東電料金値上げ 政府は抜本的支援策の検討を

毎日新聞 2011年12月23日

東電料金値上げ 合理化努力が前提だ

東京電力が、企業向け電気料金を値上げすると発表した。家庭向けもできるだけ早い時期に値上げ申請するという。原発停止に伴う火力発電の燃料費増加を補うためだが、元々の原因は福島第1原発の事故だ。そのツケを回される企業や家庭の理解を得るには、徹底した合理化のために身を切る努力が不可欠だ。

自由化されている企業向けの料金値上げは、12年4月からで、値上げ幅は2割程度になりそうだという。

家庭向けは政府の認可が必要になる。そこで、経済産業省の「電気料金制度・運用の見直しに係る有識者会議」が、来年2月にも原価の算定基準などの見直し方針を示すのを待って、申請時期や上げ幅を決める。

燃料費だけでみれば、火力発電のコストが原発を上回るため、その負担増が東電の経営を圧迫しているのは間違いない。原発を代替する火力の燃料費の増加により、東電は今年度連結で約6000億円の最終赤字に陥る見通しだ。

東電の財務内容を調べた政府の経営・財務調査委員会も、原発の再稼働と料金値上げのどちらもできない場合は、12年度に債務超過に陥ると指摘している。原発再稼働のめどが立たない中では、電気料金の値上げはやむを得ないと東電はいう。

しかし、元々国際的に割高とされる電気料金の値上げは、円高や世界経済減速などに苦しむ国内企業にとって、重い負担になる。所得が伸び悩んでいる家計にとっても大きな痛手だ。

当然、値上げ幅を最大限圧縮する努力が求められる。東電は今月まとめた行動計画で、今後10年間の経費削減額を2兆6488億円とし、11月に経産相の認定を受けた緊急特別事業計画から1033億円上積みした。資材調達の見直しや人件費削減の強化などが柱だが、資産売却など一段の合理化努力を示さなければ、国民の理解は得られないだろう。

家庭向けの料金は、必要な原価に適正な報酬を上乗せする「総括原価方式」で算出されている。東電はこの原価の中に、従業員用の保養所の経費など世間の常識から外れる経費も組み込んでいた。

適正な原価の計上は、料金値上げを容認するための大前提だ。算定基準などの見直しを進めている経産省の有識者会議には、国民の納得が得られるよう厳格な検討を求めたい。

原発停止に伴う燃料費増加に悩まされているのは、東電に限らない。原発を抱える他の8電力会社も程度の差こそあれ、同様の状況だ。電気料金の値上げは、国内経済への影響も大きいだけに、安易な値上げが行われないよう政府は各社に合理化努力を要請すべきだ。

読売新聞 2011年12月23日

東電料金値上げ 政府は抜本的支援策の検討を

東京電力が、2012年4月から、工場やオフィスなど大口契約者向けの電気料金を値上げすることになった。

国の認可を要する家庭向けも、来春以降のできるだけ早い時期に値上げ申請を行う方針という。

東電は、福島第一原子力発電所の事故後、原発の代わりに動かす火力発電所の燃料費がかさみ、11年度は6000億円近い赤字決算に転落する見込みである。このままでは、12年度中に債務超過に陥りかねない。

東電の西沢俊夫社長は22日の記者会見で、「遠からず経営が成り立たなくなる」として、値上げに理解を求めた。

東電としては、事故収束と損害賠償、電力安定供給の責務を果たすため、やむを得ず値上げに踏み切るのだろう。

大口料金を2割上げると、東電の収支は約5000億円改善するという。だが、その分は産業界に負担が回り、円高などに苦しむ企業が大きな打撃を受ける。

東電は経営効率化をさらに徹底し、値上げ幅をできる限り圧縮する努力が必要だ。

電気料金は、天然ガスなど燃料の価格変動を反映させる「燃料費調整制度」でたびたび上下する。しかし、契約内容を変える本格値上げは、約30年ぶりとなる。

定期検査で止めた原発を再稼働しないと、高コスト構造が続く。今後、東電以外の電力会社が値上げする可能性も否定できない。

政府は原発再稼働のため、責任を持って安全性を確認し、地元自治体の理解を得るべきだ。

福島原発の廃炉費用は今のところ1兆円強と見込まれる。原子炉の重大な損傷からみて、いずれ上積みは避けられないだろう。被災地域の除染も、東電の負担は巨額にのぼると見られる。

こうした費用は、損害賠償のように原子力損害賠償支援機構に立て替えてもらえない。資金繰りがつかなくなり、東電が破綻に追い込まれる懸念は拭えない。

そこで政府は、支援機構を通じて東電に公的資金を注入し、実質国有化する方向で調整している。ひとまず東電の経営を安定させる効果は期待できるだろう。

国有化すれば、国の責任は一段と重くなる。原子力災害の負担を最終的にすべて東電に押しつける現行の支援策に無理がある。

原子力政策を推進した国が、廃炉と除染、事故収束などについても、きちんと責任を果たす仕組みを検討するべきだ。

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