関門海峡で海上自衛隊の護衛艦「くらま」と韓国籍のコンテナ船が衝突した事故は、海峡の航路の安全性という問題も浮かび上がらせた。
海上保安庁の第7管区海上保安本部が本格捜査に入り、国土交通省の運輸安全委員会も調査に乗り出した。原因を徹底究明し、再発防止につなげてほしい。
現場は海峡の幅が約650メートルと狭く、潮の流れが速い難所として知られていた。
護衛艦は相模湾で行われた海自の観艦式に参加し、母港の佐世保に戻る途中だった。コンテナ船は韓国・釜山港から大阪に向け、護衛艦と逆方向に進んでいた。
海上衝突予防法は、狭い水道や航路筋では右側航行を義務づけている。衝突は、コンテナ船が前を行く貨物船を左側から追い抜こうとしたために起きた。
7管の調べで、コンテナ船の操船に問題があったとの見方が出ている。貨物船に約2倍の速度で近づき、追突寸前の状態になったため、貨物船を避けようとして左へ急旋回したというのだ。
船舶には、他の船舶との衝突を避けるために、常時安全な速度で航行し、適切な見張りをすることが義務づけられている。
コンテナ船の速力や見張りの態勢に問題はなかったのか。衝突に至るまでの船長、乗組員の行動を詳細に調べる必要がある。
コンテナ船が左旋回したことについて、7管の関門海峡海上交通センターの管制官が事故の約2分前、コンテナ船に「貨物船の左舷側を追い抜いてほしい」と連絡していたこともわかっている。
コンテナ船に接近された貨物船が「右側へ寄って左側を追い越させる」とセンターに連絡してきたのを受けた措置だった。
これについて7管は「情報提供が事故原因になった可能性は否定しない」としている。
いずれにしても、まだ原因調査は始まったばかりだ。様々な可能性を慎重に調べる必要がある。
海自にとっては、昨年イージス艦が漁船に衝突して以来の大きな事故だ。改めるべき課題があるか独自に調査してもらいたい。
関門海峡は中国や韓国と結ぶ貿易船の重要な航路である。外国船を中心に、通過する大型船が増えている。しかも、事故が頻発している海域でもある。
道路交通のように、追い抜き禁止帯を設けるなど、航行のルールも検討すべきだろう。外国船に関門海峡の危険さを周知徹底していくことも重要だ。
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