イランの核保有阻止に向け、米欧が原油輸入禁止による経済制裁で足並みをそろえつつある。
日本が米欧に同調するのは、圧力をかける上でやむを得ない。だが、原油不足や価格高騰などの混乱は最小限にとどめなければならない。
野田首相は、来日したガイトナー米財務長官と会談し、「イランの核問題に深刻な懸念を共有している」と語った。安住財務相は、長官に日本のイラン原油の輸入を「早い段階で計画的に減らす」方針を伝えた。
米国が検討している制裁は、原油輸入のためイラン中央銀行と金融取引する外国の金融機関に対し、米国での金融事業を制限する内容だ。早ければ、今年半ばにも発動される見通しだ。
外国銀行がイラン中銀との取引を控えることで、イランの原油収入を減少させ、核開発の原資を断つことが米国の狙いである。
欧州連合(EU)も、イラン原油の禁輸方針で一致した。
ただ、日本は輸入原油全体の1割をイランに依存する。輸入をどう削減するのか対応は難しい。
中東を歴訪した玄葉外相は、サウジアラビアやアラブ首長国連邦に日本への原油の安定供給を要請し、前向きな回答を得た。官民が連携して、代替原油の確保に万全を尽くす必要がある。
懸念されるのは、原油高騰だ。イラン情勢の緊迫化に伴い、ニューヨーク市場などではすでに、原油価格が1バレル=100ドル超に値上がりしている。
今後、一段と急騰すれば、電力料金などが値上がりし、日本の景気に打撃を与える。イランの原油収入がかえって増え、制裁が裏目に出る可能性も否定できない。
問題は、イラン原油の最大輸入国である中国が制裁に反対していることだ。余剰となったイラン原油を抜け駆け的に購入しないよう、中国には自粛を求めたい。
そもそも、米国の制裁は、具体的な発動基準があいまいだ。野田首相が財務長官に対し、「運用によっては、日本や世界経済に深刻な影響を与えかねない」と改善を求めたのはもっともだ。
政府は引き続き、邦銀を金融取引制限の適用除外にするよう、働きかけていく必要がある。
一方、イランは、制裁が発動されれば原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡を封鎖すると示唆するなど、強く反発している。
日米欧は、制裁と対話を組み合わせ、不測の事態を避ける努力を続けなければならない。
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