復興庁発足 現地の機能を最優先に

朝日新聞 2012年02月11日

復興庁発足 被災地と二人三脚で

復興庁が、きのう発足した。

東日本大震災の復興事業を統括し、被災した自治体からの復興特区や交付金の申請などの窓口となる。

野田首相をトップに、平野達男復興相のもと、本庁を東京に置き、盛岡、仙台、福島各市に復興局、沿岸部の自治体に8カ所の支所や事務所を設けた。

迅速かつ丁寧で、手厚い対応を期待する。

だが、震災発生から11カ月もかかったあげくに、組織としての機能に疑問符がつきまとう厳しい船出である。

野田首相は、要望などを一手に引き受ける「ワンストップ窓口」だと強調してきた。1兆9千億円の復興交付金も「使い勝手がいい」といってきた。

しかし、どちらも看板倒れではないのか。そんな声が、被災地に広まりつつある。

復興庁の職員は各省から集めた約250人。本庁160人、被災地90人の体制だ。ほかに国土交通省はじめ、各省の出先機関の職員らが併任される。復興局にも権限を与えるというが、2020年度までの時限組織だけに、職員は出身官庁の意向も背負わざるを得まい。

復興相には他省庁への勧告権があるが、どこまで通用するのか。「ワンストップではなく、ワンステップにならないか」という村井嘉浩宮城県知事の言葉が地元の不安を象徴する。

復興交付金も使い道が狭い。対象となる事業が、国交省など五つの省が所管する40事業とその関連事業に限られるためだ。高台への集団移転や道路建設、学校の新増築などはあるが、湾内のがれき処理などの浚渫(しゅんせつ)はない。「それは別途、水産庁などの予算で」という。

すでに78市町村が、5千億円近い事業を申請している。その採否と金額は、事業を所管する官庁と調整して決める。地方の実質負担はないが、要するに、一般の補助金をめぐる国と地方の関係と同じなのだ。

ある町の幹部は「何にでも使えるといっていたのに、結局は国のメニューから選べということ。税金だから査定は仕方がないが、現場と霞が関の感覚の違いを感じる」と話す。

この感覚の違いを、埋められるかどうか。それが復興庁の評価の分かれ目になる。霞が関の理屈で「それはできない」と拒むのではなく、被災地側に立って「これはできる」と言う役割を果たさねばならない。

今後は交付金の対象事業の拡大や、見直しもすべきだ。

ひたすら自治体と二人三脚で歩む。それが復興庁の使命だ。

毎日新聞 2012年02月10日

復興庁発足 現地の機能を最優先に

東日本大震災の復興行政に一元対応するための復興庁が10日、発足する。2020年度末までの時限組織として、被災地支援を担う。

被災自治体に対する窓口を一本化し目標とする「ワンストップ機能」を名実ともに果たさないと、位置づけがあいまいなお荷物組織となりかねない。現地に置く復興局の機能強化を特に、強く求めたい。

「3・11」の震災発生当時、復興体制作りにここまで日時を要するなど、思いもよらぬことだった。発生から1年近くを経るまで発足が遅れたことは、政治の汚点である。

発足する復興庁は本庁を東京、出先の復興局を岩手、宮城、福島に置くほか支所や事務所を設ける。復興施策の企画、総合調整のほか住民の集団移転など復興事業や特区の認定、復興交付金の配分などを担い、府省縦割り行政の排除を目指す。

復興担当相だった平野達男氏を初代復興相として新組織は船出するが、早くも懸念が指摘されている。何より避けたいのは、新組織が縦割り行政の中で埋没する事態だ。

そもそも復興体制の整備が難航したのはできるだけ組織を簡素化したい政府・民主党と、司令塔としての体制強化に力点を置く自民党のスタンスがかみあわなかったためだ。

復興庁は組織上は他省より格上で、復興相には各省に勧告する権限が与えられている。発足した以上は調整機能をきちんと果たさないと、被災自治体に二度手間の負担がかかる。他省に相談をたらい回ししないルールを徹底しなければならない。

その意味で、現地出先機関である復興局の役割は重い。都市計画など専門的な実務に詳しいスタッフを自治体、民間からそろえると同時に、中央と調整にあたる一定の発言力が必要だ。国会答弁は復興相に一元化し、副大臣、政務官は現地に常駐させることで与野党が合意するような工夫が必要だ。

復興庁は、原発事故の被害が深刻な福島の復興も受け持つ。放射性物質の除染作業や避難区域の見直し作業が大きく影響するだけに、他省と密接に連携する枠組みを作らないと実効ある青写真は描けまい。

被災地に配分される復興交付金については、使い道の自由度が低いとの不満が早くも関係自治体から聞かれ始めている。住民の高台移転など調整に時間がかかる事業に必要な財源を確保するためにも、復興事業の認定や交付金の配分に一定の枠をはめることはやむを得まい。

だからといって、地元の意欲をそいでしまっては元も子もない。被災自治体が説得力のある復興プランを描けるよう、血の通った運営に復興相は留意しなければならない。

読売新聞 2012年02月11日

復興庁発足 「屋上屋」を排し事業の加速を

東日本大震災の発生から11か月。批判され続けてきた復旧・復興の遅れを取り戻す契機としなければなるまい。

復興庁が発足した。平野復興相の下、副大臣2人が増員された。盛岡、仙台、福島各市に復興局を置くほか、沿岸部の被災地6か所に支所を設置した。

復興庁は、復興政策の統括と企画立案や、復興特別区域の認定、復興交付金の配分などを行う。復興事業自体は、国土交通など各府省がそれぞれ実施する。

重要なのは、被災自治体との連携だ。復興庁の常勤職員250人のうち160人は東京勤務で、地方勤務は90人しかいない。地方の体制をもっと拡充すべきだ。

市町村からの相談・要望を待つだけでなく、復興庁側が「ご用聞き」に回る姿勢が肝要である。

平野復興相は、相談を1か所で受ける「ワンストップ対応」を強調する。だが、首長側には「余計なワンステップ(1段階)にならないか」との懸念がある。

復興庁に相談しても問題が解決せず、各府省に足を運ばざるを得なくなるようでは、復興庁は「屋上屋」との批判を免れない。

霞が関では、各府省の許認可権をめぐる縄張り争いや、除染に関する責任の押し付け合いなど、昔ながらの「縦割り」行政の弊害が再び目立ち始めている。

復興庁は、他省に勧告したり、復興関連予算を一括要求したりする権限を持つ。これを有効利用して、「縦割り」を打破し、司令塔の役割を果たしてもらいたい。

9日には、復興特区の第1弾として、宮城県の「民間投資促進特区」と岩手県の「保健・医療・福祉特区」が認定された。申請から10日前後の「スピード認定」を各自治体は歓迎している。

事務作業の遅れで復興を停滞させてはならない。復興庁は、各自治体との意思疎通を密にし、迅速な特区認定を行う必要がある。

特区制度が最大限活用されるためには、制度の運用に知恵を絞るとともに、自治体と民間企業の連携を後押しすることも大切だ。

総額1兆8000億円の復興交付金の配分では、事業を精査しつつ、自治体の使い勝手と迅速さを重視することが求められる。

原子力発電所事故が起きた福島県について、政府は、国が自治体の社会資本復旧事業を代行するなどの福島復興再生特別措置法案を閣議決定した。

国がより前面に出て、手厚い支援を行うのは当然だ。与野党は法案の早期成立を図ってほしい。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/965/