大阪市の橋下徹市長が代表を務める大阪維新の会が、次の衆院選に向けた公約集「船中八策」の骨格をつくった。
これまで主張してきた都市制度や公務員、教育改革に限らず、外交、経済、社会保障など幅広い分野に言及している。
衆院選で300人を擁立し、200議席をめざすという。
地域の政治団体が国政に乗り出して国を変えようとすることを否定はしない。しかし、大阪都の実現を目標としていた維新の会が、国政での大量議席獲得にかじを切った理由が十分説明されたとはいいがたい。
昨年11月の市長選直後、橋下市長は「大阪都実現がゴール。国を変えるのは国会議員で、市長の僕が考えるのはやりすぎ」と言っていた。
国政進出は、他党から「都構想への協力が得られなければ」という限定付きだった。
実際、自民やみんなの党は協力姿勢を示し、地方自治法の改正案を提案している。
そんななかで、さらに大きな目標を立てて突っ走る。「国盗(と)り」こそが真の目的だったということだろうか。
市長就任から約2カ月。橋下氏は矢継ぎ早に改革の方針を打ち出しているが、いずれも緒についたばかりだ。地域政党として「国の政党と一線を画す」「大阪再生をめざす」という同会の設立趣旨もそのままだ。
維新の会は橋下氏個人の人気で勢力を広げてきた。ところが橋下氏は自身の衆院選出馬を否定する。国政を握ろうとする党のトップが自治体の長にとどまる是非も今後問われるだろう。
公約集には、参議院の廃止や首相公選制といった改憲が前提となる案、年金の掛け捨て制など既存の枠組みを抜本的に変える発想が含まれる。問題意識を並べたアイデア段階ともいえる。世に問うには、党内でもっと議論を煮詰める必要がある。
一方で来月開講する維新政治塾には3千人以上の応募があり、候補者予備軍となろう。
スピード感を持って既得権益に挑む橋下氏の姿は、公約を実現できず毎年のように首相が代わる国の政治と好対照をなし、力強く映る。
しがらみのない地域政党なら何かをやってくれそうだという漠とした期待も生んでいる。
世論調査の結果からも、政治に新風を吹き込む勢力として、維新の会が相当の支持を集めているのは事実だ。
既成政党は、維新の何が世間を引きつけるのか考えるべきだ。根っこにあるのは、今の政治全体に対する不信感である。
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