臨時国会26日召集 重要法案提出なお努力を

朝日新聞 2009年10月26日

国会論戦へ 「首相主導」が問われる

臨時国会が今日から始まる。鳩山新政権発足から1カ月余り。歯車が回り始めた「政治主導」をめぐって、本格論戦の火ぶたが切られる。

八ツ場ダムの建設中止、子ども手当の創設、補正予算の執行凍結……。目が回るような政策転換の連続だが、官僚主導から政治主導への転換を象徴したのは予算づくりの手法の激変だ。

官僚たちの姿は後景に退き、代わって閣僚、副大臣、政務官の、いわゆる政務三役が主役に躍り出た。省庁間でもめると、閣僚ら政治家たちが寄り集まっては打開策を探る。増額要求だけでなく、削減をも競うという予算編成は、積み上げ型の官僚主導の時代では考えられなかった光景だ。

ただ、政治主導のための体制が整ったかといえば、とてもそうとは言い難い。政権発足以来、各省庁の政務三役はフル回転で多忙を極めている。前政権の補正予算の執行凍結に始まり、来年度当初予算案の概算要求の作り直し、そして12月の予算案決定への詰めの作業が迫る。政府に入る政治家スタッフの数が足りないのは明らかだ。

なかでも、民主党が政治主導の司令塔役と位置づける国家戦略局が十分に機能を果たせないでいる。

菅直人副総理のもとでとりあえず「室」として発足したものの、発令された専従スタッフは2人だけで、先週ようやく担当の首相補佐官が置かれたばかりだ。

政務三役の増員や国家戦略局への昇格、そこへの調整権限の付与やスタッフの充実のためには国家行政組織法改正など大がかりな作業が必要になる。

当初、この臨時国会でそうした立法をすることも考えられたが、先送りされた。来年度予算案は新政権としての最初の試金石だ。選挙公約をどう形にするか、国民に明確なメッセージを送らねばならない。その作業に集中するためだろう、国会の会期を11月末までとし、提出法案も絞り込まれそうだ。

雇用や経済に対する国民の不安を考えても、年内に予算を編成することは最優先の課題といえる。

そうであればこそ、国家戦略室には、もっとてこ入れをすべきだろう。歳出総額や国債発行額といった来年度予算の骨格を示す司令塔なのに、主導的な役割を果たせないままでは設計図なき予算編成になりかねない。

政治主導の根幹は、なにより首相の指導力にある。支える体制がまだ十分とはいえないにしても、閣僚や与党に振り回され、内閣の基本方向が国民に見えにくい印象を与えるようではいけない。

米軍普天間飛行場の移設問題や日本郵政の社長人事を巡り、このところ、鳩山由紀夫首相の存在感が揺らいでいるかに見える。国会論戦では、鳩山氏の「首相主導」力が問われる。

毎日新聞 2009年10月29日

国会論戦 民主党の質問も必要だ

政権交代後、初の本格論戦となる各党代表質問が28日衆院本会議で始まった。総じていえば論点は出そろったものの、自民党の谷垣禎一総裁ら野党側の質問は迫力に欠け、鳩山由紀夫首相の答弁も質問を逆手に取ってかわす場面が多かった。議論が深まらなかったのは残念だ。

自民党から批判される筋合いはない--。この日、目立ったのはこんな首相の答弁だった。例えば来年度予算の概算要求が95兆円と膨れ、財政再建の道筋が見えないと谷垣氏に追及されると、首相は麻生前政権下では補正予算と合わせ105兆円になったと指摘して「あなた方に言われたくない」「こんな財政にしたのは誰なのか」と反論した。

米軍普天間飛行場の移設問題でも首相は「最後の意思決定は私が行う」と語ったものの、方向性は示さず、「今まで10年以上結論を出さなかったのはどの政権だったのか」と切り返すだけだった。

これまでの政権に大きな責任があるのは事実だ。だが、鳩山政権発足以来、既に40日以上。いつまでも前政権批判にとどまっているわけにはいかない。マニフェスト政策実現のための財源に関しても「一般会計と特別会計を含め予算を組み替え、財源は必ず確保する」と言い続けるだけでは、やはり限界がある。

このほか首相自身の「故人」献金問題も、「捜査に全面協力する」と答えるだけで歯切れは悪かった。

今後の質疑に期待するほかないが、国会のあり方についてもう一つ、見逃せない点がある。民主党は衆院代表質問で質問者を立てなかったのに加え、衆院予算委での質問も不要との声まで党内にあることだ。

確かに小沢一郎幹事長が言うように「政府の太鼓たたきのような与党質問」は要らない。「政府・与党の一元化」という原則も理解はできる。しかし、与党側も国会論戦を通じて問題点を洗い出し、よりよい法案に修正していくのは立法府たる国会の当然の使命だ。

法案を国会に提出する前に与党が可否を決めるという自民党政権で続いてきた事前審査方式を、民主党は廃止した。ならば、いっそう国会での審議が重要となるはずなのに、首相はこの日、政府に入っていない民主党議員も各省政策会議の場で意見を述べる機会はあると答弁した。これで済むとしたら、事前審査とさして変わらないのではないか。

民主党は衆参予算委の日数も極力少なくしたい意向という。国会より予算編成作業を優先させたいとの理由のようだ。しかし、この日、「大いに議論しよう」と呼びかけたのは首相本人だ。求められているのは「議論する国会」である。

産経新聞 2009年10月23日

臨時国会26日召集 重要法案提出なお努力を

新政権発足から1カ月余り、衆院選からは2カ月近くが経過したというのに、この間、鳩山由紀夫首相の所信表明演説が行われなかった。

臨時国会は26日召集されるが、鳩山首相は国民にもっと早く政策を説明する機会を持つべきだった。政権交代を容認した多くの国民も、具体的な政策遂行の面で疑問が拡大しているのではないか。首相や閣僚は、国会審議を通じて疑問を解消する責務を負っている。

その答えを引き出す自民党の役割は重い。これまで以上に活発な論戦を期待したい。

会期は11月30日までの36日間となる。提出を予定している法案は、日本郵政の株式売却凍結法案や中小企業向け融資の返済を猶予する貸し渋り・貸しはがし対策法案などだ。

一方、鳩山政権の司令塔となりうる国家戦略局を設置する法案などは提出されないという。戦略局の権限などが定まっていないことが理由のようだが、これでは政権がどのような将来像を持っているのかが分からない。

また、インド洋での海上自衛隊による補給支援は来年1月に期限切れを迎えるが、「単純延長」はしないとの理由で結局、延長法案は提出しない。きわめて遺憾だ。米国に対しては、補給支援に代えて新たなアフガン支援策を検討する考えを伝えたが、その具体策はまだみえない。

米軍普天間飛行場の県外移設の方針は難航し、米国排除につながる東アジア共同体構想は米側の不信感を招いている。懸念された外交・安全保障政策の危うさを実際に露呈しており、国益を損ないかねない状況といえる。破綻(はたん)しつつある外交方針を続行するのか、現実路線に立って修正するか。納得のいく説明が聞きたい。

国連安保理の対北朝鮮制裁決議を実施する貨物検査法案について、今国会で見送る方針を転換したのは歓迎だ。

脱官僚依存を掲げる新政権の下で、国会のあり方がどう変わるかも注目される。官僚答弁を法律で禁じることが、国会審議の活性化にどうつながるのだろうか。党首討論の充実などはすぐに進められるべきことだ。

民主党は政府・与党の政策決定一元化の観点から、衆院で与党としての代表質問を行わないとしている。国会改革にどう結びつくのか、十分な検討が必要だ。

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