強い増税反対論が渦巻いている。まったく先の見通しの立たない状況だが、国会論戦でなんとか出口を見つけてほしい。

新年金制度について整理しておこう。公表された試算は4通り。従来の説明に最も近い案は「平均年収260万円までは月7万円の最低保障年金を満額支給し、それを超えると給付を減らし年収690万円でゼロにする」というもので、75年度時点で消費税7・1%分の財源が必要になる。もちろん一体改革で示した5%増税とは別にである。他の3案は給付対象を絞ったもので財源規模は小さくなるが、中間所得層を中心に現行より給付水準が下がる人が多くなる。税と保険料で賄われている現在の基礎年金が廃止されるためだ。

所得の把握が難しい自営業者はどうするのか。被用者は保険料を雇用主と折半しているが、その分も自営業者は払うことになるのか。また、新制度は低所得者層に厚く給付し格差をなくすメリットはあるが、制度の完全実施まで40年かかることも問題だ。その間、無年金・低年金の人はどうするのか。

年金は、元気で働ける時に保険料を納め、高齢で働けなくなったときに生活に必要な給付を受けられる制度で、保険料を払った人は受給権を得られる。資産・収入や扶養義務者の状況などを厳しく調べた上で最低限の生活を保障する生活保護とは根本的に趣旨が異なる。民主党の最低保障年金はどちらなのだろう。

いずれにせよ、民主党議員のほとんどが新年金制度の実像を初めて知ったはずである。本来ならば党内で議論が噴出してもおかしくないが、その気配はない。「あくまで参考資料で、一体改革とは別だ」との釈明が民主党幹部から聞かれるが、そうであれば大綱から削除するのが筋であろう。素案には財源の根拠を示さない項目がどさくさ紛れに盛り込まれたが、「一体改革」と銘打つのであれば財源の裏付けがあるものに限って大綱に入れるべきだった。

年金をめぐる与野党の論戦はすでに国会で始まっており、自民党や公明党の中堅議員による質疑は聞き応えがあるものが多い。岡田克也副総理は新年金制度の撤回もあり得ることを示唆した。現実的な論戦を重ねることで妥協点を見いだしてほしい。年金以外にも大綱には重要な社会保障改革案がいくつも盛り込まれている。国会論戦に注目しよう。

読売新聞 2012年02月18日

一体改革大綱 実現へ民主と自民は歩み寄れ

政府が、消費税率の10%への引き上げを柱とする社会保障・税一体改革大綱を閣議決定した。

目指す方向は妥当である。野田首相は、大綱に合わせたビデオメッセージで「将来の世代にツケを回す無責任なことはやめるべきだ」と訴えた。

国民負担を伴う一体改革を実現するには、世論の支持が欠かせない。首相は国民の理解を広げるため、全力を挙げねばならない。

今回の大綱決定は、首相が呼び掛けた与野党協議が行われないまま、見切り発車となった。政府は3月末までに関連法案を提出するが、衆参ねじれ国会の下、成立の見通しは立っていない。

政府・与党は、引き続き、野党に協力を求めていくべきだ。それには、これまでの過ちを認めて謝罪しなければならない。

最大の問題は、民主党が2009年衆院選の政権公約(マニフェスト)に掲げた「新年金制度」の実現に取り組む、と大綱に盛り込んだことだ。野党が撤回を求めたのに、政府・与党は拒否した。

現行の年金制度改革を最優先するのは当然だ。その先の課題である、中長期の改革にこだわる野田政権の姿勢は理解できない。

この時期に、野党の反発を招くような態度を取るのも得策とは言えない。岡田副総理が、一体改革の実現を訴える全国行脚を、自民党の谷垣総裁の地元・京都府舞鶴市から始めたことなどである。

民主党内では、小沢一郎・元代表のグループが、消費税率引き上げ関連法案の提出を阻止する構えだ。行政改革や、衆院議員の定数削減、デフレ脱却にまず取り組まなければならないとしている。

だが、いずれも、法案提出の前提条件とすべきではない。選挙を意識して、消費税率引き上げによる財政再建を先送りするのは無責任である。

一方、自民党は、早期の衆院解散・総選挙を求めるだけで、与党との協議を拒み続けている。財政の危機は、長年政権を担当した自民党にも責任がある。野田政権に協力して改革を実現すべきだ。

各種世論調査で、内閣支持率が低迷しているにもかかわらず、自民党への支持は広がっていない。自民党の姿勢が党利党略と受け取られているからだろう。

自民党は、消費税率を10%とする方針を掲げているが、引き上げ時期などは明確ではない。

自民党こそ、党内論議を進め、税と社会保障改革の具体像を改めて示すべきだ。そうでなければ、政府案に対抗できまい。

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