シリア情勢 流血停止に重いロシアの責任

毎日新聞 2012年02月08日

中東情勢 大国は責任ある対応を

流血が続くシリア情勢の打開をめざす国連安保理決議案が4日、またも葬り去られた。昨年10月、対シリア非難決議案が採決された時と同様にロシアと中国が拒否権を行使したのだ。2度にわたる露中の拒否権は無責任と言うしかない。シリアの人道危機にどう対処するかという展望が全く開けなくなったからだ。

今回、米欧とアラブ諸国が共同提出した決議案は、アサド政権に対して人権侵害や暴力の即時停止などを求めている。全体として、1月に決定されたアラブ連盟の行程表に沿うものだが、アサド大統領への声高な退陣要求は避け、将来の軍事行動につながるような文言も排除するなど、かなり穏やかな内容になった。

それでも露中が反対したのは、リビアの先例があるからだろう。安保理は欧米などの限定的な軍事行動を認め、結局カダフィ政権崩壊に道を開いたじゃないか、という不信感が露中にはある。特にロシアにすれば、既に倒れたフセイン政権のイラクやカダフィ政権のリビアに加え、シリアとイランは昔からの友好国だ。武器売却のお得意様でもある。

イランは不透明な核開発によって安保理の制裁下にあり、核関連施設をイスラエルが爆撃する可能性も取りざたされている。シリアも含めて、なぜ親露陣営ばかり追い詰めるのか--。ロシアは安保理にそんな警戒感を持っているようだ。

だが、大国が協力しなければ世界の問題は解決しない。安保理5常任理事国(米英仏露中)に与えられた特権(拒否権)の行使は、あくまで慎重であるべきだ。内戦の瀬戸際にあるシリア情勢を考えれば、軽々に拒否権は使えないはずである。

こと中東情勢について大国はもっと責任感を持つべきではないか。米国も例外ではない。ライス国連大使は中露の拒否権行使に「うんざり」と語ったが、米国の研究者によれば、米国は72年から06年までに、同盟国イスラエルを批判する40余りの安保理決議案を拒否権で葬っている。

また、イスラエル軍のガザ攻撃(08~09年)で、当時の米ブッシュ政権はイスラエルの「自衛権」を強調して仲介を渋り、結局1300人以上のパレスチナ人が死亡する事態になった。シリアとは状況が違うにせよ、それも不条理な現実であり、アラブ世界の人々は米国の対応に「うんざり」と言いたくもなるだろう。

大国が同盟国を擁護するだけでは問題は解決しない。同盟国を説得することも大切だ。今の中東の優先課題は、シリアの流血に歯止めをかけるとともに、イランをめぐる軍事的緊張を緩和することだ。二つの問題はつながっている。重ねて大国の賢明な協調を求めたい。

読売新聞 2012年02月06日

シリア情勢 流血停止に重いロシアの責任

流血の事態が深刻化しているのに、一致した非難の声をあげることもできない。国連安全保障理事会の機能不全があらわになった。

シリアのアサド政権が反体制派を弾圧している問題を巡り、弾圧の即時中止を求めた安保理決議案が、否決された。13の理事国が賛成したが、拒否権を持つ常任理事国のロシアと中国が反対した。

アサド政権を非難する安保理決議案に、両国が拒否権を行使したのは昨年10月に次ぎ2回目だ。

弾圧中止へ、安保理が強い圧力をかけることができない状況では、シリア情勢がさらに悪化するのは避けられまい。

決議案に反対した露中両国は、非難されて当然である。

軍から離反した兵士らが反体制勢力に加勢する動きも顕在化し、シリアは事実上の内戦状態に入ったとの見方もある。昨年3月以来の死者は、国連によると5000人を超えている。

国際社会は、引き続き事態の打開に努力する必要がある。

シリア安定化への一つの具体策として、今回の安保理決議案は、アラブ連盟が1月に発表した「行程表」への支持をうたっていた。アサド大統領が権限を副大統領に移譲し、挙国一致内閣を構成するのがその柱である。

アサド大統領は、「バース党」一党支配と秘密警察で国民を抑圧する強権政治を続けてきた。前任大統領だった父親の時代から通算すれば、アサド父子による独裁は40年を超える。

反政府デモに押され、大統領は一党独裁放棄や憲法改正などの改革に応じる意向は示した。だが、具体化は進まず、一方では、軍まで投入して弾圧を続けている。

大統領の統治は、正統性に大きな疑問符がつく。退陣なしに国民和解は進まないのではないか。

米英仏などは、今回の決議案を巡り、アサド大統領の退陣の必要性を明示せず、シリアへの軍事介入を否定する文言も挿入した。

しかし、アサド政権を支えてきた露中両国は、決議採択に否定的な姿勢を崩さなかった。とくにロシアは、反体制派に肩入れする決議案だとして強く拒んだ。

背景には、ソ連時代から築いたシリアとの密接な関係がある。シリアは、武器の主要輸出先であり、ロシア軍にとって、地中海沿岸の重要な補給拠点だからだ。

ラブロフ露外相は7日、シリアを訪れ、アサド大統領と会談する。流血停止に向けて、強く説得すべき重い責任がロシアにはある。

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