ドコモ通信障害 スマホ激増に手立てを

朝日新聞 2012年02月01日

ドコモ通信障害 スマホ激増に手立てを

スマートフォン(多機能携帯電話=スマホ)が急拡大するなか、携帯最大手のNTTドコモで通信障害が相次いでいる。

この半年余りで重大な障害が5回起きた。昨年末には差出人のメールアドレスが送り先に届いた時に他人のものと入れ替わり、「通信の秘密」が漏れる事態も招いている。総務省が行政指導に踏み切った。

障害の原因は、通信の交通整理をするパケット交換機や情報の蓄積・処理を担うコンピューターの能力不足という。

従来の携帯電話でインターネットが使える「iモード」用とスマホ用のシステムが併存して複雑化しているドコモ特有の問題も指摘される。

「国内市場は飽和した」といわれた携帯業界にとって、スマホは新たな成長の源泉だ。

ただ、パソコン並みの機能を持ち、恒常的にやりとりされる通信量はこれまでの携帯より格段に多い。負荷の爆発的な増加はある程度予想されていた。

投資家が電話会社の業績をはかる指標に、利用者1人当たりの収益がある。スマホは従来の携帯に比べこの数値が高く、売れば売るほど株価への貢献も期待できる。商売優先でインフラ整備を怠るのでは困る。設備増強は不可欠だ。

しかし、それだけでは、いたちごっこになりかねない。

ドコモの通信量の急増は、搭載しているグーグルの基本ソフト「アンドロイド」にも起因する。「アプリ」と呼ばれる応用ソフトの開発を誰でも自由にできる半面、個々のアプリの通信量を管理する方法がない。

同じスマホでも、アップルやマイクロソフトはアプリの審査が厳格だ。

グーグルは世界中のソフト会社が自由に使える開放性を武器に、アップルやマイクロソフトに対抗している。アプリの多様性は魅力だが、通信インフラの能力という制約がある以上、全体の負荷を減らす仕組みを考えなければいけない。

携帯データ通信が世界で最も活発な日本で、この問題が他に先駆けて露呈したともいえる。

ドコモはグーグルと協議し、ソフト会社にも協力を求めるという。個々のソフトの通信量を抑える工夫はもちろんだが、ユーザーの自己管理を促すことも重要だ。

自分の通信量を把握して無駄なソフトは削除するよう促す機能をスマホに内蔵するとか、定額制料金を見直して従量制の要素を強めるといった手立てを考えるべきだ。利用者ももっとスマートになる必要がある。

読売新聞 2012年02月02日

ドコモ通信障害 スマホ対応の設備増強を急げ

「つながりやすさ」が売り物だったNTTドコモの携帯電話で、大規模な通信トラブルが多発している。再発防止に全力を挙げるべきだ。

1月25日、東京都心で約5時間、通話やメール送受信、インターネット接続ができなくなり、252万人に影響が出た。

差出人のメールアドレスが他人のものと置き換わる考えられない不具合も昨年末に起きた。大規模な障害は約半年で5件に上る。

携帯電話会社の使命は、利用者に安定した通信環境を提供することにある。国内シェア5割で業界首位のドコモは、事態を重く受け止めねばならない。

急増するスマートフォン(高機能携帯電話)への対応の遅れが障害の原因のようだ。

ドコモは独自規格のiモード向けと、スマートフォン向けのシステムが混在する。ライバル社に出遅れたスマートフォン戦略を急激に進めたため、設備増強が後手に回っているとも指摘された。その不安が的中したと言えよう。

スマートフォンはパソコン並みの機能を持ち、やり取りされる通信量は通常の携帯電話の10~20倍にもなる。携帯各社は通信回線がパンクしないよう、携帯電話とは別の回線に振り向けるなどの対策に取り組んでいる。

ところが、ドコモの障害で明らかになったのは、スマートフォンに取り込んだ「アプリ」と呼ばれる応用ソフトが隠れた信号を繰り返し発信し、設備の対応能力を超えていることだった。

多彩なアプリをネット上から入手し、ゲーム、音楽、映画などを楽しめることは、スマートフォンの魅力である。

ドコモが採用している米グーグルの基本ソフト「アンドロイド」は、第三者が自由に開発したアプリを自在に利用できる。それが世界中に普及する理由だろう。

問題は、利用者がどんなアプリを取り込んでいるか分からず、管理しにくい点にある。

ドコモが通信量の増大を監視、予測する体制を構築するには、グーグルやアプリを開発するソフト会社などに協力を求めることも必要になるだろう。

携帯各社は、通話収入が落ち込む中で、巨額のデータ通信収入が見込めるスマートフォンを新たな収益源と位置づけ、激しい販売競争を繰り広げている。

だが、顧客囲い込みや利益を優先し、通信量増大への対策で失態を繰り返せば、利用者に見放される。肝に銘ずるべきである。

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