貿易赤字 輸出拡大の戦略を強化せよ

毎日新聞 2012年01月27日

貿易赤字 だから何をすべきか

貿易黒字といえば日本。30年以上続いたこの関係が昨年、ついに崩れた。11年の貿易統計で、輸出額から輸入額を引いた貿易収支が31年ぶりに赤字(輸入超過)となったのだ。

東日本大震災やタイの洪水など特殊な事情が大きく影響したため、それほど心配はいらないとの声がある。だが、日本経済の将来を考える上で十分気にしておくべきこともある。それを見落とし、単に「輸出テコ入れ」を叫んでみても、事態の本質的な改善にはならないだろう。

そもそも、「貿易収支の赤字=問題」ではない。黒字であれ赤字であれ、行き過ぎがいけないのである。注意を払うべきは、産業や企業の新陳代謝が活発に行われ、国民がより豊かになるような雇用が創出され続けるかどうか、という点だ。輸出産業である必要はない。

貿易赤字を心配しなければいけない理由は別のところにある。日本と外国との資金のやりとりをより総合的にとらえた統計に経常収支がある。貿易収支に所得収支などを加えたもので、黒字なら、国内の支出が国内の貯蓄でまかなわれること、つまりトータルで海外から借金をせずに済むことを意味する。

貿易収支が赤字でも、所得収支が大幅な黒字なら、経常収支の黒字維持は可能だ。実際、「輸出立国」の印象とは裏腹に、05年から所得収支の黒字が貿易黒字を上回っている。

ただ、人口の高齢化を考えた時、所得収支の黒字が貿易赤字を帳消しにするほど伸び続けるか定かでない。所得収支は、日本の金融機関や企業が海外から受け取る利子や配当金から日本が海外に支払う分を差し引いたものだ。高齢化により、国内で貯蓄の取り崩しが続けば、金融機関を通じた海外への投資も減り、所得収支の黒字も減る恐れがある。

国家としては、経常赤字も想定しておかねばならないということだ。

経常黒字のうちは、国債を大量発行しても、日本人のお金で買い支えられるからギリシャのようにはならない、との主張を聞く。買い手が日本人なら安全だ、との仮定は正しくない。だが、すでに主要国一の借金を抱える国が経常赤字となり、リスクにより敏感な海外マネーに頼ることになると、ふとしたことで国債が売られ、長期金利が急騰する可能性が高まるだろう。赤字の兆しだけで国債市場が混乱することもあり得る。

体質改善を急ぐ必要がある。新たな借金を減らす具体的な行動を起こさねばならない。税と社会保障の一体改革は、その最初の一歩となる。

いつまでも「日本はギリシャやイタリアとは違う」と唱え続けることはできない。貿易赤字はそうした警告だと受け止めるべきだ。

読売新聞 2012年01月26日

貿易赤字 輸出拡大の戦略を強化せよ

「輸出大国」の看板が揺らいでいる。日本が経済成長を続けるため、国際競争力を強化し、巻き返さねばならない。

2011年は輸入額が輸出額を上回り、貿易収支は2・5兆円の赤字となった。年間での貿易赤字は、第2次石油ショックの余波を受けた1980年以来、31年ぶりだ。

東日本大震災に伴う自動車などの減産と、歴史的な円高によって輸出が減少した。

一方で、原子力発電所の事故を受けて国内の原発が相次いで停止し、火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)などの輸入が急増したことが響いた。

昨年の貿易赤字は、特殊要因によるところが大きいといえる。

とはいえ、海外経済の悪化による輸出低迷が続いて、貿易赤字が長引く懸念は拭えない。

日本は貿易赤字となっても、10兆円を超える海外からの利子・配当収入で経常収支の黒字を確保している。国内の潤沢な資金が、国債の9割以上を支える。

だが、貿易赤字が長期化し、経常赤字に転落すると、こうした構図が崩れ、財政危機が一段と深刻化する恐れがある。

少子高齢化と人口減少で、内需の縮小も見込まれる。政府は危機感を強め、外需獲得に重点を置いた成長戦略を練り直すべきだ。

輸出競争力の回復が喫緊の課題となる。政府・日銀は、円高の是正を急がなければならない。

自動車や電機などは、韓国や中国をはじめ新興国が台頭し、価格競争で苦戦を強いられている。日立製作所が薄型テレビの国内生産打ち切りを決めるなど、海外移転が加速してきた。

国内では開発や高機能製品など付加価値の高い分野を重点化せざるを得ないだろう。政府は先端分野での投資減税など、政策によるテコ入れを検討すべきだ。新幹線や原発などのインフラ輸出も、引き続き官民で推進したい。

円高メリットを生かして優良な外国企業を買収し、海外からの収入を増加させる手もある。

外需の獲得戦略を進めるには、自由貿易の枠組みに加わることが欠かせない。野田政権は、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加実現に全力を挙げるべきだ。

中東情勢は不透明感を増し、LNGなどの資源高が続きそうだ。火力発電用の燃料輸入が減らないと、今年も引き続き貿易赤字となる恐れが強いという。安全を確認できた原発の再稼働を、着実に進める必要がある。

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