150万人賠償 まずは迅速に支払いを

朝日新聞 2011年12月09日

原発広域賠償 指針はあくまで最低線

福島第一原発の事故で、政府からの指示がなくても自主的に避難した人や、自宅にとどまった人への賠償をどうするか。

政府の原子力損害賠償紛争審査会が指針を決めた。

対象は、福島県内で警戒区域など政府が避難を指示した地域の周辺23市町村。約150万人に及び、実際に避難したかどうかにかかわらず支払う。被曝(ひばく)の影響が特に心配な子ども(18歳以下)と妊婦は1人40万円で、その他は8万円。子どもと妊婦は12月までの分とし、1月以降は改めて検討する。

対象地域や金額について、様々な意見がある。特に自主避難者から批判が強いのは、実際の費用や損害を積み上げるのではなく、定額方式とした点だ。

避難指示に基づく賠償の対象となる十数万人には、慰謝料として毎月10万円のほか、避難時の移動費用、仕事や商売ができなくなったことに伴う減収分などが支払われる。今回は東京電力への請求件数が膨大になることから、早く支払うためにも定額方式をとったという。

賠償額は本来、個々の事情や損害に応じて決めるべきだ。審査会も今回の指針は、対象者に少なくとも共通に生じた損害を示すものと位置づけ、「(指針以外にも)個別具体的な事情に応じて賠償の対象と認められうる」と指摘する。

枝野経済産業相も国会答弁で同様の認識を示し、「様々な実費については賠償の対象になる。東電ですみやかに支払うよう指示する」と語った。

自主避難した人、しなかった人が抱える損害は、政府指示による避難者以上にまちまちだ。「実費」をどこまで認めるか。

原子力損害賠償紛争解決センターの役割が重要になる。

東京都内と福島県郡山市に事務所を置き、被害者と東電が和解できるよう、弁護士から任命される委員が仲介する。

このほど、福島県外に自主避難した3世帯(うち2世帯が今回の対象地域)が、実費などに基づく賠償として計3300万円を東電が支払うよう、センターに仲介を申し立てた。

申し立ての希望者は多いはずだ。ただ、法律の知識に乏しいことで、ためらう人もいるだろう。弁護士会をはじめ、専門家は積極的に支援してほしい。

センターの和解案にも納得できず、裁判に踏み切る例も増えてくるとみられる。

様々な判断を積み重ね、その結果を紛争審査会の指針作りに役立てていく。過去に例のない事故に伴う賠償である。社会的合意を探る努力を続けたい。

毎日新聞 2011年12月08日

150万人賠償 まずは迅速に支払いを

福島県人口の4分の3に当たる約150万人が新たに賠償対象となった。福島第1原発事故による損害賠償の指針を検討している文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が、政府の避難指示区域以外の被災者について精神的損害などを認める算定基準を示した。額は子供と妊婦が40万円、それ以外の人が8万円だ。

審査会は8月に賠償の中間指針をまとめたが、避難指示区域外から県外などに自主的に避難した人たちの声を受けて引き続き賠償の範囲を検討していた。

放射線量が特に高い地域以外でも、大量の放射性物質放出による被ばくへの恐怖・不安を抱くことについて「一定の合理性がある」と認定した。また、避難せず今も住む人たちにも、恐怖や不安による損害があるとした。いずれも当然の判断だ。

ただし、自主避難した人たちの移転に伴う実費などを別途認めず、一律額の支給とした。

転居や二重生活など費用負担は個々の家族で異なる。実際に避難に伴い多額の出費を余儀なくされている人からは「見舞金程度にすぎない」と強い批判が出ている。実態に即し、もう一歩踏み込んだ指針を示せなかったのか疑問が残る。とはいえ、対象地域や金額も含め、一定の線引きをして賠償の範囲を明確にしなければ、手続きに手間取り支払いまでに時間がかかるのも確かだろう。

指針は最大公約数的なもので、「支払い上限」ではない。今後の手続きの中で、個別事情に対応した賠償が模索されるべきである。

その有力な手段が、審査会の下部組織として設置された紛争解決センターだ。東京と福島に事務所があり、弁護士の仲介委員ら約130人が、申立人と東京電力の双方から事情を聴き和解案を作成する。

9月から受け付けを始め、約300件の申し立てがあったが、まだほとんど和解に至っていない。東電としては、審査会の指針の範囲を超えて和解に応じた場合、それが先例となって賠償範囲が拡大することを懸念しているのかもしれない。

だが、紛争解決センターが機能しなければ訴訟で決着させる他なく、かかる時間とコストは増大する。既に自主避難で家族が離ればなれに生活している人から慰謝料支払いを求める申し立ても出ている。東電は被災者が実際に受けた被害を直視し、柔軟な姿勢で臨むべきだ。

一方、政府指示で避難した人たちからの賠償請求に対し、東電の支払いが1割程度にとどまっている。書類チェックに時間がかかっているためだが、人員を手当てして作業を急ぐべきだ。150万人への一律支給と併せ、迅速な対応が欠かせない。

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