「女性宮家」 皇位継承の議論を再開したい

毎日新聞 2011年11月26日

「女性宮家」 皇室の将来へ論議を

皇族減少の懸念から「女性宮家」などが検討されようとしている。女性皇族が結婚後も皇族にとどまり、数を維持しようというものだ。積年の課題である皇位継承安定に密接にかかわっている。広く、建設的な論議を期待したい。

藤村修官房長官によると、宮内庁の羽毛田信吾長官が先月、野田佳彦首相に対し「女性皇族が結婚に近い年齢になり、皇室の活動に緊急性の高い課題」と現況を伝えたという。

具体的動きはまだだが、こうした制度見直しについて藤村官房長官は記者会見で「国民各層の議論を十分踏まえて検討したい」と語った。

現在皇室は天皇陛下と22人の皇族から成り、8人の未婚女性のうち、6人が成人している。皇室の基本を定める皇室典範では、女性は皇族以外と結婚した場合は皇籍離脱となり、皇族ではなくなる。

一方、皇位継承資格者は「男系男子」と定められ、現在その順位は皇太子さま、弟の秋篠宮さま、その長男の悠仁(ひさひと)さまと続く。天皇陛下の孫の世代では悠仁さまだけだ。

現行制度のままでは、将来長きにわたる継承は不安定にならざるを得ない。そうした中で、女性を皇族にとどめる意見は出ていた。

自民党政権の小泉純一郎首相は安定的な継承へ道筋をつけるため私的諮問機関の有識者会議を設けた。05年11月、会議は「男系男子の皇位継承維持は極めて困難」としたうえで、女系・女性天皇を容認し「長子優先」「女性皇族は結婚後も皇族にとどまる」などとする報告を出した。

そして皇室典範改正案が国会に提出されるはずだったが、異論も強く、06年9月、悠仁さまが誕生して議論は事実上棚上げになっていた。

「女性宮家」は皇族の数を維持するとともに皇位継承の資格者を広げる可能性がある。もちろん短兵急に決めることはできない。国民に広く開かれた論議と理解が大切だ。

戦後、象徴天皇制は「開かれた皇室」「国民とともにある皇室」という理念で理解され、親しまれてきた。長い歴史に培われた伝統を守ることと、時代とともに新しいかたちも取り入れていくことは、決して矛盾しない。

天皇陛下は即位以来、皇后さまとともに積極的に国民との交流を求め、大災害被災地を回り直接に励まされた。国内外の戦跡・戦災地への慰霊訪問も平成の新しい皇室のあり方を感じさせるものだ。

こうした中で、将来に向かい、安定的な皇位継承を率直に論じ合うことはむしろ理念にかなう。

それは「全か無か」のような論議ではない。さまざまな考え方や案がある。6年前の有識者会議の報告も踏まえ、論議を成熟させよう。

読売新聞 2011年11月26日

「女性宮家」 皇位継承の議論を再開したい

宮内庁の羽毛田信吾長官が、女性皇族による宮家の創設を「火急の案件」として野田首相に検討するよう要請していたことが分かった。

藤村官房長官は「国民各層の議論を十分に踏まえ、今後検討していく」との考えを示した。

皇位継承のあり方や国家の根幹に関わる重要な課題だ。

広く国民の理解を得ながら、検討を進めていくべきだろう。

皇室典範は、女性皇族が一般の人と結婚した場合は、皇族の身分を離れると定めている。結婚後、宮家として皇室に残るには、皇室典範を改正する必要がある。

「女性宮家」の創設は、小泉内閣が設置した皇室典範に関する有識者会議でまとめた2005年の報告書にも盛り込まれていた。

報告書は、皇位の安定的な継承を維持するためには、女性天皇・女系天皇への道を開くことが「不可欠」としていた。その前提として必要な制度改正の一つに、女性宮家の創設を挙げた。

翌06年9月、秋篠宮ご夫妻に長男、悠仁さまが誕生された。女性天皇・女系天皇を認めるための皇室典範改正案が準備されていたが、国会提出は見送られた。皇位継承のあり方をめぐる議論も、ストップした。

だが、このままでは、皇族が減少していくことは確かである。

現在、30歳以下の皇族は悠仁さまをはじめ9人で、そのうち8人が未婚の女性だ。

先月23日には、秋篠宮ご夫妻の長女、眞子さまが20歳の誕生日を迎えられ、8人のうち既に6人が成人されている。

女性皇族が結婚を機に皇籍を相次いで離脱されれば、女性宮家を創設しようにも出来なくなる。悠仁さまをわずかの皇族方で支えるという事態にもなりかねない。

女性宮家の創設が「火急の案件」なのは、そうした懸念を拭えないからだろう。

女性天皇・女系天皇を認めるか否かをめぐっては、05年の有識者会議報告の後も、賛否さまざまな意見があった。

結論を得るのに時間がかかるのであれば、女性皇族の結婚による離脱を防いでおきたい、というのが宮内庁の考えではないか。

安定的な皇位継承には、女性天皇・女系天皇の問題も避けては通れぬ課題である。

皇室制度を安定的に存続させていくためには、いかなる制度改正が望まれるのか。小泉内閣以来、しばらく途切れていた議論を再開させる必要がある。

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