金正日総書記死去で先行き不透明感が増す北朝鮮に対し、日中が緊密に連携できるかどうか。それも「戦略的互恵関係」の試金石となろう。
野田首相が初めて訪中し、北京で胡錦濤国家主席、温家宝首相とそれぞれ会談した。
北朝鮮問題に関し、野田首相と中国首脳は「朝鮮半島の平和と安定は両国の共通の利益だ」との考えで一致した。両国が緊密に意思疎通を図り、「冷静で適切な対応」を取ることも確認した。
中国は経済支援を通じて北朝鮮の内実を知り、大きな影響力も持っている。6か国協議を再開し、北朝鮮に核廃棄を促すには、中国の役割が欠かせない。
日中が北朝鮮への基本方針で足並みをそろえた意義は小さくない。日本は今後も米韓両国と協力し、中国に自らの役割を果たさせる外交を展開する必要がある。
日本人拉致問題について、野田首相は「日朝関係進展には拉致問題での前進が不可欠だ、と北朝鮮の新指導部に伝えてほしい」と述べた。北朝鮮内の不測の事態に備え、拉致被害者らの安全確保のための支援も求めた。
胡主席は「日朝双方の対話と協議を通じた問題解決を希望する」と述べるにとどまったが、日本は中国の協力を粘り強く要請しなければならない。
北朝鮮を巡って連携する上で、日中関係の安定は欠かせない。会談では紛争の火種を抱える東シナ海を「平和、協力、友好の海」にする方針を改めて確認した。
具体化するため、紛争防止に向けた「海洋協議」の枠組みを新設することを決めた。
海難事故の際、両国間の連絡体制などを定める「海上捜索・救助協定」でも原則合意した。
中国は、漁業監視船などによる日本領海侵犯といった挑発行為をやめ、違法操業を重ねる中国漁船を規制してもらいたい。
一方、昨秋の尖閣諸島沖の漁船衝突事件後中断している、東シナ海のガス田協議の日程は決まらなかった。胡主席は「交渉再開に向けて意思疎通を図りたい」と語った。交渉再開さえ避け続けるならば「協力の海」の名が泣こう。
今回の会談で、日本は中国国債の購入を表明した。両国の経済関係が一層広がったことになる。日中間の貿易による相互依存の深まりを考えれば妥当だろう。
来年9月、日中国交正常化40周年を迎える。それまでには、双方が「互恵」を実感できる具体的な成果を上げたい。
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