センター試験混乱 徹底検証で再発防止を

朝日新聞 2012年01月17日

センター試験 複雑さ、もう限界だ

大学入試センター試験で大きなトラブルがおきた。

2冊配るべき問題冊子を、1冊しか配らない。そういった試験監督者の不手際が、全体の8%にあたる58会場であり、約4500人が迷惑をこうむった。

混乱したのは、地理歴史と公民の試験だ。今回からこんな仕組みに変わった。

2科目受ける受験生は、たとえば地理と日本史のように地歴から2科目選んでもよいし、地歴と公民から1科目ずつ選んでもよい。その2科目をまとめてひとつの時間帯で試験する。解く順番は自由だが、先に解いた科目の得点だけを使う大学もある。だから問題を2冊同時に渡す必要がある受験生がいる。

1回聞いただけでは、のみこめない複雑さだ。それが混乱を招いた。周知期間も半年では短すぎた。

なぜ、こういう仕組みになったのか。今の学生は地理や歴史の素養が足りない。たとえば世界史と日本史を両方学ぶ子が増えるよう、科目選択の幅を広げてほしい。そんな大学側の要請にこたえたのだ。

背景にあるのは、大学全入時代をむかえて、大学や受験生が多様化したことだ。

1990年に148大学の参加で始まったセンター試験は、今や835大学・短大と5倍以上にふくれあがった。大学進学率も5割を超えた。

どの科目を勉強してきた、どの程度の学力がある学生をとりたいか。大学によって要請はまちまちだ。そのすべてに一つの試験でこたえようとすれば、おのずと仕組みは複雑になる。

今回の失策だけなら、2冊に分かれた問題冊子を1冊にまとめれば再発は防げる。でも、それだけでいいだろうか。

制度の変更にトラブルはつきものだ。英語のリスニングが始まった6年前も、機器の不具合が相次いだ。当面はこれ以上仕組みをいじらず、定着を図るべきだ。

試験監督でさえ間違えるのだから、ころころルールが変わったのでは、受験生はおちおち勉強に打ち込めない。

そのうえで、もっとシンプルな制度への改革を、10年単位で議論してはどうか。

センター試験を複数回に増やす案も、かつて大学審議会などで出た。一回だけの機会に比べて、受験生の重圧を減らせる。運営側の失敗で不公平が生まれたときに取り返しをしやすくするためにも、もう一度真剣に検討したい。

もちろん、変えるときは十分な予習時間をとろう。

毎日新聞 2012年01月17日

センター試験混乱 徹底検証で再発防止を

時間なのに受けようとした科目の問題が配られない。試験会場でこんな体験をしたら、悪夢を見ているような動揺も起きよう。

今年の大学入試センター試験は「地理歴史」「公民」の科目選択試験でそんなミスが相次ぎ、4500人以上の受験生に影響が出た。センター試験史上最悪の失態である。

若者の将来に影響しかねない試験だ。文部科学省とセンターは、なぜこんなミスが起きたか、過程と原因を詳細に検証し、公開して再発を食い止めなければならない。

大きな混乱は初日の14日、地理歴史と公民の2教科計10科目から受験生が2科目選択できる試験をめぐって発生した。今年からこの試験の仕組みが変わっている。

これまでは地歴で1科目、公民で1科目の選択だった。例えば、地歴の科目である世界史と日本史の二つを選んで受けられなかった。

これを改め、もっと幅広い選択ができるようにとやり方を新たにしたのだが、問題冊子配布のミスが相次いだ。2冊必要なのに1冊しか配られなかったり、配布に手間取ったりして時間が大幅に遅れるなどした。

また、2科目選択者について前半に解答を提出した「第1解答科目」の成績を採用する大学が多い。なのに、試験会場でその問題配布が後になったため、やむなく第1解答科目を別科目にしたケースも出た。

各会場で試験後の受験生の申し出で本来の「第1」に是正変更する救済をしたというが、まだ全容が確認されたとはいえない。

一律を基本にした共通1次試験を改め、1990年に始まったセンター試験は、多様な科目選択ができるようにして私立大学も多く参加し、今は50万人以上が出願するマンモス試験になった。今回の新制度はセンター試験の理念にかなっているが、このような混乱を起こしては、むしろ不安を広げ、制度の公平性、安定性への不信が生じることになる。

厳しい世情や不透明な将来の見通しの中で、受験生は真剣な進路選びをし、試験にかけている。昨年京都大などで起きた携帯電話悪用の不正で、今回、センターは不正防止の注意書を用意したが、一方でこのようなミスをしたのでは話にならない。

センターはミスとその結果の全容を早急に把握して、不公平な状況を強いられた受験生の救済にぬかりがないよう徹底してほしい。

マンモス試験化の中で気が緩み、試験実施や監督者に事前に細かな手順を徹底することなどが、十分に行われていなかった側面はないか。

あってはならないミスが起きたという厳しい認識に立って、再発防止に万全を期そう。

読売新聞 2012年01月18日

センター試験 混乱の原因検証し再発防止を

受験生の将来がかかる試験だ。あってはならない不祥事である。

大学入試センター試験の「地理歴史」「公民」で、問題冊子の配布が大幅に遅れるなどのトラブルが続出した。影響を受けた受験生は、判明しているだけで全国58会場の約4500人に及ぶ。

試験会場側のミスとしては過去最大の規模だ。文部科学省と大学入試センターは、経緯と原因を徹底的に調査し、再発防止を図らなければならない。

混乱を招いた要因は、試験方法を変更したことだ。

昨年まで社会科系の試験は、地理歴史と公民の時間を分け、2科目を受験する場合には両方からそれぞれ1科目を選び、各60分で解答していた。

それが今年から時間を分けず、地理歴史と公民の全10科目から二つを選び、計120分で解答するよう変更された。

問題冊子は、地理歴史と公民の計2冊を試験開始の時点で配ることになっていた。ところが、会場の監督者が変更点を十分理解しておらず、どちらか一方の問題冊子しか配らずに試験を始めてしまうケースが相次いだ。

解答する順番は受験生が決める。希望通りの科目から先に解くことができなかった受験生は、さぞ動揺したに違いない。

会場では、配布の遅れをカバーするため、試験時間を延長するなどの救済措置がとられた。しかし、不利益を被った受験生もいただろう。公平性に疑問符を付けざるを得ない結果となった。

試験方法の変更は、科目の選択肢を広げるのが目的だったが、そのために監督者側が前回より複雑な作業を求められたのは間違いない。だとすれば、一層入念な準備が必要だったはずである。

大学入試センターは、昨年6月に試験方法の詳細を発表し、変更点を記したマニュアルを、試験会場を管理・運営する大学側に配布していた。

だが、結果的に説明と注意喚起が不十分だった。次回以降、周知を徹底すべきだ。

大学入試センターは、政府が進める独立行政法人改革の中で、他の大学関連機関との統合なども検討されている。こんな不手際が続くようなら、その存在意義が問われても当然だ。

被災地の宮城県の会場では、大学側のミスで英語のリスニング用機器が届かず、試験開始が2時間遅れた。これも緊張感の欠如の表れだ。猛省してもらいたい。

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