野田首相の質問に、的確に切り返せないようでは野党第1党の党首として力不足だろう。
野田首相と谷垣自民党総裁らによる初の党首討論が行われた。谷垣氏は、消費税率引き上げ問題について、政府・民主党が年内に法案をまとめて閣議決定できるのかとただした。
野田首相は、年内をメドに結論を出したいと述べた。その上で、消費税の改革はどの政権でも先送りできない課題であり、素案をまとめた段階で協議に応じることを約束してほしいと迫った。
谷垣氏が即答を避けたのは残念だ。与党と協議し、消費税関連法案の早期成立を目指すべきだ。
消費税を含む抜本的な税制改革は、麻生政権が税制改正関連法の付則で道筋をつけたものである。自民党は消費税率の10%への引き上げを超党派の会議で検討することも参院選で公約している。
民主党の政権公約(マニフェスト)に消費税に関する記述がないことを理由に、谷垣氏が衆院解散を求めたのも大いに疑問だ。
自民党は、民主党のマニフェストは破綻しているとして子ども手当などバラマキ政策を見直すよう強く主張してきたではないか。
消費税問題での政府・民主党の政策転換は、本来、前向きに評価すべきなのに、衆院解散を求めるというのは筋が通らない。
欧州の財政危機を他山の石として、日本も財政再建を急がねばならない。与野党間の論議を棚上げし、衆院選後、またやり直すような悠長な対応は許されない。
一方で、民主党内に首相の足を引っ張る発言が出ているのは問題だ。小沢一郎元代表らが消費税率引き上げに反発している。
時計の針を逆に回すような言動を看過すべきではない。党執行部は、首相の掲げる方針に従うよう説得を重ねる必要がある。
環太平洋経済連携協定(TPP)について谷垣氏は、首相の交渉参加表明は時期尚早とし、政府に十分な情報公開を求めた。首相は、情報提供の重要性は認めながらも、「今、自民党の立ち位置はどうなのか」と問い返した。
谷垣氏は答えなかった。党内の賛否が割れているからだろう。
野田首相は、民主党内の反対論も踏まえて、交渉参加へ舵を切った。谷垣氏は意見集約への姿勢すら見せていない。手続き論で政府を攻めても説得力を欠く。
谷垣氏は、次期衆院選で政権を奪還したいのなら、明確にTPP参加への覚悟を語り、政府側と政策を競うべきである。
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