オリンパス事件 巨額粉飾の厳正な責任追及を

毎日新聞 2012年02月17日

オリンパス粉飾 「指南役」追及も厳しく

オリンパスの損失隠し事件をめぐり、当時の経営トップらが、金融商品取引法違反の疑いで、東京地検特捜部などに逮捕された。

逮捕者には不正の「指南役」とされる外部協力者も含まれる。その刑事責任を厳しく問うとともに、長年にわたる複雑巧妙な損失隠しの全容を解明し、日本市場の信頼回復につなげてもらいたい。

オリンパスの前会長・菊川剛容疑者ら前役員3人は外部協力者4人と共謀し、07年3月期と08年3月期に会社の資産額をそれぞれ約1100億円水増しし、有価証券報告書に虚偽記載した疑いがもたれている。

同社は事件に関与したり、不正を防げなかったりした現旧の取締役や監査役に対し、損害賠償請求訴訟を提起している。こうした事件が繰り返されることのないよう、刑事、民事の両面から、関係者の責任追及が徹底されることを期待する。

今回の事件が深刻なのは、上場企業の巨額な不正経理が、長年にわたって見逃されてきたことだ。日本企業の会計報告に対する投資家の信頼が、大きく損なわれかねない。

問題の第一は、取締役会や監査役会、監査法人とさまざまな段階で不正をチェックするはずの機関が、機能していなかったことにある。少なからぬ日本企業に共通する課題といえるだろう。

法制審議会は社外取締役の義務付けなどを内容とする会社法改正を検討している。日本公認会計士協会も不正経理への対応を強化する対応策をまとめた。必要なのは不正防止への関係者の覚悟とそれを担保する制度だ。機能強化の取り組みが、形だけに終わらないよう望みたい。

今回の事件では、不正経理の「指南役」の存在も大きい。数十億円の報酬を得て、含み損を抱えた金融商品を英領ケイマン諸島に設立したファンドに移し替える「飛ばし」などの手口を助言した疑いがある。

会計操作を駆使して損失隠しや課税逃れなどを支援する「経営コンサルタント」「投資助言会社」の存在は、以前から指摘されてきた。しかし、金融庁などの監視は行き届いていない。

その意味で、捜査当局が今回、そうした「指南役」を摘発した意義は大きい。徹底した捜査で、不正への関与の実態を明らかにし、刑事責任を厳しく追及してほしい。

今回の事件などを契機に、金融庁は、金融商品取引法を改正して、不正経理や粉飾決算を指南した第三者も行政処分の対象に含めることを検討しているという。日本市場に対する信頼を確保するため、強力な調査権限の付与を含め、実効性のある改正を求めたい。

読売新聞 2012年02月17日

オリンパス事件 巨額粉飾の厳正な責任追及を

粉飾は歴代トップが了承し、10年以上も続いていた。市場の公正さをゆがめる言語道断の行為である。検察は全容を明らかにしてもらいたい。

世界的な光学機器メーカー「オリンパス」の菊川剛前会長ら旧経営陣3人が、有価証券報告書に虚偽の記載をした金融商品取引法違反の疑いで、東京地検特捜部に逮捕された。

含み損を抱えた金融資産を海外ファンドに移し替える「飛ばし」などにより、2007年と08年の3月期決算で会社の資産額をそれぞれ1100億円も水増しした疑いが持たれている。

不正が長い間、表面化しなかったのは、粉飾の仕組みが国境をまたぐ複雑なものだったからだ。

「飛ばし」の受け皿となるファンドは、租税回避地の英領ケイマン諸島などに作られた。不正工作に使われた資金はリヒテンシュタインの銀行が用立てた。

仕組みを考案し、海外の金融機関を紹介していたのは、金融のプロである国内大手証券会社の元社員らだ。今回、こうした外部協力者4人も、粉飾の共犯として逮捕されている。

金融・証券の専門知識を駆使し、オリンパスの経営陣に粉飾を「指南」していたとすれば悪質だ。数十億円の巨額報酬を受け取っていたとの指摘もある。

検察は海外の捜査機関と密接に協力して解明を進め、厳正に刑事責任を追及すべきだ。

一方、不正を見過ごした責任も問われねばなるまい。

オリンパスは第三者委員会の調査に基づき、現旧の取締役19人と監査役5人に対し、損害賠償を求める訴訟を起こしている。

この中には、粉飾を主導した菊川前会長らだけでなく、損失穴埋めに利用された企業買収を、十分に検討することなく承認した取締役や監査役も含まれている。

取締役や監査役には本来、会社に損害を与えるような不正を防ぐ注意義務がある。それを果たせなかったのだから、民事責任を追及されるのは当然だろう。

賠償請求の対象からは外れたものの、決算に「適正意見」を出していた監査法人の責任も重い。なぜ粉飾を見抜けなかったのか。

日本市場に対する国際的な信用を回復するためにも、企業統治を強化し、不正の再発を防ぐ体制を築く必要がある。

オリンパスの株式は、東京証券取引所の判断で上場を維持されたが、それに甘えるようなことがあってはならない。

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