2012年に期限切れとなる京都議定書の後の枠組みをどうするか。
国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)が28日、南アフリカで開幕した。
先進国のみに温室効果ガスの排出削減を義務付けた京都議定書は、欠陥の多い国際ルールだ。日本政府は議定書の延長に反対を貫く必要がある。
京都議定書の延長を主張する急先鋒は、中国、インドなどの新興国だ。新興国にとり、削減を義務付けられていない京都議定書は、都合のいいルールだからだ。
だが、経済成長が著しい中国は世界一の排出国となっている。インドの排出量も3番目に多い。
先進国でも、中国に次ぐ排出量の米国は、経済への悪影響を懸念して議定書を離脱した。上位3か国が削減の対象外となっていることが最大の問題点と言えよう。
一方、削減義務を負う日本や欧州連合(EU)などの総排出量は世界全体の27%に過ぎない。京都議定書が、温暖化対策に実効性を欠いているのは明らかである。
世界全体の排出量を減らすには、中国、米国など、すべての主要排出国を対象にした新たな枠組みの構築が欠かせない。
しかし、新ルールの採択は、COP17では困難と見られている。中国、米国などが同調する見通しが立たない上、欧州の財政危機などで、各国が経済の立て直しを最優先課題にしているためだ。
生産活動が制約されかねない温室効果ガス削減に、各国は今まで以上に及び腰になっている。
日本は新たな枠組み作りを15年以降に先送りするよう主張する。13年以降は、各国が自主的削減に取り組む「移行期間」とする。
現実的な提案だろう。今後の協議で支持が広がるよう各国に強く働きかけねばならない。
政府は、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、エネルギー政策の見直しを進めている。当面、火力発電に頼らざるを得ない状況が続く。
これに伴い、鳩山元首相が09年9月、唐突に打ち出した「20年までに1990年比で25%削減」という目標も当然、取り下げなくてはならない。原発の増設などを念頭に置いたものだったからだ。
この目標は、「すべての主要排出国による公平な枠組みの構築」などを前提条件としているが、現状では「25%削減」が独り歩きしかねない。
移行期間の中で、実現可能な目標を掲げ直すことが肝要だ。
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