50年後の日本の総人口は今より3割以上減少する。しかも高齢者が全体の4割を占める――。そんな未来像が、改めて突きつけられた。
急速に進む人口減で社会の活力が損なわれることのないよう、政策を総動員する必要があろう。
厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が、2060年までの人口推計を公表した。5年に1度、国勢調査の結果をもとに算出している。
現在約1億2800万人の人口は、毎年20万~100万人の規模で減り続け、半世紀後は8674万人にまで減少するという。
年齢別では、14歳以下の若者が全体の9・1%に減る一方、65歳以上の高齢者の比率は39・9%に上昇する。世界でも突出した少子高齢化の構図が鮮明になる。
今回の推計で、女性が生涯に産む子どもの数に近い「合計特殊出生率」の予測は、わずかながら上方修正された。
現在30代後半の女性が、これまでためらっていた出産に意欲的になり、実際の出生率がやや上向いているためだ。
出生率は今後いったん下がるものの、その後上昇し、60年に1・35になる。それでも人口維持に必要な水準2・07には程遠い。
人口減の流れにできるだけ歯止めをかけるには、安心して子どもを産み、育てることができるよう、政策で支えることが大事だ。
政府は、社会保障と税の一体改革の中に「子ども・子育て新システム」の整備を掲げている。
待機児童の解消など子育て支援策に、新たに年間1兆円超を投じる構想だが、うち7000億円は消費税率の引き上げによって財源を確保するのが前提だ。少子化対策としても、一体改革の実現を急がなくてはならない。
働き手の減少も深刻な問題である。15~64歳の生産年齢人口は半世紀後には4418万人と、現在のほぼ半分になってしまう。
労働力人口を確保するには、女性が就業しやすい社会環境を整えることが第一だ。それは子育て支援と表裏一体の施策である。
若者の雇用を損なわぬようにしつつ、意欲ある高齢者には長く働いてもらうことも重要だ。
経済連携協定(EPA)などのルールに基づき、優秀な外国人を積極的に受け入れることも、不可欠である。
活力を維持する施策を重層的に組み合わせながら、これからの超少子高齢社会に踏み込んでいくしかあるまい。
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