違法ではないが、誤解を招きかねない行為だったのは否定できない。
防衛省が、12日投票の沖縄県宜野湾市長選への投票を職員に呼びかけた真部朗沖縄防衛局長について、処分を検討している。
真部局長は1月下旬、宜野湾市内に本人か親族が住む職員66人に講話を行った。米軍普天間飛行場の移設問題に関する政府の立場や立候補予定者の考え方を説明する一方、「公務員は政治的中立性が要求される」と注意を促した。
真部局長は参考人として招致された衆院予算委員会でも、特定の候補を推薦してはいけないなどとする防衛省の服務規律の通達を踏まえた講話だったと強調した。
宜野湾市長選は保革一騎打ちが予想され、その結果は普天間問題にも影響すると見られていた。
真部局長とすれば、公務員の地位を利用した選挙運動を禁じる公職選挙法に抵触しない範囲で、普天間問題の前進の一助となれば、と考えて講話をしたのだろう。
防衛省は、特定候補を支持する発言はなく、違法行為はなかったとしている。その判断は、基本的に妥当と言えよう。
真部局長は一昨年の名護市議選などでも同様の講話を行った。
今回は、一川、田中の2代の防衛相の失言・迷言に加え、前任局長の不適切発言や環境影響評価書提出時の混乱で、沖縄防衛局への地元の視線が険しくなっていたことが、問題を大きくした。
田中防衛相は当初、3日に真部局長を処分・更迭する考えだったが、予算委などで局長の擁護論が出たため、決定を先送りした。
田中氏が「局長に説明責任を果たさせる」と語ったのは、判断先送りで混乱を招いた自らの責任を回避するもので、不見識だ。
前局長に続き、官僚に責任を押しつける安易な対応を重ねれば、政策課題に真剣に取り組んでいる官僚の士気をくじき、防衛行政自体を弱体化させかねない。
野田政権を追及する自民、公明両党の対応にも、疑問がある。
そもそも普天間飛行場の辺野古移設を決めたのは自公政権だ。
野党として、政府の問題点を批判するのは当然だが、結果として辺野古移設の実現を困難にすれば日米関係を不安定化させ、国益を損ねる。党利党略でなく、より大局的な対応が求められる。
普天間問題は今、正念場にある。辺野古移設が頓挫すれば、普天間飛行場は固定化が避けられない。野田政権は態勢を立て直し、移設実現に全力を挙げるべきだ。
この記事へのコメントはありません。