スマートフォン(多機能携帯電話=スマホ)が急拡大するなか、携帯最大手のNTTドコモで通信障害が相次いでいる。
この半年余りで重大な障害が5回起きた。昨年末には差出人のメールアドレスが送り先に届いた時に他人のものと入れ替わり、「通信の秘密」が漏れる事態も招いている。総務省が行政指導に踏み切った。
障害の原因は、通信の交通整理をするパケット交換機や情報の蓄積・処理を担うコンピューターの能力不足という。
従来の携帯電話でインターネットが使える「iモード」用とスマホ用のシステムが併存して複雑化しているドコモ特有の問題も指摘される。
「国内市場は飽和した」といわれた携帯業界にとって、スマホは新たな成長の源泉だ。
ただ、パソコン並みの機能を持ち、恒常的にやりとりされる通信量はこれまでの携帯より格段に多い。負荷の爆発的な増加はある程度予想されていた。
投資家が電話会社の業績をはかる指標に、利用者1人当たりの収益がある。スマホは従来の携帯に比べこの数値が高く、売れば売るほど株価への貢献も期待できる。商売優先でインフラ整備を怠るのでは困る。設備増強は不可欠だ。
しかし、それだけでは、いたちごっこになりかねない。
ドコモの通信量の急増は、搭載しているグーグルの基本ソフト「アンドロイド」にも起因する。「アプリ」と呼ばれる応用ソフトの開発を誰でも自由にできる半面、個々のアプリの通信量を管理する方法がない。
同じスマホでも、アップルやマイクロソフトはアプリの審査が厳格だ。
グーグルは世界中のソフト会社が自由に使える開放性を武器に、アップルやマイクロソフトに対抗している。アプリの多様性は魅力だが、通信インフラの能力という制約がある以上、全体の負荷を減らす仕組みを考えなければいけない。
携帯データ通信が世界で最も活発な日本で、この問題が他に先駆けて露呈したともいえる。
ドコモはグーグルと協議し、ソフト会社にも協力を求めるという。個々のソフトの通信量を抑える工夫はもちろんだが、ユーザーの自己管理を促すことも重要だ。
自分の通信量を把握して無駄なソフトは削除するよう促す機能をスマホに内蔵するとか、定額制料金を見直して従量制の要素を強めるといった手立てを考えるべきだ。利用者ももっとスマートになる必要がある。
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