再選に向けて、共和党との対決姿勢を際立たせた演説だった。
オバマ米大統領は、一般教書演説で、持続的な成長と中間所得層への支援を最優先課題にあげた。
国内製造業の復活や、天然ガスなど国産エネルギーの開発、米労働者の技術向上と雇用創出などで経済の再生を目指すとし、再選へ強い意気込みを見せた。
米国経済は持ち直してきたとはいえ、景気の先行き不透明感は強い。住宅価格は低迷し、失業率は8・5%に高止まりしている。
大統領の支持率が40%台前半にとどまっているのも、所得格差が広がっているのが原因だ。
「チェンジ(変化)」を約束しながら、景気回復の果実を与えられない現状では、大統領再選に黄信号がともる。
雇用対策などの景気刺激策を打ち出そうにも、議会の支持なしには実行できない。その議会では、共和党と民主党の対立が激化し、政策遂行に不可欠な法案が通りにくくなっている。
大統領が、一般教書演説で、政策の実現を阻むものには「行動で戦う」と宣言したのは、多数派として下院を支配する共和党への強いいらだちがあるからだろう。
大統領にとっての今後の重要な課題の一つは、税制改革だ。
一般教書で、大統領は社会保障費の歳出削減に努める一方で、中間所得層よりも低い税率で納税している富裕層については、増税しなければならない、と訴えた。
共和党の有力大統領候補の一人で、資産家のロムニー前マサチューセッツ州知事が、課税率がわずか14%だったと批判を浴びたことも意識したに違いない。
投資による所得への税率が、勤労所得よりも優遇されているためだが、大統領には、富裕層への増税にも一貫して反対する共和党を標的にする狙いがある。
共和党の候補選びが進み、これから大統領選も本格化する。米国経済の行方は日本経済にも大きく影響する。大統領選での、経済再生を巡る論戦を注視したい。
外交・安全保障分野で、大統領は、アジアを重視する国防戦略を改めて示した。
財政赤字削減の一環で、米国は国防費を10年間で約5000億ドル(約38兆円)削減する。だが、年内に1兆ドル超の財政赤字削減の具体策が議会で合意できなければ、さらに大なたがふるわれる。
それは、日本の安全保障に重大な影響を及ぼす。財政赤字削減の論議の行方も注目したい。
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