「東アジア共同体」構想は、鳩山首相が言明した通り、特定の国を排除しない「開かれた地域協力」の原則を堅持していくことが大切だ。
タイで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)との一連の首脳会議で、首相は、日本の外交政策について日米同盟が基軸であることを強調した。
その上で、東アジア共同体構想について、「開かれた地域協力の原則に立って、協力を着実に進めたい」と表明した。
米国の関与を排除しない姿勢を明確にしたものといえよう。
首相は、今月10日の日中韓首脳会談の席上、「今まで米国に依存し過ぎていた」などと述べ、外交の軸足を米国からアジアに移すのではないかとの疑念を内外に生んでいた。
今回の首相の発言は、それを早期に打ち消すとともに、米国にくすぶる民主党政権へのいらだちを緩和する狙いがあるのだろう。今後も、日米基軸が基本であることを踏まえて発言してほしい。
ASEAN諸国にとって、米国は、欧州連合(EU)に次ぐ輸出相手先である。中国の軍事的台頭をにらんで、今後も米軍のプレゼンス(存在)の維持を望んでいる国は多い。
米国自身も、東アジアとの経済連携を進める枠組みとして、米国やカナダ、南米諸国が参加するアジア太平洋経済協力会議(APEC)を重視している。
米国の関与は、これまでの東アジアの地域協力と何ら矛盾するものではないだろう。
首相は首脳会議で、域内の経済連携を加速させるとともに、これまで取り組んできた金融、エネルギー、防災などの協力を強化する考えを表明した。
だが、経済連携では、日本はASEANとの経済連携協定(EPA)こそ発効済みだが、韓国、インド、オーストラリアとの交渉は停滞している。
韓国とは、日本が農林水産物の自由化に消極的であることに韓国が反発し、5年前に交渉が中断した。インドとは、後発医薬品に関する承認手続きの簡素化をめぐって対立している。
韓国やオーストラリア、シンガポールが積極的にEPAを推進する中、このままでは、日本だけが取り残されかねない状況だ。
東アジア共同体構想を推進したいと言うなら、鳩山首相は、まず東アジア各国とのEPA交渉を具体的に前進させることに力を注ぐべきである。
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