◆自公は「消費税」から逃げるな◆
社会保障と税の一体改革を、何としても成し遂げたい――野田首相の意気込みがうかがえる。
野田改造内閣が発足した。24日から始まる通常国会には、内閣の命運がかかっている。首相の言う「最善かつ最強の布陣」の真価が問われよう。
新体制で最も目を引くのは、首相が、民主党代表や外相などを歴任した岡田克也前幹事長を副総理として内閣に迎え、一体改革と行政改革を担当させたことだ。
岡田氏は、消費税率引き上げが持論で、民主党内の増税反対派が求める行革の旗振り役でもあった。幹事長時代に自民、公明両党と協議を重ねた実績もある。
国対委員長交代は妥当
首相が、岡田氏の起用について「ぶれないで、逃げないで結論を出せる」と期待感を表明したのは理解できる。問題は、この難局でどう結果を出すかである。
小沢一郎元代表を党員資格停止処分にした時の幹事長だっただけに、党内に反発も根強いが、首相も岡田氏も「大義」を前にして、党内のあつれきを恐れてはならない。
衆参ねじれ国会で一体改革を実現するには、内閣だけでなく、与野党協議の第一線が果たす役割も大きい。
首相が、平野博文国会対策委員長を城島光力幹事長代理に代えたのは妥当だ。平野氏は、野党から信頼を得られず、国対委員長として「適材」とは言えなかった。
城島氏は野党にパイプがあり、協議の経験も積んでいる。首相官邸との意思疎通を密にしつつ、自民、公明両党との協力関係を構築することが求められる。
実態は追い込まれ人事
新内閣のもう一つのポイントは、参院で問責決議が可決された一川防衛相と山岡消費者相を事実上、更迭したことだ。
政権発足後わずか4か月、実態は、野党に追い込まれての改造にほかならない。
法的拘束力のない問責決議による閣僚交代が慣例化するのは望ましくない。だが、一体改革をはじめ多くの懸案で野党に協力を求める以上、やむを得まい。
首相は防衛相に田中直紀参院議員を充てた。田中氏は外交防衛委員長などを経験しているが、野党から「また素人で大丈夫か」と疑問の声が上がったように沖縄、安全保障政策の手腕は未知数だ。
米軍普天間飛行場の移設問題など山積する防衛省の課題に立ち向かう内閣の「本気度」も疑われる。一川氏と同じ小沢グループからの起用だが、今は「党内融和」を重んじる局面ではなかろう。
山岡氏の後任には、松原仁国土交通副大臣を起用し、拉致問題担当を兼務させた。
北朝鮮は指導者交代で体制が不安定だ。拉致問題に取り組んできた松原氏は、玄葉外相と連携し、膠着状態を打開する糸口を見いだしてもらいたい。
法相の交代は当然だろう。平岡秀夫氏は、米軍岩国基地への空母艦載機移駐に「反対」と述べ、野党から「閣内不一致」と批判を浴びた。死刑を執行しなかったことにも、被害者遺族から「責任放棄」との声が上がっていた。
一方、自民、公明両党は、野田改造内閣の「一体改革シフト」にどう向き合うのか。対決姿勢を取るばかりでは無責任に過ぎよう。
日本は震災復興、原発事故への対応をはじめ、様々な危機に直面している。毎年、巨額の国債を発行し、将来世代にツケを先送りするような現状を一刻も早く改善しなければならない。消費税率引き上げによる財政再建は急務だ。
自民党の谷垣総裁は、「消費税率10%」は自民党の公約で、その実現は「国家国民にとって焦眉の急」だとの認識も示している。
与野党で政治を動かせ
それなのに、民主党が政権公約(マニフェスト)で消費税率引き上げを約束していなかったことを理由に、「ウソの片棒を担ぐことになる」と協議を拒んでいる。
結局、国政より党利党略を優先しているだけではないのか。
自民党内には、与党と協議すべきだという主張も少なくない。
公明党の山口代表は、民主党が主張してきた年金改革との整合性を含め、社会保障の将来像を明らかにすることを要求している。
政府・与党は、これに応じて、早急に見解を示すべきだ。それを機に、与野党協議を開始し、自公両党も対案を出して、論議を深めればよい。
自公両党は批判だけでなく、長年政権を担った政党として責任を果たさねばならない。それが、政権復帰への近道にもなろう。
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