グアム予算凍結 事態打開へ「普天間」の進展を

毎日新聞 2011年12月14日

普天間の評価書 「年内提出」見送りを

米上下両院が、12会計年度(11年10月~12年9月)の国防権限法案から、在沖縄海兵隊のグアム移転経費を全額削除することで合意した。

グアム移転は、日米両政府が目指す米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古への県内移設計画に連動している。米政府と議会による今後の折衝の可能性もあるが、議会側が事実上、辺野古への移設に「NO」を突きつけた意味は大きい。

日本政府は、辺野古への移設計画に基づく環境影響評価(アセスメント)の評価書を年内に沖縄県に提出する準備を進めており、野田佳彦首相も年内提出を明言している。

野田政権の「年内」方針は、グアム移転費削除の動きを強める議会対策を重視する米政府の意向を反映したものだった。しかし、米議会が辺野古への移設に厳しい判断を下した以上、年内提出の根拠が大きく揺らいだことになる。

沖縄の負担軽減の柱であるグアム移転に困難を抱えたまま、県内移設の手続きを進める姿勢は、沖縄の理解を得られるものではない。

そもそも、米側の動きを指摘するまでもなく、政府と沖縄の信頼関係が地に落ちた今、沖縄が反対する県内移設を前提にした評価書の早期提出を目指すことには無理がある。

評価書提出に絡む前沖縄防衛局長の「犯す」発言、その監督責任が問われる一川保夫防衛相の、普天間移設の発端となった少女暴行事件を「詳細には知らない」との国会答弁。これらの発言には、仲井真弘多沖縄県知事が強い不快感を示し、沖縄県議会もこれらの発言を批判して防衛相の責任を明確にするよう求める決議を全会一致で採択した。沖縄による事実上の不信任である。

怒りが渦巻く沖縄から見れば、女性への性的暴行と同列視された評価書提出を、事情を無視して強行するように映るのは間違いない。

また、一連の言動で閣僚としての資質が問われ、問責決議が可決された一川防衛相が、普天間移設に関する重要な手続きを進めることにも強い疑問を持たざるを得ない。

普天間問題は今後、正念場を迎える。県内移設を目指す政府と県外移設を求める沖縄との溝を埋めるのは容易でないが、普天間飛行場が固定化され、周辺住民の危険性が存続するような事態は避けなければならない。

この重要な時期に、沖縄の不信を増大させる行為は許されない。評価書の年内提出を見送るべきだ。

野田政権が取り組まなければならないのは、まず沖縄の信頼を取り戻すことである。グアム移転を軌道に乗せると同時に、評価書の提出を再考し、沖縄の同意を得て普天間移設を進める姿勢を示すことだ。

読売新聞 2011年12月14日

グアム予算凍結 事態打開へ「普天間」の進展を

目に見える沖縄の米軍基地負担軽減策の実現が危うくなってきた。極めて深刻な事態と受け止める必要があろう。

米上下両院の軍事委員会が、在沖縄海兵隊のグアム移転関連予算1億5600万ドル(約120億円)の全額凍結を含む2012会計年度の国防権限法案の修正で合意した。修正案は近く両院本会議で可決される。

グアム関連予算は、海兵隊員8000人と家族9000人の移転に伴い、司令部庁舎や家族住宅などを整備するためのものだ。従来、減額されたことはあったが、全額凍結は初めてだ。

米議会は、巨額の国防費削減に向け、海兵隊移転と「一体の計画」である普天間飛行場の移設が進まない以上、グアム関連予算は認めないとの姿勢を強めていた。

仮に13年度も予算がつかなければ、移転計画全体が白紙になりかねない。その場合、在日米軍再編の目玉である沖縄県南部の米軍6施設の返還も頓挫する。

沖縄県には、普天間飛行場の県内移設と切り離して、海兵隊移転だけを実現したいとの声が少なくない。だが、それは、もはや非現実的だと認識すべきだろう。

米政府は、日本政府が年内に普天間飛行場移設の環境影響評価書を沖縄県に提出することを「一定の進展」とみなし、米議会の説得を試みたが、失敗した。

13年度にグアム予算を復活計上させるには、米議会が納得するだけの普天間問題の「より実質的な進展」が必須となる。

日米両政府と沖縄県に残された選択肢は今、二つしかない。

一つは、普天間飛行場の名護市辺野古移設を進め、海兵隊のグアム移転を実現する道だ。米軍6施設が返還されれば、広大な跡地利用により、来年度からの新たな沖縄振興計画にも弾みがつこう。

もう一つは、普天間の辺野古移設も、海兵隊移転も断念する道だ。その場合、普天間飛行場の危険な現状が長期間、固定化されることも覚悟せざるを得ない。

政府と沖縄県は、この現実を直視し、日本の安全保障と沖縄の負担軽減をいかに両立させるかについて、率直かつ真剣に話し合うことが重要となる。

無論、普天間飛行場の「県外・国外移設」を唱え、沖縄に過剰な期待を持たせた末に裏切った経緯を踏まえれば、現在の事態を招いた責任は鳩山元首相らにある。

野田首相は就任後、まだ沖縄を訪問していない。そろそろ自ら事態打開に動く時である。

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