オバマ米大統領が、国防予算の削減に伴う新国防戦略を発表した。
地上戦力の全体的な規模は縮小する一方、米国が重視するアジア太平洋地域では、今後、部隊展開を強化する方針を打ち出した。その通り実行されるのかを注視したい。
オバマ大統領は、「米軍はスリムになっても、あらゆる有事や脅威に機敏で柔軟に対応できる軍事的優位性は維持する」と述べ、今後一層の効率化やハイテク化を進めていく考えを表明した。
米国の深刻な財政事情を考えれれば、妥当な戦略である。
昨年夏、米議会が債務上限引き上げとセットで法制化した財政赤字削減策の一環で、国防予算を今後10年間に5000億ドル(約38兆円)近く減らさねばならない。
予算の制約の中で、様々な脅威に対応するため、優先順位を決めて、それに応じた部隊縮小や装備を選択するのは当然だ。
新戦略は、冷戦後の米国防政策の基本となってきた「二正面戦略」を基本的に見直し、同時発生した二つの地域紛争に勝つための大量の戦力維持を前提とせず、大規模紛争への対処は1か所に集中する方向性を改めて示した。
新戦略が重点を置くのは、テロや非正規戦、大量破壊兵器拡散など、新たな脅威への対処だ。
注目されるのは、中国とイランを名指しして、弾道ミサイルや巡航ミサイル、サイバー攻撃など、米軍の前方展開を阻止する「接近拒否」能力を向上させるだろう、と強い警戒を表明したことだ。
米国は、その対抗策として、空と海の兵力の一体運用を通して長距離攻撃を行う「統合海空戦闘」(ジョイント・エア・シー・バトル)構想を、今後、具体化していくものと見られる。
米国の新国防戦略は、同盟国がより大きな役割を果たすことを期待している。日本も、この新戦略を前向きに受け止め、「動的防衛力」の強化など今後の防衛政策に反映させていく必要がある。
日本の防衛予算は来年度で10年連続の減少となり、自衛隊の訓練や装備の修繕などに歪みを生んでいる。厳しい安全保障環境を踏まえれば、予算削減に歯止めをかけ、反転させることが急務だ。
自衛隊と米軍の防衛協力を拡充することも重要である。
昨年10月のパネッタ米国防長官の来日時には、日米共同の警戒監視活動や共同訓練、基地の共同使用を拡大することで合意した。日米同盟の抑止力を維持・強化するため着実に実施に移したい。
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