厳しい雇用情勢が続いている。鳩山首相が「政府を挙げて雇用の確保に取り組んでいく」と述べたのも当然である。
その具体策として、政府の緊急雇用対策本部が緊急対策を取りまとめた。
安全網の整備としては、ハローワークの雇用支援機能や住宅支援策の強化、職業訓練メニューの充実、雇用調整助成金の支給要件緩和――などの対策が並ぶ。
大半は前政権時代から実施されつつある施策の拡充である。新鮮味はないが、個々の対策を着実に実行し、成果につなげていかなければならない。
緊急対策は「情勢に即応して機動的に対応する」としている。こうした姿勢で、対策の見直しや追加策を検討することは大事だ。
ただ、過去には多額の予算を付けたにもかかわらず、不人気でほとんど活用されなかったものも少なくない。すでに実施中の制度も含め、効果を厳しく検証しながら進めていくべきだ。
8月の完全失業者は361万人で、1年前より89万人増えた。有効求人倍率は過去最悪の0・42倍まで低下している。
この春以降、新規求人は、製造業、情報通信業など11の主要産業すべてで前年同月を下回る状況が続いている。失業者を吸収する強力な産業が見当たらない。
職業訓練を受けても、就労の場がなければ学んだ技術を生かすことは出来ない。雇用の拡大と創出策こそ、喫緊の課題である。
この点について緊急対策は、介護や農林水産業、観光、環境分野の雇用創出を掲げた。
しかし、個々の分野ごとに、例えば向こう1~2年でどれだけの雇用創出が可能なのか、数値目標などは示していない。これらは成長産業として、よく取り上げられる分野だが、実現への確かな道筋を描けてこそ説得力を持つ。
海外要因などで企業の生産活動が回復してくれば、雇用にも明るさが見えてくるという楽観論もある。だが、政府としては、景気刺激策で産業界全体を活気づけていく方策を考えるべきだ。
緊急対策には新卒者の就職支援態勢の強化策も盛り込まれた。企業に対し、中途採用や通年採用の拡大も要請するという。
就職希望の高校3年生が求人の大幅な減少で苦しんでいる。大学生の就職戦線にも寒風が吹き荒れる。この問題も急を要する。緊急対策も指摘したように、「産業政策や文教政策と連動」した取り組みを強化してもらいたい。
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