米・ミャンマー 日本も戦略的な民主化支援を

毎日新聞 2011年12月05日

視点・ミャンマー 民主化路線は本物か

米国のクリントン国務長官がミャンマーを訪問した。米国務長官の訪問は56年ぶりだ。「閉ざされた国」と目されてきたミャンマーは、国際社会に本格復帰する転機を迎えている。

ミャンマーの民主化は本物なのか。政府が改革路線を取り始めてまだ4カ月の今、結論を出すのは難しい。しかし、軍事政権時代には考えられなかった改革を本気で進めようとしていることは間違いない。

総選挙を経て今年3月に民政移管したミャンマーは、8月以降、民主化運動指導者であるアウンサンスーチーさんとの対話やメディア規制の大幅緩和、政治囚の一部釈放などを行った。それまでの独裁政治と決別する思い切った民主化策だ。

改革に踏み切った理由として(1)欧米諸国による経済制裁の解除につなげ、経済成長を目指す(2)国際社会に復帰する(3)中国の過剰な影響力から脱する--などが挙げられる。中でも中国への対応は喫緊の課題だ。

ミャンマーにとって隣接する大国・中国は歴史的に脅威という面が強い。だが、軍事政権時代の独裁体制が特に欧米から批判され、国際社会で孤立する中で、中国は国連などでミャンマーを擁護する後ろ盾の役割を担ってくれた。この間、中国は経済進出を強め、石油・天然ガスなど天然資源の開発にまで手を伸ばしてきた。

現在の状況が続けば、中国経済圏の一部としてのみ込まれかねない。そんな危機感が対米接近にもつながった。

現在の改革路線が円滑に進むかどうか、その大きな鍵を握るのがスーチーさんだ。力による支配を続ける軍事政権に対し、民主主義という理想を唱えるスーチーさんは、約20年にわたって厳しく対立してきた。そのスーチーさんが8月のテインセイン大統領との会談以降、政府の改革に協力する姿勢に転じた。スーチーさんは、近く予想される国会議員補選に出馬する方針で、政治参加が実現すれば国民和解の機運は大きく高まる。

クリントン長官がミャンマー訪問に踏み切った背景にも、スーチーさんの姿勢の変化が大きな要素として働いている。

ミャンマーを取り巻く国際環境は、国内の改革の進行と呼応しながら変化している。改革が進めば国際社会との関係も改善し、改革の停滞は国際環境の悪化につながる。

ミャンマーと歴史的な関係が深い日本だが、この十数年、中国の陰に隠れて影響力を低下させた。この機を逃さず、民主化支援の先頭に立って存在感を示していくべきだろう。

読売新聞 2011年12月03日

米・ミャンマー 日本も戦略的な民主化支援を

米国のクリントン国務長官がミャンマーを訪問し、冷え切った両国関係の正常化に向けて、大きな一歩を踏み出した。

国務長官のミャンマー入りは約半世紀ぶりだ。1988年のクーデター後の制裁を軸とした政策から、関与拡大政策への歴史的な転換である。

クリントン長官はテイン・セイン大統領と会談し、今春の民政移管以来の政治・経済改革を歓迎した上で、政治犯のさらなる釈放など一層の民主化を求めた。

長官は、臨時代理大使から大使への常駐外交使節の格上げを検討するほか、世界銀行や国際通貨基金(IMF)による経済調査団派遣を支持する、という方針を伝えた。改革が進めば、経済制裁の解除を検討する考えも示した。

ミャンマーのテイン・セイン政権は、米国から、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんの政治参加、国会補選の公正な実施、少数民族との戦闘停止など、民主化措置を着実に進展させることが求められている。

米国がミャンマーとの関係正常化に(かじ)を切ったのは、アジア戦略の一環だ。膨張する中国を牽制(けんせい)するとともに、経済・安保両面で東南アジア諸国連合(ASEAN)との連携を強化することにつながる、との判断がある。

インド洋の入り口に位置し、東南アジアと南アジアを結ぶ要衝の地ミャンマーは、米中双方にとって戦略的に大きな意味を持つ。

オバマ米政権には、欧米の経済制裁下で中国への依存を強めてきたミャンマーを、引き寄せたいという狙いがある。

米国の動きに対し、中国もミャンマー軍首脳を招いて、習近平・国家副主席自ら関係強化を約束するなど、つなぎ留めに懸命だ。

ミャンマーの新政権が、軍政時代の「中国一辺倒」外交から距離を置き始めた背景には、ASEAN最貧国からの脱却を図る上で、米中両国をてんびんにかける方が利点が多いとの考えもあろう。

アジア安保の観点から、クリントン長官がミャンマー大統領に、「核不拡散への協力が不可欠」として、核開発を続ける北朝鮮との軍事的関係を断ち切るよう求めた点は、日本にとっても重要だ。

日本政府は年内に玄葉外相をミャンマーに派遣する方針だ。

改革と民主化を後押しするために日本が協力できる分野は、農業や法整備の技術支援、資源開発など多岐にわたる。経済と安保の両方の視点から、戦略的な外交を展開する必要がある。

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