成人の日 苦難の時こそ好機と考えよう

毎日新聞 2012年01月09日

成人の日 おおいに発言しよう

<新しき明日の来(きた)るを信ずといふ/自分の言葉に/嘘(うそ)はなけれど-->。近代日本を代表する歌人の一人、石川啄木の作品だ。今年4月で没後100年になる啄木は、貧しさや孤独に苦しみながらも、希望を捨てず、でも不安もかみしめていた。啄木を読み返すと、社会制度も国際環境も随分と違うのに、現代人の心情といくつも共通点が見つかる。

「成人の日」を迎えた全国122万人の若者たちに心から、おめでとうと言いたい。きっとさまざまな希望を抱いていることだろう。でも、不安が胸をよぎっている人も少なくないかもしれない。

新成人の人口(総務省の推計、1968年に調査開始)は95年から年々、減少を続け、ピークだった70年の半数を初めて下回った。彼らを取り巻く状況は厳しい。

今後、少ない現役人口で多くの高齢者を支えないといけない。若年層の失業率は他の世代に比べて高い。就職難は相変わらずだ。それなのに、政府の政策は高齢者向けに傾きがちだ。世界を眺めても、行き詰まり感は否定しがたい。

そんな中で、昨年は若者たちの動きが目立った。圧政を倒して「アラブの春」を呼んだのも、ニューヨークのウォール街など各地で格差への異議申し立てをしたのも、若い人たちが中心だった。

日本でも、昨年11月の大阪市長選が注目された。毎日新聞とMBS(毎日放送)が合同で実施した出口調査によると、20代、30代の7割が橋下徹氏を選んでいた。選挙結果の一因になったと思われる。

今年はエネルギー政策、税と社会保障の一体改革、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加問題など、難問に直面する年だ。ここで、新成人も含めた若者たちに大いに発言してほしい。自分の言葉でどんどん意見を言ってほしい。

再び、啄木を引用しよう。26歳で死去する2年前に評論「時代閉塞(へいそく)の現状」を執筆している。大逆事件(天皇暗殺計画をたてたとして多数の社会主義者が処刑された事件)後の圧政の中、格差や就職難を見つめながら、何とか豊かな未来を構想しようと呼びかけた。

こんな一節がある。<明日の考察! これ実に我々が今日において為(な)すべき唯一である、そうしてまたすべてである>。理想は「善」や「美」に対する空想ではないと記し、「今日」を研究して「明日」の必要を発見すべきだとも主張している。

理想を求める明治の思いは、閉塞感の漂う現代を生きるうえでも有効だろう。地に足の着いた議論で、民主主義に参加しよう。発言を重ねて、「明日」をつくっていこう。

読売新聞 2012年01月08日

成人の日 苦難の時こそ好機と考えよう

〈大人になったことを自覚し、自ら生き抜こうとする青年を祝い、励ます日〉。祝日法は、あすの「成人の日」の趣旨をそう(うた)っている。

東日本大震災からの復興を誓いつつ明けた今年、大人として歩み出す約120万人の新成人へ、大きなエールを送りたい。

新成人を迎える経済状況は厳しい。リーマン・ショックによる景気低迷をいったん克服したのに、大震災が発生した。さらに歴史的円高で、輸出関連をはじめ企業の業績にも明るい材料がない。

高校などを卒業して社会人となっている人の中には、非正規雇用のまま安定した仕事に就いていないケースも多い。大学生の就職は超氷河期の出口が見えない。

学生ならば、しっかりと将来を見据えて勉学に励み、社会人ならば、よりやりがいと責任のある仕事を志向しないと、自分を生かせる職場は得られない状況だ。

大変な時に大人の仲間入りをするわけだが、後ろ向きに考えるだけでは展望も開けまい。

読売新聞の新年企画「日本あれから 幸せの座標」が、大震災以後、「働く意義」を問い直す動きを紹介している。

働く幸せ、とは何か。日本生産性本部が今年度の新入社員に仕事に対する考えを聞いた質問に、96%の人が「社会や人から感謝される仕事をしたい」と答えた。

社会に役立つ仕事を望む傾向は震災でより強まった、と大学関係者は指摘している。

被災地へ救援に駆けつけた自衛官、消防隊員や医療関係者、交通網の復旧にあたる作業員や駅員、物資を運ぶ運転手、必需品を絶やさずに売り続ける店員――それぞれに職責を全うする人たちの姿が数限りなくあったからだろう。

企業の規模や知名度ではなく、「社会や人から感謝される」ことを基準にすれば、素晴らしい職業に出会う機会は必ずある。多少の回り道をしても、多くの経験を積み、可能性に挑戦するべきだ。

冒険家の三浦雄一郎さんも年頭の本紙で語っている。「苦難の時代にこそ、新しい価値観を探し、何かを変えようとする力が湧くもの。今こそチャンスと考える若者にどんどん出てきてほしい」

“復興元年”の新成人には、幅広く職業観を培い、人生を切り(ひら)いていってもらいたい。

企業にも、新卒・既卒の区別なく年間を通じて採用するなど、柔軟な姿勢が必要だ。新成人を仲間に迎える以上、若者の意欲をきちんと見いだす責任があろう。

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