ユーロ危機対策 ドイツが決断する時だ

朝日新聞 2011年12月02日

欧州危機 思い切った金融緩和を

日米欧の主要中央銀行が、協調して金融危機への対応策を打ち出した。欧州の債務問題で経営が悪くなった銀行が資金繰りに窮しないよう、中央銀行が貸し出すドル資金の金利を下げ、借りやすくする。

各国の株式市場は、金融システム危機への懸念が和らいだとして、いずれも上昇した。

ただ、今回のドル供給策はあくまで急場しのぎでしかない。イタリアへ波及した欧州の債務危機は、フランス国債の格下げ不安やドイツ国債の入札不調で一段と深刻化している。

国債の値下がりで欧州の銀行は財務内容が悪化しており、貸し渋りや資産売却による信用収縮の圧力は収まりそうにない。

経済協力開発機構(OECD)はユーロ圏が10~12月期から2四半期連続でマイナス成長になると予測する。債務問題が金融機能を損なわせ、実体経済を冷え込ませる構図だ。

このままでは、欧州に多額の投融資をしている米国や、欧州への輸出が多い中国、円高の直撃を受ける日本など、世界に経済危機が広がる。リーマン・ショックの再来は断じて防がねばならない。

ところが、肝心のユーロ圏主要国の足並みは乱れたままだ。当面の切り札である欧州金融安定化基金(EFSF)の拡大についても、各国の財政規律を重視するドイツの反対で、目標の1兆ユーロはおぼつかない。

財政健全化も重要だが、まずは欧州中央銀行(ECB)が国債の購入を拡大すべきだ。金利も大幅に引き下げ、大胆な金融緩和に踏み込む必要がある。インフレを招くとして国債購入に反対しているドイツは、ここから「君子豹変(ひょうへん)」してほしい。

信用収縮は早晩、巨大なデフレ圧力となる。金融システムの動揺を抑えないと、手の施しようがないデフレ・スパイラルに陥りかねない。

ユーロ圏の物価上昇率は現在3%。ECBが目安とする「2%以下」を上回り、通常なら引き締めの情勢だ。しかし、いまは非常事態である。第1次大戦後のハイパーインフレが骨身に染みているドイツだが、デフレ・スパイラルを招いては元も子もない。

さらに、フランスが提案していたように、EFSFは銀行へと改組するのが望ましい。ふつうの銀行と同様に、手持ちの国債を担保にECBから資金を借りて国債を買えば、EFSFの規模を拡大せずにすむ。

これもドイツの反対でつぶれたが、危機の防止を最優先にしなければならない。

毎日新聞 2011年12月02日

ユーロ危機対策 ドイツが決断する時だ

日銀など日米欧の中央銀行が、欧州の金融機関の資金繰りを助けるため、一段の協調策に乗り出した。ユーロ加盟国の債務危機が深刻化する中、銀行が不測の事態に陥れば、信用不安が一気に世界に及ぶ恐れがあるからだ。発表を受けた各国の株式市場は軒並み急騰した。

だが、これでユーロ圏の債務危機が解決に向かうわけではない。恐らく、事態悪化の速度を緩める効果ぐらいしか期待できないだろう。信用回復につながる抜本策を打ち出せるのは、あくまでユーロ加盟国の政府だからだ。中でも、欧州統合の要であり、域内で最大の経済力を持つドイツが無制限の加盟国支援で腹を決めない限り、ユーロは崩壊の危機から逃れられまい。

今回、6主要中央銀行が決めたのは、欧州の金融機関が主にドル資金を借り入れるのを支援する措置だ。中央銀行が仲介し、民間銀行に必要外貨を低利で供給する。

債務危機に陥った国の国債を大量に保有する欧州の銀行は信用力を失い、市場で外貨を借りにくくなっている。放置すれば資金繰りがつかず破綻に追い込まれる可能性もある。リーマン・ショック後の金融危機の再来も否定できない。このため中央銀行が動いたのは評価できる。ただ、白川方明・日銀総裁が言うように「時間を買う政策」でしかないのだ。

問題は、買った時間でユーロ圏の政府が何を決断するか、である。

欧州連合(EU)は来週、首脳会議を開く。市場の予想を超える抜本策を決めない限り、安定化は望めまい。その抜本策は、ユーロ加盟国が連帯して責任を負う共同債の導入抜きに考えにくいが、ドイツがかたくなに拒否の姿勢を続けている。

ドイツが訴えているように、ユーロ加盟国が互いの予算に監視の目を光らせ、強制的に是正させるような枠組みは確かに必要だ。ただ、今、急ぎ求められているのは、高止まりした国債の利回りを低下させ、投資家が再び安心してユーロ加盟国の国債を買えるようにする策だ。そのためにはドイツが、「ユーロを守るためのあらゆる支援を惜しまない」との明確なシグナルを発することが不可欠である。

欧州中央銀行(ECB)がユーロに加盟する債務危機国の国債をもっと積極的に購入すべきだ、との主張もある。しかし、政治の無策のツケを中央銀行に回せば最悪の結果を招くだけだ。ドイツ政府はECB依存を高めることに反対している。この点でドイツは正しいが、ならば、自らユーロ存続のコストを負わねばならない。

もう先送りは許されない。ユーロ共同債導入を含む財政統合でメルケル首相が決断する時だ。

読売新聞 2011年12月02日

日米欧資金供給 対症療法だけでは不十分だ

欧州発の金融危機の拡大を防ぐため、主要国の中央銀行が動いた。

日本銀行と米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)など日米欧の主要6中央銀行が、協調してドル資金の供給を拡大すると発表した。

中央銀行が民間銀行に融資する金利を0・5%引き下げ、資金が潤沢に行き渡るようにする。

欧州の財政危機で、信用不安を抱える欧米の金融機関は市場からの資金調達が難しい状況だ。このままでは、3年前のリーマン・ショックの再来になりかねない。

危機の連鎖を食い止めようと、各国の中央銀行が、金融機関の資金繰りを支えるドル資金の安定供給で協調したのは妥当だ。

発表を受けて、欧米の株価は急騰し、東京やアジアの市場も軒並み上昇した。機動的な対応を好感したのだろう。

とはいえ、日銀の白川方明総裁が記者会見で「流動性(資金)供給だけでは解決しない。あくまでも時間を買う政策だ」と述べたように、今回の措置は当面の難局を切り抜ける対症療法である。

「買った時間」を有効活用し、危機の根源である欧州債務問題を解決する必要がある。

ギリシャに始まった危機はイタリアなどに飛び火して国債が売られ、金利は急上昇している。

危機収束のカギを握る独仏両国も盤石ではない。

ドイツ国債の入札では、募集額に応募額が達しない「札割れ」が起き、市場に動揺が広がった。最上位の信用度を誇るフランス国債にも、格下げ観測が出ている。

欧米の銀行は、欧州各国の国債を大量に保有している。財政再建が遅れて国債が暴落すれば、金融機関の経営は悪化し、危機が世界に広がる恐れがある。

欧州経済の混迷は、世界経済を牽引(けんいん)してきた新興国の成長にも影を落とし始めた。

欧州向け輸出が減速している中国やタイが相次いで金融緩和に転じたことは、欧州危機が順調なアジア経済も揺さぶり始めたことを示している。

欧州はまず、震源地であるギリシャへの支援実施を急ぎ、危機の波及を食い止める責任がある。

ところが、支援策の要である欧州金融安定基金(EFSF)の拡充は、当初予定した1兆ユーロ(104兆円)を下回る見通しだ。危機収束に力不足が懸念される。

独仏両国を中心に欧州は結束を固め、債務問題の解決に全力を挙げなければならない。

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