次期戦闘機 疑問多い「開発途上」機

毎日新聞 2011年12月19日

次期戦闘機 疑問多い「開発途上」機

政府は、航空自衛隊が導入する次期主力戦闘機(FX)として、米英など9カ国が共同開発中のF35(米ロッキード・マーチン社)を内定した。現在、配備されているF4、F15、F2の3機種のうち老朽化しているF4の後継機となる。

将来的に約40機を配備する計画で、修理・整備費を含めると1兆円規模の高価な買い物である。

候補には他に米国製のFA18(米ボーイング社)と、英独など欧州4カ国が共同開発したユーロファイター(英BAEシステムズ社など)が挙がったが、F35だけが開発途上にある。防衛省が機体性能、維持管理を含む価格、国内企業の製造参加、納入後の支援態勢の4分野について点数制を初導入し審査していた。

F35の選定は、性能の高さを重視した結果なのだろう。3機種の中で唯一、敵のレーダーに探知されにくいステルス性に優れた「第5世代機」で、空自に待望論が強かった。

日本領空への接近を繰り返している中国やロシアは第5世代のステルス機を開発中だ。これに対抗し抑止力を高めるため、性能を審査の中心に置いたという。対米関係への配慮と、F35配備を計画する米空軍との連携を念頭にした「相互運用性」も重要な要素となったに違いない。

しかし、未完成のF35の採用には疑問もある。まず納入時期である。防衛省は16年度からの納入を計画しているが、F35は金属疲労試験で機体に亀裂が見つかるなどして開発が遅れ気味である。納入が17年度以降にずれ込む可能性が指摘されている。調達が間に合わなければ防空能力に「穴」が開くことになり、調達計画の変更を迫られる恐れもある。

F35はもともと他の2機種に比べて高価だが、開発が遅れればさらに価格が上昇することも予想される。オーストラリアなどは開発遅れを理由にFA18に変更する動きを見せており、他国の調達減少は価格を押し上げる要因ともなりかねない。

また、国内防衛産業の生産基盤・技術能力の維持、向上を図るためには、特許使用料を支払って国内企業が製造するライセンス生産がどこまで認められるかが重要となるが、米国が軍事機密保護を重視するF35の技術開示・製造参加の割合は、他の2機種に比べて極端に少ない。

日米共同開発機のF2は、三菱重工業による生産が9月に終了した。政府は、先端装備品の共同開発・生産を可能にするため武器輸出三原則の見直し作業を進めているが、戦闘機については、F35の選定によって国内企業の本格的な製造関与はしばらく途絶えることになる。

政府は、これらの疑問、懸念について納得のいく説明をすべきだ。

読売新聞 2011年12月21日

次期戦闘機F35 最新鋭機の着実な導入を図れ

日本の空をめぐる厳しい安全保障環境を踏まえれば、妥当な選択と言えるだろう。

政府は、航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)として米英などが共同開発中のF35を選定した。来年度予算に4機分(約400億円)を計上し、最終的に42機を配備する。

FXは、近く退役が始まる戦闘機F4の後継だ。F35以外に、米国のFA18、英独などのユーロファイターが候補となっていた。

F35は、レーダーに映りにくいステルス性を備えた唯一の「第5世代機」で、情報を伝達・共有する通信ネットワーク能力も高い。

中国は、急速に空軍の近代化を進め、2020年にステルス機を50機程度配備する可能性がある。ロシアも、極東空軍の活動を活発化させ、10年代後半にはステルス機の量産を始めるとされる。

近年、軍事技術の革新のペースは速い。10年程度で能力が陳腐化し、他国に対抗できなくなる恐れもある。費用が高くても、性能を重視するのは当然だろう。

米空軍もF35を大量配備する予定で、同じ機種の戦闘機を空自が使用することは、同盟国との相互運用性の観点でも好ましい。

一方で、F35には課題もある。現在は開発段階のため、機体に不具合が見つかるなど開発が遅れた場合、16年度の納期に間に合わなくなる可能性が否定できない。

防衛省は「米国防総省の開発担当者から間に合うとの確約を得ている」と説明するが、日本の防空に穴が開く事態は許されない。日米同盟の信頼性にもかかわる。

今後、米政府とも緊密に連絡を取り合い、計画通り納入できるように手を尽くす必要がある。

F35は、日本が共同開発に参加していないため、他の2機種と比べて、情報開示が限定的で、国内企業が生産に参画する余地が少ないという指摘もある。

それでも、FX選定基準の4項目の一つに「国内企業の参画」を入れたことで、米側が譲歩し、4割程度の参画が可能になった。国内の防衛技術・生産基盤を維持するうえで重要な成果だ。

国内の防衛産業が衰退すれば、機体の整備・修理の問題にとどまらず、中長期的に国防全体に大きな悪影響を与える。

政府は現在、武器輸出3原則の見直しを検討している。米国以外の国との共同開発・生産や平和目的の武器輸出を解禁するもので、既に民主党の了承も得ている。

野田首相は年内にも、3原則の緩和を最終決断すべきだ。

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