ロシア下院選 政権批判に耳を傾けよ

朝日新聞 2011年12月06日

ロシア下院選 強権12年への警鐘だ

ロシアの下院選でプーチン首相の与党「統一ロシア」が大幅に議席を減らした。

大統領、首相として12年近く国を率い、選挙で大勝してきたプーチン氏にとっては、初めての逆風といえる。

プーチン氏は来年3月の大統領選に立候補し、メドベージェフ大統領と入れ替わる形で返り咲きをめざしている。しかし、今回の選挙結果は長期支配に対する国民の受けとめ方が変わり始めていることを示している。

政権の影響下にある地方機関や既存メディアは今回も統一ロシアを強く後押しした。与党による大量の投開票操作を野党が指摘している。

それでも与党は退潮した。

政権が撲滅を口にしても、汚職や腐敗は深刻化する一方だ。石油や天然ガスの高騰で経済は成長した。だが景気の浮き沈みや資源価格の動向に大きく左右される経済基盤の脆弱(ぜいじゃく)さは変わらない。貧富の差も激しい。

一方で、政権が野党やメディアをきびしく締めつける強権体質は相変わらずだ。

選挙期間中、政権の統制が十分及ばないネット上では、統一ロシアを「ペテン師と泥棒の党」とさんざんにこきおろすサイトが人気を集めた。

エリツィン時代に失われた安定を取り戻し、国家の威信を取り戻した功績も、国民の不満や長期政権への飽きの前に、かすんでしまった印象だ。

ソ連崩壊から20年を経て、国民の意思表示の手段として選挙が機能したともいえる。

汚職や腐敗の排除に本気で取り組み、資源依存から脱して経済の現代化を進める。言論の自由や法の支配を保障する――。

政権がこうした方向に向かっていると実感できない限り、プーチン氏が大統領に復帰しても、国民の鬱屈(うっくつ)は解消しないだろう。

議席を伸ばした野党の共産党や公正ロシアは市場経済への警戒心が強い。外交でも、自由民主党を合わせた3野党は、「強いロシア」の復活をめざして自国の利益を強硬に主張する大国主義的な志向が濃厚である。

ロシアは世界貿易機関(WTO)への加盟が決まった。経済のグローバル化が一層進むなか、他国との協力で資本や技術を導入することが国の発展には欠かせない。核軍縮など安全保障上の課題でも、さらなる建設的な役割が求められる。

与党にとって議会運営は難しさを増す。だが国際協調を後退させれば、ロシアにとって大きな不利益となることを関係者は肝に銘じてほしい。

毎日新聞 2011年12月06日

ロシア下院選 政権批判に耳を傾けよ

4日に行われたロシア下院選で、プーチン首相とメドベージェフ大統領が率いる政権与党「統一ロシア」の大幅な退潮が明白になった。プーチン氏が大統領に就任した00年以来原油価格の高騰を背景に経済成長を達成し、08年からはメドベージェフ大統領との「双頭体制」で盤石を誇ってきた体制に、ロシア国民がついに反旗を翻し始めたといえる。

5日までの暫定開票結果を見る限り、統一ロシアの得票率が最終的に50%を割り込む可能性もある。ただ下院選は比例代表制で、得票率7%未満の政党は議席を獲得できないため、統一ロシアの議席数は過半数をわずかに上回る238前後となる見込みだ。

しかし、前回07年の選挙で下院の3分の2を超える315議席を獲得し、単独で憲法を改正できる事実上の翼賛体制を築いた当時の勢いはもはやない。党首であるプーチン首相の次期大統領選再出馬という奇策で求心力を高めようとしたが、逆に「権力のたらい回し」への反感を強める結果となった。かつてのように「すべての政党に反対」という選択肢があったならば、与党の得票率はさらに低いものになっただろう。

国民の政権離れの兆候に早くから危機感を抱いた政権は、国家機関や公的団体を通じて必死の集票作戦を行い、投票への圧力や不正工作も伝えられた。だが政権側はこの際、こうした古い手法をきっぱりと改め、国民の批判に謙虚に耳を傾けるべきだろう。かけ声だけで一向に改まらない官僚の汚職体質や社会的不公正の是正に真剣に取り組み、権力の維持に腐心しない透明な政権運営が求められる。日本はじめ国際社会も、真の大国にふさわしい民主的なロシアの実現を望んでいる。

危惧されるのは、次期大統領を目指すプーチン氏らが、国内の不満をそらすために対外強硬路線に打って出ることだ。

メドベージェフ大統領が先月、米国の欧州でのミサイル防衛(MD)整備への対抗措置として新型ミサイル配備の可能性に言及するなど、すでにその兆候はある。米国との共同MD構想が一向に進まないことへのいらだちも一因だが、内政引き締めのための道具に「外敵」を利用する冷戦時代のような手法は慎むべきだ。

ロシアと領土問題を抱える日本にとっても、ロシア政権の行方は大きな関心事だ。政権基盤が揺らぐ時、愛国主義を掲げて対外強硬路線を取るのはロシアの常道でもある。だが一方で、アジア太平洋地域はじめ世界経済への参入で国力浮揚を目指すなら、こうした手法は逆効果だ。「静かな環境での対話」を続けられるよう冷静な対応を望みたい。

読売新聞 2011年12月06日

ロシア下院選 陰りうかがえるプーチン支配

ロシアの実権を長年にわたり握り続けるプーチン首相に対し、不満が高まっていることを浮き彫りにした選挙結果だ。

ロシア下院選で、プーチン氏の率いる与党「統一ロシア」が、議席を大きく減らした。

定数450議席のうち、憲法改正に必要な3分の2の議席を占めていた「現状維持」の目標達成には及ばず、過半数を維持するにとどまった。

所得格差拡大を批判し、富の公正な分配を求めた最大野党の共産党が、選挙前の57議席から、30以上も議席を増やした。政権に対する不満の受け皿となった形だ。

来年の大統領選で当選が確実視されているプーチン氏も、その人気に陰りがうかがえる。

今回の下院選は、選挙制度改革で比例選だけになってから2度目の選挙で、強固な全国組織を持つ与党にきわめて有利と見られていた。地方支部が少ない政治団体は政党として認められず、選挙に参加できないからだ。

にもかかわらず、与党が不振だったことについて、プーチン氏は「今のロシアの現実を反映する」とコメントした。思わぬ誤算だったのかもしれないが、重く受け止めざるを得ないだろう。

プーチン氏は、2000年から大統領職を2期8年間務め、08年に大統領職をメドベージェフ氏に委ねたのち、首相の座にとどまって実権を握ってきた。

メドベージェフ大統領は、法治主義の確立と先端産業育成を旗印に掲げたが、十分な成果をあげないまま、来春、任期を終える。

プーチン氏には、来年3月の大統領選で有力な対抗馬がいない。いまだに国民多数の根強い支持を得ていることも事実だ。しかし、長期政権の維持を目指すにしても、課題は山積している。

官僚組織の末端にまで及ぶ汚職の蔓延(まんえん)は、いっこうに改善されていない。「統一ロシア」は官僚とつながり、利権を独占していると見られている。国民の強い不満が、与党不振の一因にもなった。

経済は、エネルギー資源に依存する体質から脱却できず、原油価格の変動で国家の歳入は大きく左右される。最大の貿易相手の欧州が債務危機に苦しむのを見て、ロシアにも影響が及ぶのではないかと国民は不安を感じている。

ロシアが、政治、経済、社会の各分野で、改革を必要としているのは明らかだ。プーチン氏は、こうした積年の課題に正面から取り組み、成果を出していかなければならない。

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