ミャンマー(ビルマ)をめぐる情勢が大きく動いている。
東南アジア諸国連合(ASEAN)は、同国の求めに応じて14年の議長国就任を認めた。
米国はクリントン国務長官を派遣する。野田首相は途上国援助(ODA)再開を表明した。
民主化勢力の国民民主連盟は政党登録して政治に再び参加することを決めた。書記長アウン・サン・スー・チーさんの補欠選挙立候補が取りざたされる。
昨年、20年ぶりに総選挙を実施して、軍事独裁から「民政移管」を宣言した新政権が7月以降、民主化勢力との対話やメディア、集会規制の緩和、住民が反対するダム建設の凍結といった施策を相次いで打ち出した。
国際社会はこうした動きに一定の評価を与え、民主化勢力も新政権の誘いに乗った形だ。
議長国は1年交代の輪番制でミャンマーは06年が順番だった。ところが軍事政権による人権弾圧に反発する国々の圧力で辞退に追い込まれていた。
議長国になれば、軍政が強引に遷都した新首都ネピドーに、経済制裁を科す米国の大統領ら主要国の首脳が東アジアサミットなどで集うことになる。
多くの関連会議があり、対話と調整が重ねられる。外国報道機関を拒むこともできない。国をひらく意味で悪くはない。
ASEANはこれまで「内政不干渉」を盾に軍政に積極的な働きかけをしてこなかった。
議長国就任が決まったから国内融和はもう必要ないといった対応を新政権にとらせないよう、ASEANは民主化の定着を連帯保証する立場にある。
民主化が進んだと言っても、10月の恩赦で釈放された政治犯は約200人に過ぎず、500人以上がまだ牢獄につながれている。対立が続く少数民族との和解交渉は始まってもいない。
なにより国会議席の8割は軍人と元軍人が占め、軍制定の憲法を事実上改定できない仕組みはそのままだ。軍が国家を支配する構造に変化がないことに、留意を続ける必要がある。
15年の経済統合をめざすASEANにとって、経済や財政に透明性がなく最貧国にとどまるミャンマーは重荷でもあった。
ASEANには他にもベトナム、ラオスといった一党独裁を続ける国や人権問題を指摘される国が多い。今回の決定が他の加盟国も含めた全体の民主化につながる契機になって欲しい。
日本は援助が民主化のさらなる促進につながるよう進捗(しんちょく)を見守らなければならない。それが人権を踏みにじられてきた人々や納税者に対する責任である。
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