大阪ダブル選 都市構想論じる機会に

朝日新聞 2011年11月10日

大阪ダブル選 都市構想論じる機会に

27日に投開票される大阪府知事、大阪市長のダブル選が10日の知事選告示で幕を開ける。

両選挙とも、大阪都構想をかかげる橋下徹・前知事率いる大阪維新の会と、既成政党が支援する候補が争う構図だ。

民主、自民は単独で候補を擁立できなかった。共産も半世紀ぶりに市長選への独自候補の公認・推薦を見送り、批判してきた平松邦夫市長の支援に回る。

自主投票の公明も含め、維新の政治手法を厳しく批判してきた各党は単独での選択肢を示さなかった。批判は免れない。

都構想が争点となる。

人口約267万人の大阪市を30万人程度の特別自治区に分割し、広域行政体の都と基礎自治体の区で仕事を分担する。

区長を公選制にして区議会を置き、独自の権限で予算を組むことも想定している。

政令指定都市と府県の二重行政の弊害は指摘されて久しい。図書館や体育館を重複して作ったり、港湾や都市計画で区域ごとに縦割りの権限をもったり。構想は、こうした無駄の解消がねらいという。

一方で、区議会や区独自の財政部門を新たに設けるコストの問題や、市のスケールメリットを損なうおそれも指摘される。

長い歴史を持つ大阪市に愛着を持つ住民も多い。枠組みだけではなく、市民生活への影響を含め具体的に論じるべきだ。

平成の大合併をへて指定市が次々と誕生し、現在は19市となった。だが道府県との役割分担や権限、税財源の仕組みは、制度のできた半世紀以上前と基本的に変わっていない。

大阪をはじめ多くの指定市で高齢化が進み、求められる公共サービスもかわりつつある。若者に魅力があり、高齢者が安心して暮らせる都市のあり方を論じる選挙戦を期待したい。

他にも争点は目白押しだ。

大阪市の生活保護受給者は全国最多の15万人で、18人に1人の割合だ。

大阪府の完全失業率は長く全国ワースト3。中でも20~30代の高さが目立つ。事業所数はここ20年で20%以上減った。

学力格差などの教育施策や財政再建、災害時に首都機能を代替する副首都の役割についても各陣営の考えを聞きたい。

過激な発言で注目を集め、政治に独裁が必要と主張する「橋下流」も選挙で問われる。

橋下氏に関しては、本人に直接関係のない情報を含め、過剰ともいえる報道が週刊誌で見られた。言うまでもなく選挙は政策を競うものだ。有権者はじっくり吟味して判断してほしい。

毎日新聞 2011年11月13日

大阪ダブル選挙 争点を明確に論じ合え

大阪府知事選に続いて大阪市長選が13日告示され、ダブル選挙が正式にスタートする。ともに主要政党と橋下徹前知事が代表を務める地域政党「大阪維新の会」が対決する構図だ。「維新対反維新」がクローズアップされ、感情的ともいえる批判の応酬が目立っているが、日本の地域分権の在り方に影響を与える選挙だけに、争点を明確に論じ合う選挙戦を期待したい。

橋下氏は知事を辞職して市長選にくら替え出馬し、知事選には大阪維新の会幹事長の松井一郎氏を擁立した。二人三脚で選挙戦に臨む両候補は、府市を再編する「大阪都構想」の実現や、教育や公務員の在り方を改革する条例の制定を目指す。

既成政党はこうした橋下氏のやり方に反発し、知事選では民主党府連と自民党府連が池田市長を辞めて出馬した倉田薫氏を支援し、共産党は弁護士の梅田章二氏を推薦する。

市長選は共産党推薦で出馬する予定だった候補が撤退を決め、橋下氏と民主党府連、自民党府連が支援する現職の平松邦夫氏の一騎打ちとなる見通しだ。公明党は両選挙とも自主投票で臨む。

このように「維新対反維新」の対立に焦点が当たり、敵味方をはっきりさせ、相手を厳しく追及することで人気を集めている橋下氏の政治手法の是非に争点が集中し、政策論争が低調になっている。

平松氏は橋下氏の手法は「独裁」だとして阻止を訴え、橋下氏も平松氏や既成政党を激しい言葉で攻撃するなど非難合戦がエスカレートしている。今回の選挙を、橋下氏が好きか嫌いかを問う人気投票だけで終わらせることがないようにしたい。

大都市の二重行政は、大阪だけではなく全国の19政令指定都市に共通する問題だ。橋下氏と松井氏は「大阪都構想」について制度論だけでなく、実現すれば住民の暮らしがどのようによくなるのかを分かりやすく示してほしい。平松氏は府と市町村が連携する「大阪版広域連合」を提唱し、倉田氏も府と市町村の協調を訴えているが、もっと具体的に説明すべきだ。

大阪府、大阪市ともに生活保護受給者は全国最多で、失業率も高い。東京に本社機能を移転する企業が相次ぐなど地盤沈下に歯止めが掛からず、住民の閉塞(へいそく)感は強い。多くの課題を抱える大阪をどう発展させていくのか、27日の投開票まで各陣営の主張をじっくりと見極めたい。

毎日新聞の世論調査で「支持政党なし」が50%に迫る中、今回のダブル選挙で無党派層がどんな選択をするかは、既成政党にとっても重要な意味を持つ。中央政界にも大きな一石を投じる選挙となるだろう。

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