オリンパス再建 暴走防ぐ企業統治に

朝日新聞 2011年12月08日

オリンパス事件 企業統治考える好機に

企業の経営にかかわる人たちは、ぜひこの報告書に目を通してもらいたい。ひるがえって、わが社はどうか、自分の振る舞いに省みるところはないかに、思いを致す。まさに生きた教材となるのではないか。

オリンパス損失隠し事件で、同社が調査を依頼した第三者委員会が報告書をまとめた。

巨額の損失をなぜ長期間隠し通せたのか。おかしいと声をあげる人はいなかったのか。

報告書はそうした疑問にかなりの部分までこたえ、再発防止策を提言した。外部の専門家に検証を頼む動きは広がりつつあるが、第三者機関とは名ばかりで中身の薄い報告書も散見される。会社の奥深くにまで切り込んだ内容を評価したい。

オリンパスも見た目には企業統治の立派な仕組みをもっていた。だが、日本企業全体の信用をゆるがす事態を招いた。

報告書は指摘する。

同社は経営トップが不正を行うことを想定しておらず、それを防ぐ意識も体制もなかった。取締役の多くは財務の知識がなく、担当業務以外には無関心で、経営全体に目を光らせるという本来の義務を認識していなかった。監査役も社長の指名で決まり、専門性と独立性に欠けていた。異論をはばかる空気があり、不正を知った社員が通報する窓口も、役員の意向で社内にしか設けられなかった――。

監査法人が財務処理のおかしさに気づいた09年3月期は、急きょ「外部委員会」を設けて会社の意に沿う報告書を作らせて追及をかわし、直後にその監査法人を解任した。当時の詳しい経過も報告されている。

「うちとは無縁の話だ」と言い切れる企業は、いったいどれだけあるだろうか。

示された再発防止策は、役員の意識改革や情報開示など、報告書が認めるように「あまりにも当たり前の事項」ばかりだ。その当たり前を行うことが実は容易でないことを、多くの企業不祥事が物語っている。

おりから政府の法制審議会では、信頼確保を目的に会社法の見直し作業が進む。取締役のうち最低1人は社外から起用することの義務づけや、監査役の機能強化が検討されている。

だが、いくら制度を整えても実際に会社を動かすのは人だ。その「人」を育て、「不正は必ず起きる」という問題意識を常にもって臨まなければ、本当の企業統治は成り立たない。

報告書は、その事実をあらためて私たちに突きつけた。事件を、すべての企業人が足元を見つめ直す契機にしたい。

毎日新聞 2011年12月08日

オリンパス再建 暴走防ぐ企業統治に

オリンパスは、巨額損失隠し問題を調査した第三者委員会の報告を受けて、再発防止策を発表した。

不正に関与したり、不正を防げなかった約70人の役員、監査法人の責任を追及する独立した調査委員会の設置や、代表取締役と同格の経営監視機関設置などが盛り込まれた。

高山修一社長は、臨時を含む次期株主総会で、自身を含む現経営陣が総退陣するという考えを明らかにした。いずれも第三者委の提言に沿った内容であり、再建のためには迅速かつ確実に実行すべきだ。

オリンパスは、上場廃止を回避するための期限である14日までに7~9月期決算を発表する予定だ。東証は有価証券報告書の虚偽記載の悪質性などを審査し、上場維持の是非を判断する。決算の粉飾を防止し、投資家を保護するという制度の目的にかなう適正な審査を求めたい。

今回の問題は、1000億円以上もの損失が長年にわたって隠され、不正な手段で処理されたという特異な事例だ。第三者委は原因のひとつとして「会社トップが長期間にわたってワンマン体制を敷き、異論を唱えれば外に出される覚悟が必要だった」と企業風土の問題点を指摘している。

しかし、こうした企業風土はオリンパスだけのものだろうか。第三者委の甲斐中辰夫委員長は、今回の問題について「どこでも起こり得る」と述べた。

一部経営者の暴走を防ぐために、会社法は取締役会による監視、監査役会による業務監査、会計士・監査法人による会計監査などのハードルを定めている。

オリンパスの場合、社外取締役まで選任され、企業統治の体制は強化されていたはずだった。しかし、経営陣の知人や取引先から選ばれていたため、チェック機能は働かなかった。経営陣からの独立性を担保するため、証券取引所が上場企業に対して、社外取締役や社外監査役に関する情報公開を徹底させるなどの対策が必要ではないか。

法相の諮問機関である法制審議会は、経営を監視する「監査・監督委員会設置会社制度」の創設や社外取締役の選任を義務付けることを盛り込んだ会社法改正の中間試案を公表した。経営コスト増を嫌う経済界は反発しているというが、大王製紙の経営トップによる特別背任事件もあり、日本企業のガバナンスに対する内外の目は厳しさを増している。実効性のある法改正を望みたい。

オリンパスの問題では、結果的に不正経理を見逃した監査法人の責任も指摘された。金融庁は徹底した調査で原因を究明し、監査法人に対する指導・監督を強化すべきだ。

読売新聞 2011年12月07日

オリンパス トップ主導の悪質な粉飾工作

長年にわたる巨額損失の隠蔽は、歴代の経営トップが主導し、一部の幹部により秘密裏に続けられていた――。

内視鏡で世界トップのオリンパスが設置した第三者委員会は、6日に公表した調査報告書の中でそう結論づけた。

「隠蔽に加担した者が出世する人事体制が維持されていたことは重大な欠陥」「取締役会や監査役会は形骸化し、チェック機能を果たしていなかった」。報告書は、会社の体質や内部管理体制も厳しく批判している。

第三者委は元裁判官・検察官、弁護士らで構成され、約1か月間、会社の役職員らからの200回近い事情聴取と、経理資料の分析を続けてきた。徹底した調査が行われたと言っていいだろう。

現経営陣は報告書の指摘を重く受け止めなければならない。

報告書によると、オリンパスはバブル崩壊などで約1000億円の損失を抱え込んだ。2000年からの時価会計の導入で、保有する金融資産の含み損の計上を迫られると、海外ファンドに損失を移す「飛ばし」を始めた。

さらに、国内外の企業の買収を利用して、法外な買収資金などをファンド側に流し、一気に損失の穴埋めを図っていた。

決算の透明性を高める会計基準の適用を免れようとした動機や、企業買収を隠れ(みの)にした手口は、極めて悪質だ。

過去3代の社長が不正工作の報告を受けていたことも判明した。トップが関与した長期的粉飾は市場や投資家を欺くもので、上場企業として許されぬ行為である。

東京証券取引所が6日、オリンパスが上場廃止基準に該当するかどうかの審査を始めると発表したが、当然だろう。

東京地検特捜部は、証券取引等監視委員会などと連携して捜査を本格化させる。日本市場への国際的信頼を回復するためにも、粉飾に関与した旧経営陣の責任を厳正に追及してもらいたい。

報告書は監査法人の責任にも言及している。

あずさ監査法人は09年に企業買収の不自然さを指摘しながら、最終的に「適正意見」を出した。後を継いだ新日本監査法人は交代の際に十分な引き継ぎを受けず、損失穴埋め工作を見過ごした。

両監査法人とも日本を代表する大手であり、日本の監査水準そのものに疑念を持たれかねない。

所管する金融庁も、問題点を徹底検証し、監査体制の改善指導を図る必要がある。

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