アジア・太平洋の自由貿易圏の枠組みづくりを巡る動きが加速化している。日本は積極的な外交を展開し、経済連携を主導すべきである。
野田首相、中国の温家宝首相、韓国の李明博大統領が、インドネシア・バリで会談し、日中韓の自由貿易協定(FTA)の早期交渉入りを目指すことで合意した。3か国の投資協定交渉を年内に実質妥結させる方針も確認した。
米国など9か国は約1週間前、環太平洋経済連携協定(TPP)で大枠合意し、日本は交渉参加に向け、協議に入ると表明した。
中国はこの動きを警戒している。これまでは日中韓FTAに及び腰だったが、積極姿勢に転じたのは、米国主導のTPPに対抗する狙いがあるのだろう。
太平洋全域にまたがるアジア太平洋自由貿易地域(FTAAP)構想の実現に向け、唯一具体化しているのはTPPだ。
しかし、東南アジア諸国連合・日中韓(ASEANプラス3)や、これにインド、豪州、ニュージーランドも加えた「ASEANプラス6」の経済連携も、有力な道筋となり得る。
いずれの枠組みにも関与する主要国は日本だけである。
野田首相が、TPPと、中国やASEANの動きを「両方横目にみながら」取り組む意向を示したのは、妥当な考え方と言える。
日本は、TPPを軸に据え、日中韓FTAの実現や、ASEANとの連携強化も図るべきだ。それが、この地域の貿易自由化に弾みをつけることになろう。
日本の動きによっては、TPP交渉での米国の強硬姿勢をけん制する効果も期待できる。
一方、アジア・太平洋地域で経済連携を深めるためには、安定した安全保障環境が重要である。
バリで開かれた東アジア首脳会議(EAS)には米露が正式に参加した。これまで経済や防災などが中心だったEASを、首脳同士が地域の安保問題も討議する場として定着させることが肝要だ。
EASは、海洋に関する国際法の尊重や、紛争の平和的解決を明記した宣言をまとめた。
中国と、ベトナムやフィリピンなどの南シナ海での紛争は地域の懸念材料である。宣言はこうした問題を想定しており、中国に自制を促す意義は大きい。
日本は、EAS参加国の政府高官や有識者による「海洋フォーラム」設置を提案してきた。実現すれば、地域の海洋問題解決の糸口を探る場として活用できよう。
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