八ッ場ダム 混乱と無策の果ての建設続行

毎日新聞 2011年12月24日

八ッ場ダム建設 政権交代の旗はどこへ

八ッ場(やんば)ダム(群馬県)の本体工事経費が来年度予算案に計上されることになった。政権交代によって凍結された本体工事は、建設再開に向けて動き出す。

公共事業に組み込まれた利権の構図を解体するというのは、国民が民主党に期待したことだった。その象徴が八ッ場ダムだったはずだ。政権交代を訴えて掲げた旗を民主党は降ろすことにならないか。

人口の減少に伴い水需要は増えない。水害対策の面でもダム以外の選択肢もあるのではないか。そうした問題意識から、いったん始まると工事費が膨らんでいくダム建設に対し民主党は見直すことを公約した。

そして政権交代が実現し、国土交通相に就任した前原誠司氏は、八ッ場ダムの本体工事の建設中止を表明した。

八ッ場ダムの建設には当初、住民の多くが反対だった。しかし、代替地転居を受け入れ、道路の付け替えなど周辺整備を行い、本体工事の事業執行を待つばかりとなっていた。そのため前原氏の中止発言に地元は猛反発した。

また、共同事業者である東京、埼玉、千葉などの都県知事も建設中止に反発した。中止となった際には負担金を返却するよう求めた。

長年にわたって八ッ場ダム建設に関わってきた人たちが突然の計画変更に反発するのは当然だろう。しかし、ムダな公共事業を抑制していくことも、財政が危機的状況にある日本にとって欠かせない課題だ。全国83のダム事業の検証はそうした事情もあって始まった。

八ッ場ダムの検証作業も、費用対効果の観点から客観的に実施されるべきだったが、事業を推進してきた関東地方整備局の結論は、代替案よりダム建設が最も安く治水効果が見込めるとの判断だった。国交省の有識者会議もこれを追認した。

はじめに結論ありきという、政権交代前の手続きが復活した形だ。民主党の政調会長に転じた前原氏は、この結論に強く反発したものの、押し切られる形で本体工事費の来年度予算案計上を容認した。

この過程で野田佳彦首相が指導力を発揮した様子はうかがえない。民主党が唱えた政治主導の姿がすっかり消えてしまった格好だ。

「コンクリートから人へ」。民主党が政権獲得に向けてマニフェストに掲げた大きなスローガンだったが、この調子だと他のダム工事も建設継続の流れが定着することになりかねない。

八ッ場ダムに限らず民主党の公約は総崩れ状態だ。もはや政権交代の正当性すら問われる事態に至っていることを民主党は自覚すべきだ。

読売新聞 2011年12月23日

八ッ場ダム 混乱と無策の果ての建設続行

建設中止か続行かを巡り、2年あまり迷走したあげくの決着である。

群馬県の八ッ場(やんば)ダムについて、前田国土交通相がようやく建設続行を決めた。これを受け、凍結していた本体工事の費用を2012年度予算案に盛り込むことになった。

治水や利水効果、事業費などの面で「建設は最良」とする国交省の検証結果を踏まえた決定だ。

極めて妥当な判断と言える。

約60年前に構想が持ち上がった八ッ場ダムは、利根川流域の洪水防止と関東圏の水源としての利用が目的で、総工費4600億円の国内最大級のダムである。

民主党は「コンクリートから人へ」を掲げ、09年衆院選の政権公約(マニフェスト)に八ッ場ダムの建設中止を盛り込んだ。

政権交代後、国交相に就任した民主党の前原政調会長が、マニフェストを理由に、地元との協議もなく強引に建設をストップしたのが迷走劇の発端だ。

地元住民や関係自治体の反発を受け、10年秋には当時の馬淵国交相が中止を事実上棚上げした。その後、国交省が建設の可否を判断する検証作業を続けていた。

民主党は代替案も示さず、歴代国交相は党内のマニフェスト至上主義に配慮し、結論を先送りしてきただけだ。これでは政治の怠慢以外の何物でもない。政府・民主党は、猛省すべきである。

特に前原氏の責任は重い。

建設中止の副作用が大きいことは明白だったのに、建設が妥当と結論付けた検証結果を最後まで受け入れようとしなかった。

前原氏が「無理やり予算に入れるなら、党としては認めない。閣議決定させない」とまで述べたのは、行き過ぎだ。政権党の政策責任者の発言とは思えない。これ以上の混乱は避けるべきだ。

地元は苦渋の決断でダム建設を受け入れ、水没予定地から大勢の住民が転居した。ダム建設が宙に浮く間、温泉旅館の休業が相次ぐなど新たな打撃も受けた。

このうえ建設中止となれば、ダム観光で再生を図る計画も頓挫しかねないところだった。

道路の付け替えなど関連事業に総事業費の8割がすでに投じられている。中止の場合、半分以上を支出した流域の1都5県に対し、政府が費用を返還しなければならなくなる問題もあった。

マニフェストを作成する段階でこうした事情を十分考慮したとは言えまい。欠陥や誤算が判明すれば、柔軟に見直す必要がある。八ッ場ダムから学ぶべき教訓だ。

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