COP17 新枠組み作りを急ごう

朝日新聞 2011年12月13日

COP17 日本も削減努力怠るな

南アフリカのダーバンで開かれた気候変動枠組み条約締約国会議(COP17)で、京都議定書の延長と、温室効果ガス削減の新たな体制をつくることを盛り込んだ「ダーバン合意」が採択された。

来年で第1期が終わる京都議定書は、第2期を設ける。期間は5年か8年とし、来年のCOP18で決める。

新体制は、いま削減義務をもたない米国や中国を含め、「すべての国が入る法的な枠組み」とする。2015年までに採択し、20年以降の発効をめざす。京都議定書の第2期は、その移行期間に位置づけ、将来は統一することを想定している。

新たな体制下で削減をどう義務づけるかなど、規制の内容は今後の交渉に委ねられた。

ただ、会議前は「議定書第2期も、新たな枠組みも難しい」という悲観的な見方が強かったのを考えれば、大きな成果だ。世界の温暖化対策が水泡に帰すギリギリのところで、国際協調が成立したといえる。

一方で、日本はカナダ、ロシアとともに第2期への不参加を決めた。議定書で削減義務をもつ国の温室効果ガス排出量は世界の16%ほどに減り、この点では議定書の形骸化が進む。

日本政府は第2期への不参加について、「今の議定書は一部の国にしか削減義務がなく、不公平」と説明していた。

指摘は正しいが、議定書から逃げれば済むものではない。日本は今後、議定書を生み、そこから抜けた国として、温暖化対策が厳しく問われる。

日本は実効性ある枠組みづくりに力を注ぐべきだ。中国、米国、インドなどの排出大国にきちんと削減義務を課す仕組みを作っていかねばならない。

海岸浸食や異常気象による農業被害に悩む途上国への支援も積極的に進める。

なにより大事なのは、国内の対策だ。日本は議定書の「90年比6%削減」という義務にもとづき、受け身で国内のエネルギー計画を作ってきた。多くの自治体もそれにならってきた。停滞している国内対策が、削減義務がなくなることで一段とおろそかになる懸念がある。

政府が排出削減で期待していた原発に頼れなくなった今、自然エネルギーの拡大や環境税の導入など、新たなエネルギー政策を早く構築して実行に移す必要がある。

「京都」の名を冠した議定書を日本人の多くは誇りに思ってきた。生活に根付いた議定書の精神を生かし、排出削減の努力を続けなければならない。

毎日新聞 2011年12月11日

COP17 新枠組み作りを急ごう

来年末で期限が切れる京都議定書の先にどのような温暖化対策の枠組みを構築していくか。

南アフリカ・ダーバンでの「国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)」は、最後まで各国の主張がぶつかり、国際ルール作りの難しさと温暖化対策への機運の弱まりを見せつけた。

世界的な経済の悪化、主要国が選挙を来年に控えていることなど合意が困難な状況にあるのは確かだ。しかし、温暖化対策に猶予はない。

できるだけ早く次の国際的枠組みを構築し、温室効果ガスの地球規模の削減が進められるよう、各国が最大限の努力を尽くすべきだ。

焦点のひとつだった京都議定書の第2約束期間は今や形骸化している。議定書のもとでは先進国だけが削減義務を負う。世界最大の排出国となった中国や、議定書から離脱した米国は義務を負っていない。

さらに、日本、カナダ、ロシアは今回、第2約束期間に削減目標を盛り込むことを拒否した。削減義務の受け入れを表明したのは欧州連合(EU)などに限られた。

京都後の体制の弱体化は問題だが、地球規模の実質的削減を考えれば、すべての主要国が参加する新たな枠組み作りに力を注ぐ方がいいだろう。その際には、京都議定書が果たしてきた役割と弱点を検証し、次に生かしていくことが欠かせない。

ダーバンでは新枠組みの開始時期をめぐり議論が紛糾した。早めの開始を求める日本やEUに対し、米国や中国は20年以降の開始を求めた。

いずれにしても新枠組み開始の遅れは高いツケとなって私たちに返ってくる恐れがある。国連の専門機関の分析では産業革命前に比べて気温が2度以上上がると地球は干ばつなどの深刻な悪影響を被る。

削減の対応が後手に回れば回るほど事態は深刻になる。それぞれの国の思惑はあるにしても、地球の温暖化を防ぐという共通の目標にもう一度立ち返るべきだ。

新枠組みができるまでの間も手をこまねいているわけにはいかない。日本も第2約束期間による削減義務を拒否するだけでは無責任だ。新枠組みまでの移行期間にも、国内外の削減に最大限の力を尽くす必要がある。

日本の省エネ技術を途上国の温室効果ガス削減に結びつける仕組み作りは積極的に進めたい。その際には、削減の実効性をきちんと検証することが重要だ。

新しい国際ルール作りにおける発言力を高めるためには、国内での削減にも積極的に取り組む必要がある。来年から始まる再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度なども利用し、着実に進めたい。

読売新聞 2011年12月14日

京都議定書延長 自主削減はやむを得ない道だ

中国や米国も加わる新たな国際ルールを作ることになったのは一定の前進だ。だが、具体的な中身は不透明である。

南アフリカで開かれた国連の気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)は、かろうじて決裂を回避し、「ダーバン合意」を採択した。

温室効果ガスの排出量を削減するための京都議定書を当面、延長し、新ルールを2020年に発効させるという内容だ。

排出削減の具体的議論になると、各国の利害が激しくぶつかり合った。欧州金融危機の中で開かれたCOP17は、来年末に期限切れとなる京都議定書に代わる枠組み作りの難しさを改めて浮き彫りにしたと言えよう。

日本政府は、先進国のみに排出削減を義務付けた京都議定書の単純延長に一貫して反対した。

世界最大排出国の中国、3位のインドは削減義務を負っていない。2位の米国も議定書を離脱し、削減の対象外になった。その延長は公平性、実効性を欠く。日本の主張は理にかなっている。

だが、これまで通り削減義務を負いたくない新興国や途上国が延長を強く支持し、それに押し切られる結果となった。延長幅は、13年から17年までの5年間、あるいは20年までの8年間となる。

日本とともに京都議定書の延長に反対したカナダは12日、議定書からの脱退を表明した。

日本は議定書の枠内にとどまるが、延長期間中の削減義務を受け入れず、自主的な排出削減に取り組む。欠陥の多いルールにはもはや(くみ)しない意思表示と言える。国益上、やむを得ない選択だ。

ただし、引き続き、官民連携による省エネルギーの推進などに努める必要がある。

日本は、鳩山元首相が掲げた「20年までに1990年比25%削減」という削減目標も撤回すべきだ。現実的な数値を速やかに再検討しなければならない。

一方、今回、新ルールがまとまらなかったことで、米中印の3大排出国が何ら削減義務を負わない異常な状況が20年まで続くのは問題だ。世界全体の排出量の半分を占める3か国には、積極的な削減努力が求められよう。

COPは今後、新たな枠組みの内容について議論を進め、15年までの採択を目指す。

京都議定書の教訓を生かし、米中印、日本、欧州連合(EU)など、すべての主要排出国が応分の責任を負う公平なルールにすることが極めて重要だ。

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