組織形態の見直しは最初の一歩にすぎない。増税への国民の理解を広げるには、政府の財政支出の実質的な削減につなげることが重要だ。
政府の行政刷新会議が独立行政法人や特別会計の改革案を決定した。通常国会に関連法案を提出し、実現を図る。
102ある独法のうち、平和祈念事業特別基金など7法人は廃止し、国立病院機構など7法人は民営化する。理化学研究所など35法人は12法人に統合する。全体の法人数は4割近く減る予定だ。
政府原案の廃止・民間移管は計5法人だった。社会保障と税の一体改革の環境整備として行革の姿勢を示そうと、政治主導で削減数を増やした。数に限れば、自公政権時より踏み込んだと言える。
ただし、廃止には、国に移管される独法が含まれる。民営化も看板の掛け替えが多い。「数合わせ」を優先した感は否めない。
全く別の業務を担当する独法を統合し、トップの数を減らしても、各法人の体制を温存すれば、組織が逆に肥大化する恐れもある。
最大の問題は、年間3兆円を超す独法への政府支出の削減額が示されていないことだ。
組織改革に合わせて、職員のリストラや、不要不急の事業の廃止・縮減に本格的に取り組む必要がある。自治体や民間に任せられる事業は積極的に移管し、二重行政などを廃することが大切だ。
歳出削減のカギは大物法人だ。都市再生機構と住宅金融支援機構については、外部有識者の検討会を設置し、今夏に結論を出す。きちんと成果を上げてほしい。
一方で、存続する独法は、金融業務、人材育成、研究開発型など機能別に分類したうえ、それぞれ最適な監督体制を導入する。
様々な目的・事業を持つ独法を同一の制度で運営するのは無理があるためで、狙いは理解できる。継続的な改革が求められる。
特別会計は、社会資本整備事業特会などの統廃合によって、17から11に削減する。
特会の数を減らすだけでは、歳出削減や効率化に直結しない。旧道路整備特会が、採算性を無視して、必要性の低い高速道路を造り続けたような“聖域”をなくし、優先度の高い他の分野に予算を振り替えてこそ、効果を生む。
会計検査院によると、2009年度の剰余金計1・8兆円が翌年度も使われず、11年度に繰り越されたことが判明している。
可能なものは一般会計に繰り入れるなど、有効活用すべきだ。
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