日韓首脳会談 慰安婦で安易な妥協は禁物だ

毎日新聞 2011年12月19日

慰安婦問題 原則曲げずに対応を

日韓の首脳が気軽に相互訪問して意見交換するのがシャトル外交の良さだが、今回は「肩ひじ張らずに」とはいかなかった。旧日本軍の従軍慰安婦問題に焦点があてられたためだ。日韓の「歴史のトゲ」がまだ抜けないことを物語るもので、未来志向の関係構築が口で言うほど簡単ではないことを実感する。

この問題が改めて浮上したのは韓国の憲法裁判所が8月、賠償請求権について韓国政府が十分な努力をしていないのは違憲との判断を下したことが背景にある。今月14日には元慰安婦の支援団体がソウルの日本大使館前に慰安婦をモチーフにした少女の像を建てるなど、世論の関心が高まった。李明博(イミョンバク)大統領が強い姿勢で会談に臨まざるを得ない事情があったことは理解できる。

だが、それを考慮に入れたとしても、首脳会談の大半をこの問題に費やしたとされる韓国側の対応は、日韓関係の大局からみてバランスを欠く。大使館前にこうした像を建てることは、これまで慰安婦問題に理解を示してきた日本の世論にも受け入れられるものではないだろう。撤去を求めた野田佳彦首相の対応は主権国家として当然である。

日韓の財産・請求権に関する問題は、65年の国交正常化に伴う協定で「完全かつ最終的に解決された」と明記されている。このため90年代に慰安婦への補償が外交問題になった時も、日本政府は国家賠償には応じなかった。その代わり官房長官談話で「当時の軍の関与」を認め、95年に「女性のためのアジア平和国民基金」を設立。国民各層からの寄付金を原資に韓国、台湾、フィリピンの元慰安婦に1人当たり200万円の「償い金」を渡すことなどを決め、首相の「おわびと反省の手紙」も届けることにした。基金は事業を終えて07年に解散している。

基金による償い金は、日韓双方の世論にも配慮し、さまざまな論議を経たうえでの政治決断だった。その経緯を踏まえれば、元慰安婦への賠償問題を日韓間で再び政治問題化することは適当ではない。

ただ、韓国では国家による賠償ではないという理由で多くの元慰安婦が償い金を受け取っていない。日韓間にこの問題の解決をめぐる認識の溝があることは事実だ。日本側にも道義的な責任はある。野田首相は「人道的な見地」で対応する考えを示したが、外交の原則を曲げない範囲で知恵を絞る工夫は大事だろう。

従軍慰安婦のような女性の人権問題に国際世論は厳しい。政府は過去の対応をきちんと世界に説明する努力を続けるべきだし、女性の名誉や尊厳に関わる問題には一層積極的に取り組む姿勢が必要だ。

読売新聞 2011年12月19日

日韓首脳会談 慰安婦で安易な妥協は禁物だ

いわゆる従軍慰安婦の問題で、日本が安易な妥協を図ることは、厳に慎む必要がある。

野田首相と韓国の李明博大統領が京都で会談した。大統領は慰安婦問題について、元慰安婦が生きている間に「優先的に解決すべきだ」と述べ、「首相の決断」を求めた。

首相は、賠償問題は法的に解決済みとする一方、「人道的な見地から知恵を絞ろう」と語った。

大統領が慰安婦問題を提起したのは、韓国政府に解決への努力を求める憲法裁判所の決定や韓国世論の硬化などの事情があろう。

だが、戦時中などの賠償請求権問題については、既に1965年の日韓国交正常化の際、「完全かつ最終的に解決された」との国際協定を締結している。

政府は、この立場を堅持すべきだ。歴史認識にもかかわる問題であり、仮に「人道的な見地」から中途半端な措置を取っても、韓国側を満足させることは困難で、問題を複雑化するだけだろう。

むしろ問題は、韓国の民間団体がソウルの日本大使館前に慰安婦を象徴する少女像を設置し、韓国政府が黙認していることだ。

野田首相は会談で、少女像の早期撤去を要請した。大統領は「日本の誠意ある措置がなければ、元慰安婦が亡くなるたびに、第2、第3の銅像が建てられるだろう」などと反論した。

この韓国側の主張はおかしい。外交関係に関するウィーン条約は、外交公館の「安寧の妨害または威厳の侵害を防止する適当な措置」を取る「特別の責務」が受け入れ国にある、と定めている。

日本政府は、少女像設置の黙認は条約違反とみている。首相の主張は当然だ。今後も、粘り強く撤去を促さねばならない。

会談で慰安婦問題が突出し、他の重要議題の議論が深まらなかった原因は、韓国側にある。ただ、慰安婦問題が、日韓関係を停滞させるのを避けることも重要だ。

中断している経済連携協定(EPA)交渉について野田首相は、早期再開へ議論を加速させることを提案したが、大統領から前向きな回答はなかった。

韓国は、対日赤字の拡大を警戒し、交渉再開に慎重だ。だが、日本が大胆な市場開放に踏み出せば互いに得るものは大きい。

北朝鮮の核と拉致の問題も、日韓の足並みが乱れれば、北朝鮮を利する展開になりかねない。

日韓双方が大局的見地から経済や安全保障問題で協力し、着実に前進させることが求められる。

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